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投資失敗時にこそ考える、今後の生き方

投資に大きく失敗してしまったとき、私たちは精神的に大きなショックを受けます。なんて馬鹿なことをしたんだろうと、自分を責めます。
そんなときに、どうやって現在の状況を受け入れ、どのように精神的な支柱を立て直して将来の人生を過ごしていけばいいのか。そんなことをずっと考えていました。
自分なりの考えた結論を、この記事にまとめました。

競争社会にいつまで埋没し続けるのか

私たちは、生まれてからこれまで、ずっと競争社会の中に生きてきました。学校の中でもテストで順位付けされる、運動会でも順位がはっきりする。そういうところから始まって、受験戦争で高校や大学のふるい分けを経験し、就職活動でも学歴社会の重さを痛感します。

そして、社会人になってからも厳しい環境が続きます。何をすれば評価されるのか、それがとても曖昧な世界です。目の前の仕事をしっかり達成していても、全く評価されないことがあります。上司の心を分析し、おべっかを使うのではなく本質的に上司が求めているものを探し、それに向けて行動し続けないといけないのです。

会社の人事評価は、基本的に理不尽です。どんなに精緻化された人事考課基準があったとしても、それは所詮飾り物。評価する上司の視点で、頼りがいのある部下というように写らないと、評価されることはないのです。

会社の中だけではありません。競争社会は、私たち大人が暮らす社会の至るところに広がっています。そして、その絶対的な価値基準がお金なのです。お金という価値基準は、全ての大人につきまとう背後霊のような存在です。高級住宅街に住んでいる、タワーマンションに住んでいる、良い車に乗っている、ブランドのカバンを持っている、いつも違う服で身を包んでいる、美味しいレストランに詳しい、そういう生活の中の一挙一動に、お金が絡んでくるのです。
そのお金を得るために、私たちは好むと好まざるにかかわらず、競争社会に埋没するしかなかったのです。

でも、そんな競争社会に入らなくても、十分に幸せに生きていくこともできるのです。私たちは、そのことを頭では理解しています。でも、体として、実感覚として理解できているわけではありません。

現代社会は、素晴らしい物とサービスが、安価に提供されています。スーパーで、とても安価にいろいろな食べ物を買うことができます。ごはんと卵と醤油があれば、本当に美味しい朝ご飯を食べることができます。手に入る野菜を集めれば、とても安価に天ぷらうどんを楽しめます。

田舎に暮らすのならば、広くて安い住宅がたくさんあります。そこでの人間関係をしっかり保つという最低限のたしなみを忘れなければ、家庭菜園なども楽しみながら安い維持費で暮らしていくこともできるのです。

より良い給料を求めてストレスの多い会社で長時間働くよりも、普通レベルの給料で自分にとって無理なく楽しくこなせる仕事を選んだほうが、楽しい人生を送ることができるのです。

コロナが発生してから、このようなローテンションな生き方に、さらに注目が高まっています。地方に移住する、ミニマリスト的に生活する、シェアハウスに暮らす、自給自足にトライしてみる、そうやってお金のかからない生活を選択し、競争社会に背を向ける。それは、現実的で有効な選択肢の1つとなっているのです。

本当に達成したいと思う大事なもの

あなたの人生の中で、本当に大事なものは何でしょうか。

今の会社で頑張り続けて出世して、課長、部長、役員。大出世して、大勢の部下を引き連れて大きな仕事をするのも、1つの選択肢です。
でも、その会社を辞めた後に、何が残るのでしょうか。

いずれ会社を離れる日がきて、十分な貯金を残して悠々自適の生活に入ります。でも、その直後から、とても暇になるはずです。大勢の部下がいたはずですが、退職後の自分にはほとんどお呼びがかからない。仕事一筋に生きてきたので、地域のつながりや趣味の友人もおらず、ただ1人家の中に取り残されます。
その時、何を考えるのでしょうか。若い時に、もっと色々なことをしてみたかった。世界中を旅行してみたかった、音楽の世界にちゃんと向き合って音楽家としてトライしてみたかった、地元で多くの友人を作って多くの人から頼られる存在になりたかった、自然を保護するために現在の環境変化を詳細に観察して本当に打つべき手を探したかった、・・・。
そういう、本当に自分自身がやりたかったことが、その時になって初めて認識できるのです。

でも、手遅れとは言わないまでも、その時期から着手するのでは遅すぎます。体力や気力も衰えているし、それまでに蓄積してきたものもない。そうして、無力感を覚えながら日々の暮らしを何となく過ごしてしまうことになるのかもしれません。

私自身は、まだ定年退職をする年齢ではないのですが、定年退職をした人の本を数多く読みました。自分自身がその年齢になった時にどのようなことを思うのか、とても興味があったからです。やはり、会社に人生を捧げた人ほど、その後の無力感、脱力感にさい悩まされる人が多いようですし、それが真実に近いのだろうと肌感覚で理解できます。

だから、早くから競争社会から背を向けるのがいいのです。

お金を稼ぐのを止めろと言っているわけではありません。生活のために働くことは、ある程度必要です。でも、出世や好待遇を求めるために、滅私奉公的に働き続ける必要はないのです。選択肢はいくらでもあります。
ですが、多くの人は、他の選択肢が見えなくなっています。本当に多くの人が、そういう状態になっています。
競争社会に埋没していると、その延長線上の道しか見えなくなります。

