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情熱的に、正直に。 ~インタビューリレー① 北條康弘~
ゲスト紹介
北條康弘 (ほうじょうやすひろ)
神戸大学文学部 4年生 国文学専修
卒業公演では、脚本・役者・制作・演出補佐を担当。
部員の多くが「とにかく派手」と評するエネルギーに満ちた作風が特徴。稽古場ではそのエネルギーが有り余り、チョケ担当となっている。
本編
演劇談義 ~演劇好きのあなたに~
まずは、本公演及び演劇全般について語ってもらいます。
ー今回の役どころを教えてください。
青年と中年です。
ー今回の役は、自分にピッタリだと思いましたか?それとも、全然違う!という感じですか?
全然違いますが、共感できる部分もあります。二役とも、役に入り込む覚悟ができないくらい、ちゃんと演じたら苦しい役です。自分が書いたんですけども。自分のキャパをはるかに超える若さ、愛、苦しみ、悲しみを自分に宿さなきゃいけない。絶対に破綻すると分かっていながらそこに突っ込むのが演劇です。その覚悟をそろそろ決める時ですね。
ー『夢中』の魅力や見どころは何ですか?
正直さです。「とりあえず配慮(っぽいことを)しておこう」という風潮に削り取られ絡み取られてゆく大切なものをもう一度探して拾って、人間の美しさと汚さと向き合いました。コンプラだとか不謹慎だとか言って裏で軽蔑しながら無難な言葉を並べる人たちよりよっぽど、よっぽど誠実に。確かに使っている言葉は汚いかもしれない。描いている世界は荒んでいるかもしれない。出て来る人間は皆歪んでいるかもしれない。多分耳を塞ぎたくなる台詞や直視できないような場面もある。申し訳ない。でも、でも。僕の方が絶対に、言葉は人を勇気づけたり傷つけたりするという本質と、まっすぐ向き合っている。痛々しいほど。それだけは自負している。
ー演劇を始めたのはなぜですか?
高校の新歓で、たまたま練習を見学したのがきっかけです。当時、高校入学を機に、とにかく何か新しいことを始めたいと思っていたんです。直感で、とりあえず、この世界に飛び込んでみよう!と。飛び込めばあとはどうにでもなるだろう、みたいな感じでした。
ー脚本の発想はどこから湧いてくるのですか?
まずある瞬間の絵が浮かんできます。人が机の上で叫んでいる場面、とか、短刀を目に刺そうとしている場面、とかいうふうに。それぞれそこから「なつのはじまり」(2022)と「フクシュウの時!」(2023)が生まれました。そこから始まって、自分が日常で抱いている様々な感情を増幅させながら詰め込んでいくという感じです。構成は、結構、他の劇や音楽を鑑賞しているときに堰を切ったようにアイデアが沸いてくることが多いです。きっと、潜在的に考えていたことが、ある刺激によって溢れて来るんだろうと思います。今回の「夢中」だと、宝塚花組の「ドン・ジュアン」を観ているときに、突然場面同士が繋がっていく発想が生まれに生まれてきて、止まらないみたいな感覚になりました。全然ストーリーとか関係ないのに。不思議ですね。
ーはちの巣座の強みは何ですか?
好きな演劇も歩んできた人生も全然違うメンバーたちが、意見を出し合って作品を作っていけるところだと思います。色んな視点から色んなアイデアが出てくるので、強い舞台に仕上がるんだと思います。
ーどんな役をやってみたいですか?
癖のある役がいいです。生まれ変わったらやってみたい役は、「エリザベート」のルキーニ役と、「ミス・サイゴン」のエンジニア役です。
ー影響を受けた演劇はありますか?
曽我部マコト「ホット・チョコレート」です。あれほど完璧な演劇はない。無理だとは分かっているけれど、あんな感動を作りたくって、演劇を続けています。
ーはちの巣座のファンの名前は何がいいですか?
ビーズ
ー演劇を続けるモチベーションは何ですか?
観ている方々が心の奥底にある普段出せない感情を爆発させられるような舞台を作りたいということです。それを肯定する場が社会には必要で、それが演劇や芸術だと思っています。高校の時、私たちの演劇を見て、性別も学年も部活も関係なく、普段感情を出さないような人までもが思い切り泣いたり笑ったりしていたのを見て、演劇はこのためにあるんだと思ったんです。
ー演劇をやっていると、うまくいかなくて落ち込んだり、挫折したりすることもあると思います。どのように対処していますか?
