【𝐅短編小説】欠けた月を探す旅
欠けた月を探して旅にでた僕は
小さな村にたどり着いた
その村の宿屋に宿泊することにした
素朴だが気持ちのこもった手料理をいただき
満足気に部屋に戻り地図を広げていると
宿屋の子供が入ってきた
「何してるの?」 と聞いてきた
「お兄ちゃんはね 旅をしているんだよ。明日 行くところの地図を見てたんだ」と言うと
「何しに行くの?」子供は前のめりになって聞いてくる
「欠けた月を探しているんだよ」と僕が言うと
「お月様あるよ。ちょっと待ってて」ニコッと笑って
走って出て行ってしまった
子供は無邪気だなっと思いながら
また地図に目を戻す
いったい、いつ見つかるのだろうか…
欠けた月とは、いったい なんのことなのか…
そうなのだ
僕は 欠けた月のことを何も知らなかった
パタパタッと走ってくる音がする
子:「お兄ちゃん!! お月様あげるー」
手には紙袋が握られていた
僕:「お月様くれるのかい?」
子:「うん!!いっぱいあるから♪」
僕:「えっ?!いっぱい??」
紙袋を開けてみると
ふわっと甘い匂いがした
まあるいバタークッキーが袋いっぱい入っていた
子:「ねっ!!お月様でしょ?!」
僕:「そうだね。お月様が いっぱいだね。
キミも一緒に食べようよ 」
子:「お母さんが作ったんだよ」
子供と一緒にバタークッキーを ほおばる
まあるい お月様は とってもとっても優しい味がした
僕の張り詰めた気持ちが ほぐれて行くのがわかった子供の結託(くったく)の無い笑顔に
あったかい優しい気持ちになった
ああ、これが幸せと言うものか
これが愛情と言うものか
僕は やっと見つけた
探していた欠けた月を
欠けた月とは 愛情だったんだ
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