【ファンタジー小説】はだかの王様とイバラ姫とアヒルの子
[人物紹介 (男2 女1 不問1 計4人)]
⚠少々BL要素を含む
🎤 ナレーション(性別不問)
物語を進める進行役
👑 ラティス王(男または男性声)
16歳の若さで王となり15年間 国を守り続けていたが…
現在 31歳
⚔️側近エリアル(男または男性声)
ラティス王に幼い時に拾われ側近(そっきん)となった
エリアルには想い人がいるのだが…
現在 33歳
👸イライザ王妃(女)
王が16歳の時に嫁いできた7つ年上の姫
彼女は純粋に王を愛していたのだが…
現在 38歳
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🎤:
むかしむかし ある国に
少年にして王となった若き王と
王に嫁いだ美しい姫と
王に拾われた側近がおりました
10数年後、姫は自分の夫を裏切り
下克上を企む大臣と結託(けったく)し
クーデターを起こすのです
👸:
ついに 明日 決行される
彼が王を引きずり落とす
彼が国を治めるようになったら
私は用済み
捨てられるでしょう…
わかっていて、彼に縋(すが)った
わかっていて、彼に抱かれた
あの人を私の中から消して欲しかったから…
あの人は、優しかった
あの人は、いろんなモノを与えてくれた
でも私は、そんなモノは欲しくはなかった
あの人の本当の愛が欲しかっただけ…
🎤:
クーデター当日
大臣側に寝返る者も多く
人数的に大臣側のほうが有利でした
王側の兵士達は 次々に倒され
とうとう王は、玉座の間(ぎょくざのま)まで追い詰められてしまいました
⚔️:
「人払いを いたしました」
👑 :
「まさかっ お前も寝返るのか?!」
⚔️:
「いいえ…寝返っておりません!!
ただ王妃と大臣に王を殺すようにと仰(おお)せつかっただけです」
👑:
「やはり、あの2人が今回の反乱の首謀者なのだな…」
⚔️:
「貴方は、2人の関係を お気づきだったのですね…
なぜ、ほおっておいたのですか?
問いただし、処罰することだって出来たのに」
👑:
「そんなことして、何になる!
儂(わし)ではない奴に心を許してる者を 繋ぎとめることは出来ない…
処罰したとて自分が惨(みじ)めになるだけだ…」
⚔️:
「貴方は お優しい…だからこそ
そこに つけ込まれたのです」
👑:
「優しいのでは ない…ただの怖がりの
いくじのない男だ」
👸:
私を1人の女 『イライザ』として見てくれなかった
2人っきりで居る時も あの人は
『王妃』と呼んだ…
あの人も、私が 7歳も年上だから
女とは見てくれなかったのだろうか…
国民は、私の事を『役立たずのイバラ姫』と呼んでいるそうよ
私は子供を望んでも、あの人は うわの空で…
👑:
「お前は、儂(わし)に不満があったのか?」
⚔️:
「私は、貴方に不満があったわけでは ありません
勿論 あの2人に そそのかされた
わけでもないのです」
👑:
「では 何故(なぜ)?」
⚔️:
「私の意思です!
貴方を他の誰にも殺させたくなかった
他国の者にも、あの2人にも
ならばいっそのこと私の手で…
そう思ったからです」
👑:
「そうか…意思か…
自分の手で殺したいとまで…」
🎤:
側近エリアルの手には短剣が握られている
👑:
「その短剣で儂(わし)を刺そうと言うのか…皮肉なものだな
その短剣はな
婚儀の際(さい)死ぬまで添い遂げようと誓って 妻に贈ったものだ」
👸:
「この短剣を持ってお行きなさい!!
これで 王を刺すのです!
これで トドメを!!」
⚔️:
「王妃は私を部屋に呼び寄せ、この短剣を手渡しながら 王を殺せと…」
👑:
「そうか……」
👸:
夫が殺されるのを黙って見てるのか?って世の妻は思うでしょうね…
そうよ!黙って見届けるわ
あの人の最後を
あの人が治める国の最後を
あの人を憎んではいない
ただ、私の心が闇に変わってしまっただけ…
希望が見つけられなくなっただけ…
ごめんなさい…
貴方…ラティス
👑:
「儂(わし)は、戦いも出来ない
子種すら無い
大臣達の言いなりの使えない
お飾りの王だからな
さしずめ『はだかの王様』と言ったところか…」
⚔️:
「では、私は『みにくいアヒルの子』と言ったところでしょうか…
両親に先絶たれ絶望しかなかった
私に貴方は光を希望を
与えてくださったのです」
👑:
「抜け殻のような お前を
ほっとけなかった
だから連れ帰り
歳も近かったのでな
側近として傍においたのだ
幼き頃から、お前は ずっと一緒にいてくれたな」
⚔️:
「私は…白鳥には なれませんね …
黒鳥(こくちょう)になら、なれるかもしれませんが …」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
👑:
「頼むっ自害させてくれ!
最後ぐらいは自分の意思で
自分で決めさせてくれ!」
⚔️:
「そう仰ると思っておりました
私が、見届けます…」
👑:
「その短剣では 死んでも死にきれんっ! 自分の剣で逝く
ありがとう… …
儂(わし)の願いを聞き遂(と)げてくれて……
―(腹に剣を刺す) ぐっ ぐはっ」
⚔️:
「もう これ以上、苦しい思いを
させやしません!
さぁ コレを 飲み込んで 」
―(側近が口移しで毒を飲ませる)―
👑:
「毒…か!? お前 …何をしている…
早く吐き出せっ …お前が死んでしまう…」
⚔️:
「良いのです!私は、そうしたいのです!」
👑:
「お前は …はだかの王様の儂(わし)と
一緒に死ぬと言うのか…」
⚔️:
「ええ 共に」
👑:
「お前は、儂(わし)を憎んでいたのではないのだな…良かった…
―(意識が朦朧、息絶え絶えの状態)
ああ…美しい黒鳥(こくちょう)よ…
儂(わし)を…あの世へと連れて行っておくれ… 」
⚔️:
「ずっとずっと、お慕(した)い申しておりました…
…ラティス…愛しています…」
⚔️ナレ:
私の最後の言葉は
王に いや 愛しき人に届いたかは
わからない…
美しい ひとしずくの涙と
微笑みを浮かべて私の腕の中で
彼は 逝った
私は、彼の死を約束どおり見届けて
彼の元へと向かった…
🎤:
微笑みを浮かべた『はだかの王様』と愛しげに彼を抱きしめる『アヒルの子』
それはそれは 綺麗な亡骸(なきがら)であったそうな…
むかしむかし ある国の交差する純愛の物語