担当Pから見た颯とちとせの『メッセージ』所感、あるいは二人への感情の話

■はじめに

よくきたな。おれはハバネロだ。
おれはこの一ヶ月くらいなんの動画も作らずにのんびりしている。したがって今だれかに見せることの出来るものはなにもない。
さいきんは『ドールズフロントライン』の世界で戦術人形を率いる指揮官稼業をやったりしている。いわばエクスペンダブルズだ。『ガンスリンガーガール』というおれの魂に消えないきずあとをつけた作品とのコラボがこんしゅう金曜日から始まるので、そのためのじゅんびだ。

……とはいってもおれの本分はうらわかい乙女をだまくらかしてステージに立たせる女衒みたいなプロデューサー稼業であり、そちらもなんやかんやでいそがしい。シャニマスのほうでは限定夏葉pSSRがじっそうされ、こちらは無事に30連でお迎えというおれにしては珍しい幸運にめぐまれた(なお準決勝での事故によりTrueはまだみれていない)。イベントシナリオでは果穂のせいちょうとメンバのあたたかさに涙をこぼした。ミリシタの方でもスーパーマーケットを占拠しゾンビと戦っているさいちゅうである。これはもしかしたらFGOと記憶がこんだくしているかもしれない。

さて、そんななか週末おおきなイベントがあった。シンデレラガールズスターライトステージ、通称デレステの5周年をお祝いする24時間生放送イベントである。

げんじつのテレビ番組よろしくさまざまな趣向をこらした楽しい企画であった。おれは24じかん完走するつもりでいたが、DJパート「Funky Dancing Night!」の熱量で体力を使い果たし、そのまま倒れるようにねむってしまい、目覚めたのは翌朝の9時であった。そのあとニチアサをはさんだりしながらなんやかんや最後まで見た。体力を使い果たすことを見越して翌日(つまりきょうだ)は有給休暇を取っていたので、それを利用して今この文章をかいている。

ながながと近況報告などをしたが、24時間のうち、おれが語りたいのはタイトルに掲げたたった数分のできごとだ。
とんでもない事件がおこったのである。
6日15時から放送されたライブコーナー「僕らのIDOL FAIR」にて、おれの担当アイドルである久川颯、黒埼ちとせの両名が『メッセージ』という楽曲をうたったのだ。

■いかにして私はPちゃん兼魔法使いさんになったか

メキシコ風の前置きはここまでにして、ここからは真面目な話をしたいと思う。
本題に入る前に、私がいかにしてPちゃん兼魔法使いさん――久川颯と黒埼ちとせの担当プロデューサーになったか、という話をしておきたいと思う。そしてそれは、私のシンデレラガールズというコンテンツとの距離感の話にもなってくる。

シンデレラガールズと私の付き合いは思いの外古い。モバゲー版(モバマス)のサービス開始直後にアカウントを作って登録していた。しかし、その歴史は担当アイドルを通してくっついたり離れたりの愛憎劇であった。

私はサービス開始後しばらく経ってから五十嵐響子を担当アイドルとして定めた。その後、初めての上位イベントで大爆死してモバマスから離れたり、アニメで卯月と小日向ちゃんがセット売りされたのにピンクチェックスクールのメンバーである響子は最終回に一瞬しか出番がなくてヘイトを溜め、CVがついて泣きながら復職し『恋のHamburg』でテンション爆上げしたり、『ラブレター』のMVを見て発狂したりと色々大変であった(その間他のコンテンツにはまったりとかもあったが)。

……そもそも、シンデレラガールズというコンテンツはアイマスの他ブランドに比較してもアイドルの数が多い。そして、それゆえに出番の数や周期にどうしても差が生まれてくる。なので、私のように「デレは色んなものが多すぎるので担当案件だけ追う」ということにしていると、どうしても熱量が下がってくる時期が発生するのだ。
また他方で、その格差こそがプレイヤーがヘイトを溜める要因となっている。それが最悪の形で噴出したのが、2019年2月末のVelvetRose実装時であった。「他のアイドルを差し置いて新アイドルがCVを貰うとは何事だ」というお門違いの怒りがキャラクターや声優さんに向くのを見て、当時の私は深い絶望を覚えた。また1月頭にピンクチェックスクールの新曲イベントが終わっていたので、「しばらく響子に関する供給はないだろうな」という思いもあり、デレ界隈からは距離を置くことにしたのである。

そして時は流れて2019年11月のある日。響子役の種崎敦美さんが登壇する7thライブ京セラドーム公演のチケットを両日握るという幸運に浴した私は、「しばらくデレステも全然触ってないし曲を予習しておくか」という軽い気持ちで、9ヶ月の間にデレステに実装された曲をプレイしていくことにした。
その中で出会ったのが、久川颯の所属するユニットmiroirの『O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!』と黒崎ちとせ擁するユニット、VelvetRoseの『Fascinate』であった。