誰もが名前を知っているような大きな会社に入って十年以上経てば、その会社の価値観の完全に染まります。会社を辞める人がいれば、その人のことをドロップアウトしたとか思えないでしょう。その人が実はより良い選択肢を求めて会社を去ったとしても、そのことに気付かず、競争に敗れ去ったとしか思えなくなるのです。
とても危険な状態です。すでに、会社が用意した「馬人参レース」に嵌めこまれています。自分の目の前に人参があるので、それをめがけて前に走る。でも、人参は自分の頭の先に括りつけられているので、自分が進めば人参も前に進む。永遠に追いつけない目標に向かって走り続けさせられるのです。

これは、会社が用意した巧妙かつ気づかれにくい罠です。人事評価の仕組み、報奨制度、上司や同僚との飲み会、幾重にも積み重ねられた競争促進の仕組みによって、もはや無意識的に目の前の仕事を熱心にするように仕向けられているのです。
こういう仕組みを作るのが、社長を含めた経営者や人事部の一番の仕事です。

「社員ひとりひとりがやりがいを持って、働き続けられる会社」

こういうきれいな言葉で表されますが、別の言い方をすればこうです。

「社員ひとりひとりを、持てる力の限界まで貢献させる会社」

会社の本音は、当然ながらここにあります。江戸時代の「百姓は生かさず殺さず」と同じですね。会社の貴重な金を使って社員を雇用しているわけですから、その限界まで働いてもらわないと困るわけです。課長、部長といった役職を用意することも、給与やボーナスでインセンティブを高めることも、この社内競争に夢中にさせるための仕組みです。昔から行われてきた、非常に効果的な仕組みなのです。

会社員の方を前提にお話ししましたが、自分で会社を経営している人や、個人事業主として色々な仕事をやっている人も同様です。
お金を稼ぎ続けるという大きな目標のために、新規顧客を探し続け、既存顧客に頭を下げ続け、人間関係のストレスに悩まされながら苦しい毎日を過ごしているとすれば、自分の人生を仕事に奪われています。

自分の人生のために本当に必要なことがあります。でも、それをするための時間も体力も気力も金銭も、目の前の不本意な仕事のために費やされているとすれば、それは良くない状況なのです。

競争社会というのは、資本主義の世界の中で、多くの人を労働に駆り立てるために作られた効率的で効果的な仕組みです。そして、生まれて間もない時から競争社会に組み入れられてきた私たちには、競争社会の存在自体が見えなくなっています。空気のようなものだからです。でも、この社会は唯一無二のものではありません。実は、他にもいろいろな選択肢があるのです。

災い転じて福となす

さて、皆さんは、投資で大きな失敗をしました。
これまで会社などで頑張ってきたお金をつぎこんで、大きな投資をして、その大半を失ってしまったのです。

でも、これはピンチでもありますが、チャンスでもあるのです。
コロナが発生した時も、世界中がピンチに陥りました。でも、ピンチに落ち込んだ時だからこそ、これまで積み上げてきたものをリセットして、本当に必要なものを見定めることができたのです。コロナをきっかけに地方移住した人もいますし、リモート勤務を主体として家族との時間や自分の趣味に多くの時間を割くようになった人もいます。

人間は弱い存在なので、これまで積み上げてきたものを捨て、走り続けてきたレールを外れることは、なかなかできないのです。だから、会社で順調に昇進をしている時に、その会社を辞めるという判断はなかなかできるものではありません。
その決断に本当に踏み込むことができるのが、有事の際なのです。
ピンチこそ、本当のチャンスになるのです。
投資で大きな損失を抱えた、今。
今こそ、自分自身の価値観を変えるチャンスなのです。

本当にいまの会社に留まり、いまの住んでいる場所に留まり、いまの目標を負い続けるのが良いのか。全部を一度に変えるのは大変です。
何か1つを変えてみることを、考えてみます。

会社は変えないとしても、もっと地方に引っ越してみるというのも選択肢かもしれません。会社を変えないとしても、目標を変えるという選択肢もあります。どういうことかというと、会社に留まり続けながらもあまり熱心に働かず、最低限の仕事だけはこなすということです。詳しくは、Quiet Quittingという言葉を検索してみてください。日本語にすると「静かな退職」とでも言うべきでしょうか。米国で始まった考え方ですが、日本の中でも広まりつつあります。昔からも存在したワークスタイルですが、この言葉を得て、さらに社会的な認知度が高まったのだと思います。

もちろん、全てを大きく変えるというのもありです。仕事と住む場所はセットです。移住して新しい仕事を見つけて、家族みんなで新しい環境に飛び込むというのも、有力な選択肢の1つです。

いまこそ、本当に自分が必要なことを見つめられる瞬間なのです。逆説的かもしれませんが、非常に貴重な瞬間です。この時間を無為に過ごすことなく、自分の今後の生き方についてしっかり向き合ってみてください。


「投資で大失敗した時に読む本」から、ごく一部の内容を抜粋して紹介しました。


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