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「スターソルジャー」開発者インタビュー(ダイジェスト版)

筆者が2021年に出した同人誌「スタソルが好き!」より、スターソルジャーのメインプログラマーであった”野沢プログラマー”こと野沢勝広氏に行ったインタビューを一部公開する事にしました。
WEBで読みやすい様に一部改行と読点の箇所を増やしている他、構成の都合で注釈を加筆しています。
なお、本文中には画像を使用せず、文章のみの掲載にしております。



1:タイトルロゴを考えたのも私です。

―「スターソルジャー」というタイトルは野沢さん御本人が付けられたそうですが、ネーミングに御苦労はありましたか。

野沢氏(以下敬称略)私が決めて、すんなり受け入れて貰った。
他にも色々候補はあったが、プレイヤーがパイロットとして搭乗するから、戦士だね。
戦士→「コマンダー」…は違うか。ソルジャーで良いんじゃない?宇宙戦士?コスモソルジャー?コスモは無いか。星の中で戦うからスターソルジャーかな?
「スターフォース」(※)にも繋がってる感じがあって良いんじゃない?って。実際には、他にも名前が出てたが覚えてない。
結局はスターなんとかなら大体通った気がするね。
「スターフォ-ス」は使えないって事だけ決まってた。

※ スターフォース…スターソルジャーの前年に発売された、ハドソン初のキャラバンシューティング。
テクモ(当時の社名はテーカン)のアーケードゲームの移植。

野沢:タイトルは付けたけど、それ以外の(自機や敵の)名前は付けてない。(※)
広報とか営業辺り?もしかしたらコロコロ関係も?解らないけど、その辺りが決めてたのかな。誰が付けてたのか、私も知りたい(笑)。
見た目でバブルみたいな奴とか、イカみたいな奴とか、セミの頭みたいな奴って呼び方をしてたよ(笑)。

※ 例外として、各ステージ最後の敵であるスターブレインとビッグスターブレインのみ、画面に名前が表示される関係で野沢氏が名付けている。
全面クリアの後に始まる裏面は敵キャラの見た目と名前が変わるが、これは後から決まった事なので、名前はスターブレイン(ビッグスターブレイン)表記のまま変えられなかったそうだ。


― タイトルは初期の段階で既に決まってたんですか?

野沢:最初の会議で決まった。タイトルの文字部分も私が設計して作った。

― タイトル画面のロゴも野沢さんが考えたんですか?

野沢:そうだよ、私です。誰もやってくれなかったので。何でも屋の私は、出来る事は何でもしますよ(笑)。
キャラ制限で時間をかけずに部品を作って配置して、文字を書いて、空いてる部分にビッグスターブレインを合成。最初は文字だけだったんだよ。

あまりに寂しいので悩んでたら、ボス(ビッグスターブレイン)の画像が上がって来て。
「上手く合成出来ないかな?」とは思ったが面倒だったので、暫く考えて「プログラムで合成すれば簡単かな?」と書いてやってみた。
文字がデカ過ぎてバックがしょぼいから、大きいの作って貰って合成してみた。合成してからも少しキャラ足したりして完成形へ行くわけ。

「SOLDIER」の「O」と「S」のところ、カドの辺り背景の絵が欠けてるでしょ。これは、此処にキャラクターを置けなかったからしょうがなくて。あと、「D」の横とかもそうだね。


2:コンティニューを入れなかった理由

― 当時はコンティニューのあるゲームも多かったと思いますが、付ける予定はあったのでしょうか。

野沢: クリアするのがメインじゃないから入れない方が良いんじゃない?ってなったかな。
最終的に私が決めたのか合議したかも覚えてない。
付けるか否かで議論はあったね。

コンティニューは、点数がリセットされる以外ほぼデメリットが無いのよ。
そうなると、絶対コンティニューしてクリアしちゃうじゃない。それじゃ意味ないよねって。
どっちが良かったのか、良し悪しの判断は難しいよね。ユーザーの大多数に合わせるなら、付けた方が良かったかもしれないけど…やっぱり何とも言えないな(笑)。


3:全16面にした理由

― 容量がギリギリだったのに、エンディング画面も付けたかったとか。

野沢:エンディングを付けるなら、コースを間引くとかしないといけなかったけどね。
これでも結構間引いてる。
最初出来たコースだと全部入らなくて。
前半+後半の作りにしたのは思いつきだったけど、その事で使い回し出来るパーツが増えたしね。

ただ、しまいには使い回し過ぎるとバレるよねって話で「半ずらし」もやるかって。
使ったコースを半分ずらして表示すれば、違うコースに見えるよね?って。
色や前半後半の構成も変えたりして。

9種類のハーフコースを上手く使いまわして16面になるように色々誤魔化した。
地味な作業だけどめちゃくちゃ大変だったね。
最初に全16面って事にした自分が悪かったんだけどさ(笑)

― 何故16面にしたんですか?

