団地で育って団地で死んでいく

「持ち家か借家か。それが問題だ。」

なんてのが界隈でしょっちゅう話題になってますが、僕はそこに団地を加えたいと思います。

高度経済成長時代に住居の供給不足から作られた大量の公団住宅を略して団地と呼びます。

当時最先端の建築技術である鉄筋コンクリートで、しかも壁を構造体として使っているので、恐ろしく頑丈。東北の大震災の後、陸前高田で他の建物がすべてなくなって更地になっている中、津波で4階まで浸かっても倒れなかった団地の残骸が忘れられません。だから今でも団地は日本中に残っていて人が住んでいます。

僕は物心ついた頃から団地に住んでいました。階段の両側に鉄の扉でできた玄関があって、生ごみはダストシュートという4階から1階まで通じるシューターを使って捨てるという仕組みになっていました。階段の掃除はみんなで交代でやり、僕も手伝った記憶があります。同じ階段に住む子供は皆友達でした。

当時は抽選に当たるのが難しく、両親は何度も応募してようやく団地に住むことができたようです。洗濯機やテレビ、エアコンなど最先端の家電も揃えて、毎日が幸せそうでした。学校でいじめにあっても、家に帰れば安心できます。なんせ津波でも壊れない鉄筋コンクリートだから。


大人になり、子供が2人とも私立大学に6年通ってくれたので貯金がすっからかんになって、また団地に住むことになりました。築40年近い物件ですが、内装はリフォームされていてきれい。今は子供達は巣立ち、妻とも離婚したので、3DKに1人住まい。これがしっくり落ち着くのです。

周囲は空き家が多く、外装もかなりくたびれてますが、中は最新の家電でスマート化をして、家がとても落ち着ける場所になりました。家賃も格安なので、老後資金を貯めるのにも最適です。そして、1人になってみると徐々に子供の頃に過ごした「家」の感覚が戻ってきました。

今の団地は定年までしか住めませんが、次は自分が昔から住みたかった地方の団地に移って人生の終わりを迎えたいと思います。今後さらに古くなってスラム化するんじゃないかという心配はありますが、やっぱり団地が好きなのです。時々部屋の前の階段を掃除するのも楽しく、同じ階段の方と軽く挨拶したりするので、寂しくはありません。この絶妙な距離間も団地の魅力ですね。

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