とりあえず寝る。疲れた脳で何考えてもしゃーない。寝よ寝よ。
ー稽古場の雰囲気はどのように感じていますか?
先輩後輩関係なく意見を出し合えるいい雰囲気だと思います。私この前、3期下の部員に、「その演技は違う」と言われました。そういう環境ができていることが、嬉しかったです。演技頑張ります。
ーはちの巣座のメンバーですごいと思う人は誰ですか?そして、どこがすごいと思いますか?
ゆかいのきは、シーンの空気感に対する感性がずば抜けていると思います。間やトーンを間違えることがまずない。音楽でいうと、楽譜の通りに弾く、さらにその中でも、正解のゼロコンマ数秒の瞬間がある訳じゃないですか。それを感覚で当てられるという感じです。
あと、稲葉有哉は、役に対する没入の仕方が並外れています。こちらが心配になるくらい。僕の作品は彼なしには形にならない。役作りを細かくやっていく努力と、あとは天性の才能ですね。
嵩見凌の俯瞰力もすごいと思います。全体としての見せ方から逆算して、細部の演出をつけることが出来る。これはもうはちでは彼しか出来ないことです。僕なんか、マジで分からないんで。引きで見て初めて「えーこんなかんじなんやー」みたいな笑
上記三つは、絶対音感とか空間認知みたいなもので、天性の才能なんです。才能は関係ない!努力が大切!というような論もありますがあれは綺麗ごとで、事実、才能は芸術の大部分を占めます。努力ではどうにもできないことと向き合ったうえで、最善の努力をするイメージです。自分も、一生かけて演劇をしても一流のプロにはなれないということを冷静に受け入れつつ、じゃあ自分の人生の中にどう演劇を位置づけて、どう努力をしていこうかということを考えています。冷淡に見えるかもしれませんが、芸術は才能のものなので、仕方ないんです。才能や生まれ持った感覚の重要性を認めることが、芸術に対してまず払うべき敬意なんだろうと思います。
ー舞台人として大切にしたいことは何ですか?
悔しさ。
文化談義 ~芸術好きのあなたに~
次に、演劇のみならず、文化的なこと全般について語ってもらいましょう。
ー好きな役者・芸能人はいますか?
井上芳雄さん、市村正親さん。劇場全体の空気を掌握してしまう圧倒的なオーラに衝撃を受けました。こんな人間いるのかと。演劇の裾野を広げる努力をされているところも大好きで、私も見習いたいなと。それから、星風まどかさんです。
ー演劇以外の公演も観に行くことはありますか?または展覧会などは好きな方ですか?
美術館や博物館の展覧会は、興味があるものにはたまに足を運ぶ程度です。本当はもっと行きたいんですけどね。歌舞伎とかもいつか観てみたいなぁと思っているんですが、なかなか一歩踏み出せていない状況です。
ーもし他の芸術系表現系部活をやるなら、何をやってみたいですか?
オーケストラの指揮です。幼い頃、祖父が見せてくれた映像でタクトを振っていたカラヤンに憧れて、ラッションペンを振りまくっていましたから。今でも大好きです。小澤征爾も大好きで、彼が朝譜を読んで勉強するというのを真似て、「夢中」はほぼ全て朝に書きました。
ーおすすめの本を紹介してください!
・俵万智『サラダ記念日』
・高階秀爾『名画を見る眼』
・石原慎太郎『太陽の季節』
・樋口大祐・加藤正文『光と風と夢 街角の記憶を歩く』
・網野善彦『無縁・公界・楽 日本中世の自由と平和』
・夏目漱石の色々な本
ーおすすめの映画/ドラマを教えてください!
「風立ちぬ」「ヘアスプレー」「鎌倉殿の13人」
ーコラボしたい表現系の部活はありますか?
落語研究会さん。ストーリーテラー、狂言回しをお願いしたいですね。
吹奏楽部さん。ミュージカルをやりたいです。
神大談義 ~大学トークで盛り上がろう~ 受験生もぜひ
お次は大学生活についてです。大学生は共感できることが多いかもしれません。神大の受験を考えている方もぜひ読んでくださいね、神大生の生活を垣間見ることができますよ~。
ー大学に入って新鮮だったことはありますか?
