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【大人童話】毒を以て毒を制す砦(とりで)病院
森の外れに
『あそこに運ばれたらお終いだ』
と忌み嫌われる病院がありました。
その病院は、嫌われ者達が集まり
何やら怪しげな研究をしていると噂されており、皆は恐れ近づこうとしませんでした。
ここの医師、看護師、研究員たちは
不気味な容姿をし、ある特徴をもっていました。
それは [毒を自分の体内で作り出し貯蓄できる] ということです。
医師の毒ヘビ、看護師の毒バチ、研究員の毒グモと毒ガエルで病院を切り盛りしていました。
毎日まいにち自分たちの毒について研究を重ねていました。
なぜ自分たちは毒を体内に所持したままでも平気でいられるのか?
これを解明できれば毒を生かせるのではないかと…
毒は、薬にもなるのではないかと…
ある日、この病院に重症患者が運ばれてきました。
ミツバチの総攻撃にあい、全身 毒まみれで腫れ上がっている状態のクマです。
🐍
「これは酷いな…一刻を争うぞ」
🧸
「うう…」
🐍
「良かった。意識はあるようだ。
ここは病院です。
安心してください !!
クモ君、 至急 吸血コウモリさんを呼んでください !
まずは全身の毒を排出しなくては」
毒グモに呼ばれ吸血コウモリが駆けつけました。
コウモリはクマの身体に かぶりつき
チューチューと血を吸い始めました。
みるみる腹が膨れ上がるコウモリ。
そして、一気に毒まみれの血を吐き出しました。
🦇
「これで全部だ。毒は抜けたよ」
🐍
「ありがとうございました。
ではハチ君、解毒剤と輸血をお願いします」
🧸
「まっ待ってください…ハチですか…恐ろしい…」
🐍
「すみません。説明不足でしたね。
ハチの解毒剤を作れるのはハチである彼女だけなのです !
彼女は、強力な解毒剤を作ることができます。
しかも輸血をしながら同時に解毒剤を打てるのは優秀な彼女だけなのですよ。」
🐝
「そうですよね。クマさんの不安な気持ちもわかります…
ですが、どうか私に任せてください !!」
毒バチは、そう言うとクマの手を握りました。
🧸
「わかりました。アナタに お任せします!!」
毒バチは、クマの太い血管に狙いを定めてブスッと針を刺し
それと同時に解毒剤と輸血を おこないました。
それから1週間後
🧸
「ありがとうございました!!」
深々とお辞儀をし何度も何度も お礼を言いながらクマは退院していきました。
🐝
「クマさん 良かったですね」
🕷
「なんだか寂しくなっちゃいましたね」
🐸
「静かになってしまいましたなぁ」
🐝
「また暇になってしまいますね」
🐍
「ここに来たら お終いですから。
暇なほど平和で健康だってことですよ」
皆んなは それぞれ作業や研究に戻って行きました。
そう、この病院は他の病院で拒否された重症患者を専門に受け入れる
最終の砦(とりで) のような病院なのです。