【短編小説】ピノキオ
【朗読】ピノキオ
君があまりにも優しく笑うから…
…僕は嘘をつくんだよ
君は優しく笑って
『イノチ』って言うモノを僕にくれた
抜け殻の人形だった僕に
ぽかぽかってする
キュっとする
チクチクってする
そんなモノをくれた
そしたら喋れるようになった
『キモチ』が生まれ
『考エル』が生まれた
いつしか『嘘』を覚えた
喜ばす為に
自分を繕(つくろ)う為に
罪を隠す為に
嘘をつくたびに
鼻が伸び
『傲慢(ごうまん)』が生まれた
「君が嫌いだっ!」
鼻が伸びる
傲慢も湧く
「僕に構うなっ!」
鼻が伸びる
傲慢も溢れた
僕は嘘をつく
たとえ醜い姿になっても
なったとしても…
君が優しく笑えるように
笑っていられるように
僕に『命』をくれたことと引き換えに、こんな呪いをかけなくちゃならない君が…
罪の意識を持たないように…
黒くなってしまわないように…
僕は、なるべく優しい嘘をつく
だから君は優しく笑って
こんな僕の代わりに
笑っていて…
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