🟡【短編小説】ドリップ珈琲
ぽちょん ぽちょん
弁柄色(べんがらいろ)の雫
ひとつ またひとつ
ぽちょん ぽちょん
「時間が解決してくれるって
言われてもさっ…」
珈琲の雫が
ほら、また生まれ
ぽちょん と落ちた
「時が経てば忘れるって言うけどさ…」
雫が落ちる度に
豊潤(ほうじゅん)な大人の香りが
辺り一面に広がる
雫が落ちる度に
あの人と過ごした日々が思い出される…
あの人と重ねた日々が蘇(よみがえ)ってくる…
ぽちょん ぽちょん
「そんな簡単な愛し方してないよっ
…そんな簡単じゃないんだよ…」
ぽちょん ぽちょん
弁柄色(べんがらいろ)の雫と共に…
涙も落ちた…