野沢:単に思い付きです(笑)。
コンピュータの中で使われる数字は1,2,4,8,16...なんですよ。それで、8面だと少ないよねってなった時、普通なら「じゃあ10面くらいかな?」と思うんだろうけど、コンピュータ技術者としては「じゃあ16面」って思ってしまうわけ。
8の次は16なんですよ。そういう単純な理由です。
後で自分を殴ってやりたい!と思ったけどね。
入んねえわ!って(笑)。
まさかこんなに入らないとは思ってなかった。

― その辺りが、初めてのメインプログラムで戸惑った部分ですか?

野沢:いや、そのくらい簡単に入るだろうと思ってた自分の甘い考えが問題だったよ(笑)。
初めてだから、見積もりが甘かったっていうのはあるけど。
お陰でゴリゴリの圧縮もしたし、さっき話した様な「面数を増やすテクニック」を、思いついては実装して行った。解る人には解るって事で「よくあんなにデータが入ってるよね」って言ってくれる人が未だに居てくれる。
そりゃそうさ、入れられるものなら、あれだけ入れてみてよって(笑)


4:各ステージのデザインの意味

― 後半の面にしか出て来ないコースのパターンもありましたね。

野沢:溶岩もそうだね。流れてるように見えるやつ。
(溶岩…7面等で赤い波状の物が点滅している部分)
一応「溶岩風に」って言ったら山本さん(※)が「このぐらいが限界だね」って描いてくれた力作。

後半になったらレベルが上がって敵も強くなるから、違う雰囲気も欲しいなって雰囲気を変化させてる。
プレイしてて、急に「あ、何か画面の雰囲気が変わった!何だろ何だろ?」となると、レベルが上がってるっていう。そういう雰囲気を出そうと一生懸命頑張ってた。ちゃんと伝わったかどうかは解らないけどね(笑)。
今まで見た事の無い画面を見るっていうのは、視覚的な刺激が増えるって事で達成感が出るのよ。

だから、毎回変えるっていうのも面白いかも知れないけど、ある程度行くと違う雰囲気になっていくって方がより達成感が出易いじゃない。
一応そういうのは心がけてコースを作った。
スタソルは「スターフォース」とは違うんで、コースのバラエティは多い方が良いよねとは思ってたし。この辺で納得したって言うより、この辺で勘弁してくれって感じでやってたのもある。

― 1面のような機械的な雰囲気のコースと、3面のような剥き出しの大地を思わせるコース。これは何かテーマの違いがあるのでしょうか。
 
野沢:テーマ?テーマねえ…。
特にポリシーがあった訳じゃなくて、プレイしてて違う雰囲気の場所を作るっていう事でしかないのよ。
ただ、最初から3面みたいな地味な大地風だと、テンション下がらない?(笑)
それで、先に1面みたいな雰囲気のコースを出したのはある。

最初は「出撃の場所に近い」つまり自分(主人公)の元々住んでいるところから出発して、荒野を通って、更に敵の基地付近で色々と右往左往する感じのイメージだったんだけどね。
それがキレイに出せたかどうかっていうのは未だに自信は無い。
説明書に載ってるストーリーは後から私の知らない所で付いた物だし。

さっき話に出た溶岩は、機械的な建物と組み合わせる事で「かなり秘境まで」来たって雰囲気にしたかった。
エネルギー(溶岩)と機械の融合みたいなイメージにしたつもり。

※ 山本さん…山本次行氏。ハドソンのデザイナー。
スターソルジャーではキャラクター総合デザイン・ビッグスターブレイン・コースデータを担当。


5:不評で無くした「トラップ」

― スターソルジャーでは、プログラミングだけでなく、プランナーみたいな事もされていたそうですね。

野沢:まあ基本はプランナーではなくプログラマーだけどね。ほぼ自分の感性で作って、色んな人にやって貰った感想から変更をかける感じかな?
 
― 野沢さんの感性とは?

