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【短編小説】ビニール袋の中の無造作な工具

⚠少々グロ表現あり
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「学生さん お困りのようだね
どれどれ オジサンに見せてみなっ」

無精ヒゲを生やしたオジサンが背後から声をかけてきた

「これなら直せそうだぞ」

そう言うとオジサンは無造作にスーパーのビニール袋からスパナやバールなどの工具を取り出す

「ありがとうございます
助かりました

あの…えっと…
やけに準備がいいんですね…
自転車屋さんですか?
ボランティアしてるとか?」

オジサンは黄ばんだ歯を見せニヤリと笑った…

僕は ドキリとして後ずさりした…

ガタッバタバタッ

自転車たちが ドミノのように数珠つなぎに倒れていく

「あーあ 何やってんだよ
大丈夫か?学生さんよ」

手を差し伸べてくれたオジサンの手を握り立ち上がる

「あはは…すみません
世話かけて…」

「学生さん ひょろひょろ だからな
ちゃんと食べろよ
育ち盛りなんだからよ」

「ははは…そうですね」

なんだ僕の思い過ごしか…
ただの世話焼きのオジサンじゃないか
見かけで判断したら いけないな

「ほら、これでも舐めて待ってろ」

ビニール袋にガサッと手を突っ込み 片手いっぱいの飴玉を僕に渡してきた

「ありがとうございます
こんなに いっぱい食べれないですよw」

ガハハと笑った後、オジサンは再び僕の自転車の修理を し始める

気のいいオジサンだな
僕は、そう思いながら飴玉たちを眺めていた

あれ? なんだろう…
飴玉たちの中に 可愛らしいキャラクターのヘアピンが混じっている

オジサンの趣味 ?!かな…?!
なら、見なかったことにして袋に
そっと戻しておこう
そう思ってヘアピンを取り出した

「えっ!?…この汚れ…サビじゃないよな…まさか…血…」

背後に気配を感じた
振り返るっ

スパナを振り上げ、黄ばんだ歯を見せニヤリと笑うオジサンを一瞬 見た

ドスッ
頭に 鈍い痛みが走り
僕の視界は 真っ赤になった…

画像  #綿帽子のキリトリ世界

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