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日記hibi/ 2018/8/27〜9/2

2018年8月27日(月)
ガルシア・マルケス『百年の孤独』が満を持して、開かれた。すでに「代わりに読まれて」いるため、初めて読んでいるにもかかわらず、懐かしさ、愛おしさがすごくある。おかえり、ホセ・アルカディオ・ブエンディア。おかえり、ウルスラ。マコンドの物語がここから始まったのだ、いやこれから始まると思うと、それだけでぐっと来てしまう。

夜に、毎月収録している本屋ラジオの集まりがあったので、赴き、ラジオを収録し、その後納品したり、委託の売れ数を確認したり、受注をもらったり、など日頃割と忙しいメンバーが一同に介するので、とりあえず溜まっているそれぞれのやり取りをどんどんこなす、という、これも定例のものが行われ、HABは若干潤った。夜に、店を開けたい、という人が来てくれたので、おまかせしたところ、大雨が振り出し、これはもう、これはもう……、と思っていたところ、なんと2名も来てくれて本を買ってくれていたので、ラジオ収録帰りで店にもどった僕は、とりあえずビールを出し、その2人のお客さんやら、店番さんやら、もちろん自分にもふるまった。このおもむろに「ビールを出し」という行為を、簡単に、いつでも、どんどん行う人になりたい。

2018年8月28日(火)
朝から宅急便を待っていたところ、届かず。追跡番号で確認したら近くの営業所だったので、電話を、と思って掛けてみたら、どうも地区代表という感じの、自動音声のテレフォンセンター的なところに繋がった。「混雑」という理由でなんどかすげなく切られたあと、やっと繋がった電話でオペレーターの人に要件を伝え、「では営業所から掛け直しますね」という、まぁそれしかなかろうな、という対応で一度電話は切れ、そうして最初にダイレクトに電話したかった営業所からの折り返しが来たところによると、部屋番号が未記載だった、とのことだった。ので伝え、問題はとりあえずの解決を見たが、そういえば荷物に最初から僕の電話番号が書いてあるのでは? と問うたところ、そうです、とのことで、では最初から電話してくれれば……、という問いにたいへん歯切れ悪くしていたので、なぞ、と思って電話をきった。そうしたところ、すぐに鹿児島の、荷物は鹿児島からのものだったのだけれども、たいへん鹿児島弁の雰囲気をそのまま残す女性から、(あきらかに“おばさん”といったふうの声色だったが、その鹿児島弁とおばさん感がなおさら、萌、というか、僕の心を和らげる力を大いにはたらかせた)、荷物に部屋番号の記載がなかったので聞きたいです、という旨の電話をいただいた、ということろで、問い合わせシステムの全体像を理解し、心の平穏を得た。
営業所の番号が公開されていないのは、みんながそこにかけると仕事が滞るからで、マンションの下まで来ても直接電話しないのは、そういうことをみんなにやっていると逆に非効率だからで、持ち戻って、発送元の総合センターからかけ直すのがルール、という感じなのだということが推察された。何百万の荷物をまるっと処理するためのシステムとしてはそのほうが効率的なのだなぁ、というところが頭で理解できたので、納得し、その上で、物事をまっすぐ解決できないようになったら、しごととしては終わりだな、という気持ちを抱いたため、今日もHABは僕だけで営業されていた。わかりやすく、シンプルに、気持ち一つで生きていきたい。

夜、なすのあげびたしを作ったところ、たいへん美味であった。

2018年8月29日(水)
わりと早起き、といえる朝を今日は迎え、コーヒーを飲み、メールなどぱちぱちタイピングしてお返ししたあと、早々に蔵前のHABの向かい、清澄白河、小伝馬町、神保町と、巡回して本を納品したり引き取ったりしていた。東側、なんの偶然なのか、まるっと東京の東側に巡回する場所がまとまっていて、大変ありがたい。むかし阿佐ヶ谷に住んでいたころは、原付きで1時間かけて蔵前まで通っていたな、などと思うが、もうめっきりこのあたりが過ごしやすくなってきた。納品後に、日中の仕事の事務所に向かうため、代々木八幡に向かった。急に東京をぐるーーんとまわる。
夜、映画を見ようと思って、新宿の映画館のサイトを見たところ、なんと満席になっており、おぉ、と思ったらレディースデーであった。僕はもちろんレディースではないので特に何も喜びに感じることはなく、行けそうな時間で開いていた日比谷、に急遽赴くここととなった。日比谷。日比谷! そう、COTTAGE。今回こそは、COTTAGEにも赴かねばと気合を入れて、バタバタと移動したところ、ついた時間は閉店時間10分前であった。やり遂げた。今度こそはやり遂げた、という思いで、蛍の光的な、いや、蛍の光だったかは正直思い出せないのだけれど、そういう、閉店ですよー、もう閉まるんですよー、という気持ちを日本人の心に否応なく植え付ける音楽を聞きながら、足早に見て回った。面出しや平台にいる本が、新刊もあるけど新刊だけじゃない、という絶妙な構成で、とても良かった。入り口すぐ、というか、エスカレーター上がってすぐ、という位置、つまり入ってきた時に最初に目に入る位置、からのレイアウトを観察したり写真に残すのが好きで、今回もそうしたのだけれど、平台だけでなく、何本か、回遊性や視認性が悪くなっても、動線に平行な棚をつくる、というのはもう全然珍しくない、というか、かっこいいもの、“ばえる”ものとして、定着している感がある。とてもばえた。とはいえ実際のところ、そういうのが本当にいつもばえるためには、しっかり手を入れていく必要があるので、苦労が忍ばれた。