いい意味で他人に無関心なこと。でも、助け合う時は助け合う。本当の意味での「多様性」「尊重」みたいな。とても新鮮だったし、居心地がいいなと思いました。
ーよく使う図書館はどこですか?レビューもお願いします。
もちろん、人文科学図書館です。奥に、机が縦に並んでいるスペースがあり、とても集中できるのでオススメです。
ー本当は教えたくない、お気に入りのラーコモ…こそっと教えてください。
農学部のラーコモ。机が広いし、コンセント完備で勉強しやすいです。机は仕切り無しの大きな机で、前や隣に人がいると、適度な緊張感をもって勉強できます。
ー好きな学食のメニューは何ですか?
白身魚フライです。特に鶴甲第2キャンパスの白身魚フライはアツアツでおいしい!
ー大学のお気に入りスポット、景色が綺麗なところを紹介してください。
文学部への坂道です。いい日も悪い日もここを歩いて学校に行っていました。とびきり夕焼けが綺麗な日には、皆立ち止まって写真を撮るんです。その時に知らない人同士の間で生まれる緩やかな連帯感が好きです。「今日もお互いお疲れ様でした」と言いたくなるような。ちなみのこの坂、「ここを登れなくなったら定年」という意味で「定年坂」と呼ばれているそうです。
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ー学部では何を研究していますか?
文学部の国文学専修で中世文学を研究しています(していました)。卒業論文は『宇治拾遺物語』で書きました。『宇治拾遺物語』は、「つかめなさ」がいいんですよね。それから、文学部では文学だけでなく、歴史や美術についても学べるんです。美術史の授業もよく取りました。楽しかったですねぇ、文学部。文学部って何をやっているのかイマイチ分からない…って方、高校生の方!この本を読んでみてください。「文学部はずっと本読んでるだけでしょ…」みたいな偏見が吹っ飛びます。人文学の意義や楽しさがここにぎっしり詰まっています。
人文学や、人文学が研究対象とするものたちって、科学や政治・経済といった「実用的」なことの下に従属する存在と見られがちですが、技術や権力を「どう使うか」を考えるのは、人文学の役割なんです。科学・非科学は序列ではなくて、どちらもひっくるめて人間社会なんです。だから、科学や政治・経済といったことも大切で、人文学や芸術、精神的な活動も大切。社会の両輪を成すものなんだろうと思います(そもそもこの分類も危うい部分があるがそれは置いておく)。そう思って、自分も演劇を作っています。
ー学部の友達が来るとしたら、どこを観てほしいですか?
作品全体。作品について自由にテーマを設定し、論じなさい。(字数:30000字以上)
ー神戸大学に入ってよかったことは何ですか?
素敵な友達と先生方に出会えたことです。一生大切にしたいと思う人間関係も出来ましたし、自分の進路に大きく関わる出会いもたくさんありました。
ー受験勉強はしんどかったですか?高校生にアドバイスがあればお願いします。
なかなか成績が伸びずにしんどい時期もありました。でも、直前になって伸びました。合格から逆算して、必要なことをとにかくやり続けることだと思います。まだ学年が若い人は、休日や長期休みに、一度試しに10時間くらい勉強してみてください。10時間あったらこんなに進むんだ、ということが分かると思います。それだけで大きく変わります。
ー他の部活で、尊敬している部活はありますか?
どんな部活でも、ストイックに頑張っている人を尊敬しています。
学部の勉強と教職をどちらも全力でやりつつ、さらに100人規模の吹奏楽部をまとめていた部長、副部長。はちの巣座の部室に行った時に見かけた、グラウンドで一人黙々と壁打ちをしていたラクロス部の人、汗まみれで走り込みをしていた野球部の人。そういう人たちに、いつも力をもらってきました。
ー大学4年間はどうでしたか?
自分の好きなことをとことん出来た四年間だったと思います。辛い時もあったんですが、「自分で決めて好きなことやってるんだから、諦めたら自分を否定することになる。だから自分でこの道を正解にするぞ」みたいな感じで、色々なことを頑張れたと思います。それはひとえに、周りの人に恵まれたからだと思います。自己主張が激しくて矛盾だらけな僕と仲良くしてくれる人がいたから、ここまでやってくることが出来ました。
雑談コーナー ~バイト・就活・趣味などなど~
ー誰かからもらって、印象に残っている言葉はありますか?
