自閉症の息子の母が「梅切らぬバカ」を見てきた
昨日、映画「梅切らぬバカ」を見てきました。
自閉症の息子を持つ母を加賀まりこが演じていて、加賀まりこのパートナーの息子さんも自閉症だという話をネット記事で読んで初めて知ったりして、自分が自閉症の息子の母だというのもあって、これは見に行かねばなるまい、と思った次第です。
事前に公式ホームページを見ていたら、予告編の動画が流れて、それ見ただけで泣けてきて、感動大作なんだろうなあと思いました。あと馬の世話をしている高島礼子が優しそうだなあと思ったりして。
そういう印象を持ちながら劇場に足を運んだのですが、色々と裏切られましたよ。
まず映画の内容がお涙頂戴の感動大作というよりは自閉症の息子とその母親の日常を淡々と描いたリアリティあふれる作品であったこと。
あと高島礼子が主人公親子にとってそんなにいい人ではなかったこと。
予告編だけではわからないことが色々とありますな。
そんな感じで日常を描いたリアルな感じの話だったんですが、自分も自閉症の息子の母親なもんで、色々と身につまされる部分も多かったです。
まず忠さん。塚地武雅さんが演じていてとても演技がうまくて本当の自閉症の人かなと思うくらいでした。
仕草などもそうなのですが、服の着こなしがうちの息子コハブタとそっくりで。
うちの息子も体が大きくてズボンのベルトを腹の下の方で締めてズボンを穿いてるんだけど忠さんも全く同じ。
忠さんの着てるポロシャツをTシャツに変えたらまんまコハブタです。
自閉症の人の服装なども色々とリサーチされたのだろうなあ。
塚地武雅さんの演じる忠さんは体が大きく、加賀まりこさんの演じる珠子は小柄で華奢で、そのへんも私と息子と似たような感じだなあと思いました。
うちも25年後ぐらいにはあんな感じになるのかなあ。
「このまま共倒れになっちゃうのかねえ」という珠子の台詞が突き刺さります。
そんで忠さんをグループホームに入れることになって、手配をしてくれた忠さんの施設の施設長さん(林家正蔵)がすごくいい人で、グループホームの世話人さんもこれまたいい人で、福祉に携わる人達がとてもいい人に描かれてたのはとてもよかったです。息子がお世話になってる施設の職員さんもいい人たちで、たまにニュースで見る利用者さんに虐待行為をして逮捕される福祉施設職員はレアケースであって欲しいと思うし、そういう人を出さずにこういういい人たちがいい暮らしができるようにどうにかして福祉に携わる人達の給料を上げて欲しいと思います。
役所の職員さんはドライな感じで、自分がお世話になってる役所の職員さんはもっと人当たりがいいので、役所の人も色々なのだなあと思ったり。
あと、地域住民がグループホームの反対運動をしてメガホンで怒鳴ったりしてて、自分と息子の身の回りではあまりそういう話を聞かないので、都会はそんな感じなのかなあと思ったりしました。
息子の施設は、熊本地震とコロナ禍で中止になったりもしていますが、そうでない時は年に一度地域住民の方々を招いてお祭りを催したりして交流を深めたりしておられるようです。
映画に出てきたグループホーム、地域の人達に対する説明が足りなかったのか、それとも心の狭い人が近所にたまたま住んでたのかどっちなんだろう。
忠さんが隣の家に勝手に上がり込んだとかでお隣のお父さんに怒鳴られて珠子が平謝りしたり、忠さんがグループホームから抜け出してお隣の息子さんと一緒に乗馬クラブに行って馬が逃げ出すトラブルを起こしてしまったりというのも身につまされました。
うちもご近所トラブルで何度も頭を下げに行ったし、学校や施設から抜け出してしまうこともあったし、何なら気づかないうちに家からいなくなって警察に捜索を依頼したことも複数回ありますです。
珠子さんもそんな感じで神経すり減らしながら生きてきたんだろうなあ。
グループホームに住んでる人たちもまた「ああーこんな人いる!」って思える人たちばかりで。事前の下調べの綿密さと俳優さんたちの演技力に感服しました。
お隣の小学生の息子がとてもよい子だったのも物語の救いになってよかったなあ。
忠さんが勝手に隣の家に上がり込んだことがあった後、ずっと探してたボールが見つかって「届けに来てくれたのかな」って気づいてくれたり、馬を見るために忠さんを連れ出したことも泣きながら両親に告白したり。
物語は「感動をあなたに!」みたいな感じじゃなくて自閉症の人とその親御さんの生活をリアルに淡々と描いたものでお涙頂戴ものではなかったんだけど、ラストではお隣さん家族との距離がちょっぴり縮まって、今後良い方向に行きそうかな、と思える感じでよかったです。
でも珠子さんが亡くなった後のことを考えると珠子さんが元気なうちに忠さんには親元離れて生活する場所を確保してあげたほうがいいと思うのでグループホームを退所してしまったのは惜しかったな、と思うのと、梅の木も通行の邪魔になってるし剪定したほうが梅の木にとってもいいので、枝を切った時点では忠さん自傷とかするかも知れないけどあの枝は切ったほうがよかったんじゃなかろうか、とは思います。
何でも避けるばかりじゃなくてときには挑戦して乗り越えることも必要なんじゃないかなと思います。
私ももう歳だし物忘れもするようになったので書き忘れてることもあるような気がしますがとりあえずこんな感じで。思い出したら追記修正します。