野沢:私のシューティングの感性の基本は、グラディウスとスターフォースで出来てるんだけどね。
スタソル作ってる時も、詰まると社内のゲームマシン置いてる所に行って息抜きにグラディウスやってたくらい(笑)。

ほぼ感覚的に敵のエントリー順番をテーブルにして、やられたら何処まで戻るかをプレーして決めてたね。
パターンゲーにはしない、ってポリシーはあった。
隠しパネルは自分でも難しそうな所に書いてたよ。
後は、潜る所は此処で潜ったらつまらんから、この辺かなとか。

敵の攻撃の強さレベルの調整は自分が良いと思うまで調整してたけど、上手い人がプレーして「後半もっと難しい方が良い」とか言ってたのでレベルを更に上げた。
お陰で、自分でノーミスクリアは出来なくなった。

― トラップゾーン(※)の配置はなかなか絶妙ですが、あれも野沢さんの感性だったんですね。後から追加、というかなり無茶ブリだったと聞きましたが…

※ トラップゾーン…スターソルジャーの特徴のひとつ。
浮遊大陸の特定の部分に自機を潜り込ませる事が出来る。潜っている間は敵の攻撃を受けないが、自分からの攻撃も出来ない。

野沢:ほぼ完成で、社長に見せたら「これ向こう側(裏側)に行けないの?」にはたまげた(笑)。
徹夜や会社に泊り続けたりして1週間ぐらいで実現したけどさ。
隠しパネル触ったら潜って、出るパネル触ったら表に戻れば良いか?裏に潜ってる時に弾が出たら変だよね?
制御は無理だから、出ない仕様にするか?あれ、バリアどうしよう?とりあえずこのまま?うーん、勿体ないからワープとか入れる?隠しパワーアップも良いか?
色々考えたね。
バリアの裏潜りも作ったけど、居る場所が解るからバリアは表のままにしたんだよね。

潜らせてって言われた時は「ダメなら、無理ってことで」とか「実現するには何すれば良いかな?」とか考えてた。
無理だった、ってばっくれる気ありありだったけどね(笑)。
考えてると出来そうだから入れてみた感じです。
配置については、潜る所と出る所に透明なセルでマークして作ったんだけど、おかげでコースが膨れて、またメモリーが足りなくなったんだよ。
ハーフコースを更に何枚か削ったんじゃないかな。

どうせならと逆ワープ(トラップ)も仕込んでおくつもりだったけど、不評だったかで無くした。
一時期あったのは記憶にあるけど、速攻でボツかな?
あまりに酷いので、自己規制だったかな?
記憶が定かじゃないな。
ただ、潜ってる間は点数を稼ぐ事は出来なくなるから「トラップ」にはなるかと。

トラップゾーンは賛否両論で、あれがあるからクリア出来るって人もいれば、無い方が良かったって人も居る訳じゃない。
そういう良い面悪い面含めて、あれがスターソルジャーなんだよって言うしかないよね、もう。
世に出てしまった物を反省して「これを直したらどうなる?」なんて言ったって、後の祭り。
出来上がった「個性」に文句を言ってもしょうがないよね。



公開版は一旦ここまでにしておきます。
現段階では此方の同人誌の再版や続編の制作が難しい状況なのですが、ネット上には真偽不明の話も多く、また、一部で拙誌が高額転売されている事態も知ってしまった為、制作者の方の話を広く残しておきたい思いでこの様な形を取る事にしました。

タイミングに関しては、いつか行いたいと思ってた時に、大好きな「ゲームセンターCX」の最新DVD-BOXでの撮り下ろし挑戦が「スターソルジャー」になったので発売日に合わせてみました。
こういう言い方は烏滸がましいかも知れませんが、もし課長の挑戦のお供になりましたら幸いです。

ちなみに。
スターソルジャーが当初コロコロコミック誌上で「スーパースターフォース」(仮題)として、スターフォースの続編を匂わせていたのが、結局スターソルジャーとなった経緯については、岩崎啓眞氏がブログに書かれています→Colorful Pieces of Game(該当記事に飛びます)
此方にも野沢氏の話が掲載されています。

noteは以前からアカウントだけ持っており、今回初めて記事を書いてみました。
お見苦しい箇所がありましたら御容赦願います。


□追記□
元の同人誌にも書いてますが、この内容を勝手に動画に使ったりしないでくださいね。
こういうのも書かなきゃいけない世知辛さ。

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