高校時代の顧問の先生の「究極の個別だけが普遍の感動に繋がる」という言葉です。脚本を書く時は必ずこの原点に立ち返ります。
ー稽古期間など、忙しい時期の体調管理法やおすすめの自炊レシピがあれば教えてほしいです。
とにかく睡眠は削らないことです。起きている時間の行動の効率を上げて、絶対に睡眠時間は確保するようにしています。食事では、できるだけ三食ともごはん・おかず・お味噌汁の三つを揃えるように努めています。忙しい時のおすすめレシピは、ニラと豚肉の炒め物です。海苔・納豆・キムチ・梅干しなども面倒くさがらずにしっかり食べています。
ー自分の好きなところ、嫌いなところを教えてください。
好きなところ:楽観主義なところ
嫌いなところ:手指の関節が外れているところ
ーバイトは何をやっていますか?
家庭教師をしています。もう少しで終わりなのが寂しいです、、
ー就活について、勉強や演劇との両立は大変ではなかったですか?
就活の時期は演劇はやっていなかったので大丈夫でした。学部の勉強との両立は大変でしたが、緻密に計画を立てて頑張りました。最後は気合いで。しょーみバモス!みたいな感じで。
ーコロナ禍の前後で気持ちはどう変わりましたか?
真っすぐな高校生の頃、コロナとぶつかって、人間は分かり合えっこないんだということを知りました。それから、同時期に戦争や凄惨な事件が相次いだこともあって、「時代」を意識するようになりました。人は生まれて来る時代や場所を選べないんだということを、体感したんです。「風立ちぬ」を見て、「堀越二郎って、生まれる時代が違ったら美しい飛行機を作った偉大な芸術家だった訳だよなぁ」とか思っていたことが、今の自分たちの状態なのかもしれないと思いました。生まれてくるか否かということも含めたこの選べなさに非常に興味を持ったのは、確実にコロナがきっかけです。今回の作品の大きなテーマでもあります。でも、だからこそ人間は美しいのかもしれないと思っています。嘘をつかずにそれを直視して、光も闇もえぐって描き出したいと思ったんです。それを今作で爆発させました。
ー推しているスポーツチームはありますか?語ってください!
チームというよりは、野球とサッカーが全体的に好きです。まぁでも、野球はやっぱり阪神タイガース。サッカーはC・ロナウドがいた時代のレアルマドリードの熱狂的なファンでした。今は三笘薫がいるブライトンの試合を時々チェックしています。
今回の脚本でも、ほんの少し、野球とサッカーのネタが入っています。探してみてください。
ー趣味/息抜きの方法を教えてください。
趣味は観劇(家で映像観るのも含む)とスポーツ観戦(ほぼ家)。息抜きは、ひたすら寝ること!
ー最近ハマってる事は何ですか?
マラソンです。友人にフルマラソンに誘われて、ほな挑戦するぞ!と。諦めない力、粘り強さがつきました。演劇にも生きていると思います。
ー将来の夢は何ですか?
自分にしか出来ないことをやっていけたらと思います。
ー座右の銘は何ですか?
「何やってるんですか 勉強してください」
ー好きなお笑い芸人は誰ですか?
ダンビラムーチョ
ー好きなYouTuberはいますか?
いだちゃんねる、落合博満のオレ流チャンネル、槙野智章の俺じゃけん、1人前食堂、マリマリマリー、Watercolor by Shibasaki、ずぅちゃんねる、積分サークル、河野玄斗、ヨビノリ他
YouTuberというよりは、サッカー・野球・音楽の動画全般を漁っています。
ー好きな食べ物は何ですか?
揚げ物
ー住んでみたい場所はありますか?
宝塚
最後に
ー最後に、改めて、公演に向けた意気込みをどうぞ!
舞台芸術を信じ切って、好き勝手暴れまわりたいと思います!きっと一生忘れない観劇体験になると思います。劇場でお待ちしています!
神戸大学演劇研究会はちの巣座
40期卒業公演
『夢中』
3/1 11時~、16時~
3/2 11時~
神戸大学シアターD300にて上演。
500円+カンパ制です。
ご予約はこちらから可能です。