見られた映画は「ペンギン・ハイウェイ」で、原作は読んでおらず、どんな映画かもぜんぜんわからないまま、監督・石田祐康、脚本・上田誠、であるならば、と見に行ったところ、たいへんよいものだった。アオヤマ君。小学四年生。いい。アオヤマ君はとてもよかった。夏休みの、少し不思議的な話かと思っていたら、後半からミステリーでファンタジー巨編みたいになり、驚きながら楽しんだ。アオヤマ君の妹が、夜にベットに来て、「おかあさんが死んじゃう」といって泣くシーンがあって、それは本当にいま死んじゃいそう、ということではなくて、「いつか、おかあさんも死んでしまう」という、身近な人のいづれ訪れる死に急に気づいてしまったがゆえの涙で、たしかに小さいころ、そういうことを考えていたし、感じていたのに、なんでそう思っていたことからまるっと、僕は忘れてしまっていたんだろうか、忘れてしまえるんだろうか、ということを考えて、一人涙していた。後半でコーヒーを飲んだシーンもよかった。そのとき、大切な時間を、大切な相手と、大切な場所で、普段どおり過ごしたことが、過ごそうと思ったことが、何よりも愛おしかった。

深夜に、昨日作ったなすのあげびたしに、そばをぶちこんで食べた。美味であった。

2018年8月30日(木)
朝からいの一番に『ペンギン・ハイウェイ』が買われた。『百年の孤独』よ、すまない。

とりあえずいま、40冊の本を箱に詰めて、カートに乗せて引きながら電車に乗っている。夜に双子のライオン堂に行く用事ができたので、月曜日の読書会での受注分を、これは直接持っていったほうがエコ、という理由でカートを引いている。実際のところ1000円以上の送料が利益に変わるので、ぜんぜん馬鹿にできない、が、蔵前から、下北沢、代々木八幡(公園)、からの赤坂なので、相も変わらず移動距離が長い。
下北沢で返品を下ろし、入荷本を詰め直した、八幡で仕事したのち、ライオン堂で30冊ほど納品し、そのままHABが取次で扱っている『しししし』を開いたスペースに詰めて、両国の自宅へ帰宅した。なぜか首が痛い。エコ。
そもそも、ライオン堂ではインタビューを受けていた。本になるらしい。たのしくお話をした。話せば話すほど、「え、ほんとうに、まじでいそがしくないですか?」ということを聞かれることが多くて、「そうですねぇ、忙しいですねぇ」と普通に答える。最近は、「みんなどういう生活していますか?」と返すようにしていて、そのようにして他の人の話を参考に、休むポイント、というのを探っている感がある。休むポイント、というか、一人でいないで誰かと遊んだり飲んだりするポイント、のことで、一人でずっといるのがぜんぜん苦じゃない性格なのだけれども、ビールは飲みたい、とか、たまには誰かを喜ばせよう、とか、そういうことなのだった。学び。人からの学びを生活にいかす。

2018年8月31日(金)
棚卸し、なのであった。HABではなく、B&Bの、ということで、つまり今月は決算月なので、棚卸し、なのであった。棚卸しはとにかく地道な作業が要求されるので、楽しくはない、楽しくはないのだけれどけっこう好きで、延々と同じ作業を繰り返すなかで、この手の向きのほうが楽だな、とか、この作業動線がスマートだな、とか、そういう小さな気づきと改善を積み重ねていくような作業が好き、なので KAIZEN!したかったのだけれど、月末の入金やら精算やらが終わっておらず、昼過ぎになってやっと棚を卸す作業に参入し、喜びを得た。
そうして興が載ってきた矢先、Amazonから電話がかかってきて、なんのことかと思いきや、直取引のお誘いだった。マジか、ウチにか、どぶ板営業感がすごい! と思ったが、せっかくの機会、これはいろいろ聞くチャンス、と思って話を聞いた。直取引は聞いていた通りの条件で、別にぜんぜんメリットがない話ではなかったけれども、かといって積極的に参入したい話でもなかったので、するっとお断りした。なんだか、世の中にはAmazonにない本は世の中にない本、という認識、というか、そういった考えに基づいた購買行動がなされることが多い、というのは、いろんな仕事とか、実際にもらう発注の様相などで実感しているのだけれど、もっとこんなにいい本屋さんのwebショップなどあるのに!、検索、検索能力を高めてほしい、ということをわりと日々思っている。とはいえ、Amazonも一つの本屋なので、HABの基本条件に合わせてくれるならもちろん喜んで、ということなのだけれど、一つの相手だけ特別条件で出すということは絶対にできない、という矜持があるので、ごめんなさい、ということなのだった。柔軟に対応したいけれども、特別扱いはできない、という小商いのあわいを探っている感がある。その後、そういえば、という感じであのへんとか、このへんとか、困ったり気になったりしているんですけど、ということを不躾に聞いてまわり、丁寧に対応していただいた。
棚卸されたデータを見て満足感を得たあと、新宿に『のんのんびより ばけーしょん』を見に行った。この作品は、のんのんびよりであるからには、そのように始まってほしい、という、その一言からちゃんと始まってくれたため、たいへん安心感があった。それから友達ごはんをたべて帰ったのだけれど、金曜とはいえ、新宿という街はこんなに馴染みずらかっただろうか、という気持ちになった。相方が、東京の西側には断固として、新宿や渋谷には断固として行きたがらないのだけれど、どうにもその気持ちがわかってきてしまった感じがある。人混み、ガヤついた町並みがどんどん苦手になっている。

2018年9月1日(土)
荷物が午前中に届くというので、10時ごろから店にいて、店にいるなら開けてしまおうか、という心持ちで、11時には店を開けた。
荷物は11:50にやってきた。最初のお客さんも荷物と入れ替わりで11:50にいらっしゃった。
それだけでなくよく荷物が届く日で、HABが取次をしている本で、出版社と書店で直取引をしている本があったのだけれど、HABの在庫が少なくなっていたので、その返品を在庫にしたいということを僕が主張し、それでHABに送ってくれたものだった。つまり本屋さんからの荷物で、伝票がダンボールの側面に貼られていて、なんだか和んだ。宅急便はだいたい上面に伝票を貼るものだけれど、取次向けの返品伝票は側面に貼るのがルールなのだ。
朝から長く店にいたので、だいぶ環境に飽きてきたところで閉店時間となり、その足で恵比寿に赴いた。敬愛する声優、楠田亜衣奈さんのライブがあった。好きで好きで好きすぎるので、一時期はライブツアーをまるっと全国回っていたのだけれど、今年は全然行けないまま、初参加がツアーファイナル、という形で、「みんな出来上がっているのに、僕だけ温まっていない」という環境に恐れおののいていたのだけれど、好きに楽しんだ。楽しんだ!大いに楽しんだ!!

2018年9月2日(日)
雨でだれも来ないかと思っていたらけっこう皆さんやってきてくれた。

むしろいま、たいへん、お腹が空いている。なんかずっと、人が少人数で入れ替わり立ち替わり入っていきくれているところで、ソースだけかけて食べられないまま放置されたサラダパスタが、すでに小一時間ほど後方に鎮座している。

すごくじっくりみてくれていた人がいて、なおかつ買ってもくれたので、たいへんハッピーな心持ちになる。

いま、隠れてヨーグルトを食した。ブルーベリー。

ようやく人がいなくなった、というタイミングでごはんを食べたところ、そのあとは閑散としていた。そういうものだ。
とはいえ、全体としてはとても人に来ていただいた日となり、本も売れたので良い一日であったが、どういう経緯で人が来たり来なかったりするのか、本当にわからない。毎回このくらい売れてくれればだいぶ楽になるのに、という数字であったが、なぜか今日は運が良かったのだ、ということで片付けられた。どちらにせよ店は開店日には開けるのだ。本を売ることが出来てよかった。

今年はさんまが大量ということらしいので、さんまを焼いて食べた。大量でも少量でもさんまは食べる。おいしい。だから本屋もあける、ということだろうか。や、さんまとつなげるのは無理がありすぎたか。つまりは、生活であるといい、ということなのだろうか。さんまも本屋も。
や、無理がありすぎるか。まぁ、おいしかったので、なんでもいいか。目黒のサンマ祭りには、一度も行ったことがない。

#READING  『ペンギン・ハイウェイ』(森見登美彦、KADOKAWA)

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