先に良いなと思ったのは颯のほうだった。
『O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!』の楽曲としてのクオリティも手伝って、私はとたんにmiroirの虜になってしまった。たまたま無料10連かなんかで引いてたSSR凪と並べるためにスカウトチケットでSSR颯を迎え、一ヶ月ぐらい久川姉妹を色んな曲で踊らせまくった結果、12月には颯を担当アイドルとして迎え入れる覚悟を固めていた。颯が気に入ったのは顔が良く(私好みのやや吊り気味の目ときれいな銀髪がとてもよかった)、加えて世間知らずの甘ちゃんな妹キャラかと思いきや利発なリアリストで肝の据わった努力家の一面が見えたことがクリティカルだった。
これまでアイマス1ブランドにつき担当アイドルは1名だけだった私にとって、シンデレラガールズで2人目の担当ができたのは地味に大きな事件であった。

ちとせの方は担当になるまでもう少し複雑な経緯を辿っている。
高校生の頃『トリニティ・ブラッド』や、『月姫』を含むTYPE-MOON作品などに触れ激しくハマった私にとって、”吸血鬼”というモチーフはかなりクリティカルなものだったし、前述の通り『Fascinate』のゴシックなカッコよさにも惹かれるものがあった。蠱惑的で美しいビジュアルと、小悪魔的な発言のうちに覗かせる儚さや周囲に向ける慈愛も、複雑なバックグラウンドを伺わせるものがあり興味深かった。

しかし、ちとせ実装当時の紛糾が私に二の足を踏ませることになった。
今やドラスタと並ぶSideMの顔として多くのプロデューサーに愛されているJupiterでさえ、タイミングの悪さとか諸々の事故が重なり登場当初は謂れのないヘイトを向けられていた。このことは私の記憶にしっかりと残っており、実装間もないちとせと千夜はいまだヘイトの渦中にあるのではないかとか、下手したらライブの場ですら要らぬ罵声を吐くアホがいたりするのではないか等々、今思うと余計な心配ばかりが先行していた。簡単に言えば勇気がなかったのだ。

結局そんな杞憂は『Fascinate』の初披露となった今年2月の大阪公演の初日で吹き飛んだ。あまりにも圧倒的としか言いようのないパフォーマンスは、文字通り私の心をがっちり捉えていた。そして何より、ちとせ役の佐倉薫さんの、キャラクターそのもののような儚く美しい佇まいに激しく惹かれてしまい、二日目の現地に向かう道すがらで佐倉さんのチョクメに登録してしまった。
……この時点でだいたいもう大勢は決していたが、その後スカウトチケットでSSRちとせを迎え、Fascinateのイベント報酬カードとコミュを回収し、ようやく担当アイドルとして彼女を迎える決心がついた頃には4月になっていた。

そこから先の諸々は普段私をフォローしてくださっている方々にはおなじみのものだと思う。限定SSRで颯に制服姿で「せーんぱい」と呼ばれて相好をくずし、ウェディングドレスを披露したちとせと永遠の誓約を交わしたり、VelvetRoseの『時を刻む唄』のカバー実装で我を失い、しんげきえくすてでmiroirが動けば発狂し、と大変忙しい日々を過ごしている。
結論から言うと、担当が増えたことで私のシンデレラガールズとの距離感は一変した。めちゃくちゃ慌ただしくなったが、同時にめちゃくちゃ楽しくもなった。

……こんなことを書くのは憚られるかもしれないが、私は昨年のデレステ四周年の記憶が殆どない。ちょうどデレ全体から距離を置いていた時期と重なっていたためだ。
それが五周年では担当が二人増えた結果、「その二人が同じステージで同じ曲を歌う」なんて奇跡としか言いようがないものを目撃して情緒を壊しているのだから、わからないものだと思う。

■夢と桜、そして未来へ。-同じ言葉、違う思い、でも同じ目線を。

ここまで大変前置きが長くなってしまったが、ようやく本題に入る。

まず、今回『メッセージ』が披露された時の私の感情を書いておくと、とにかくもうパニックであった。

今回「僕らのIDOL FAIR」にちとせ役の佐倉さんと颯役の長江さんが出演することは告知済みで、それぞれの相方である千夜役の関口理咲さん、凪役の立花日菜さんもいることから、『O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!』と『Fascinate』はやるだろうというのが大方の予想だった。そしてその二曲をライブパートの開幕に連続でぶつけられた結果、私はその時点ですでに死にそうになっていた。VRの演出もすごかったし、それぞれ初舞台だった7thライブでの披露時からパフォーマンスも進化しており、素晴らしいものを見せてもらえて感動していたのだ。

そこで崩された後に追撃の様に放たれた担当二人の 『メッセージ』歌唱である。まったく正気ではいられなかった。カメラが切り替わり、直前のライブパートでVelvetRoseとmiroirが着ていた衣装であるネクスト・フロンティアとスターリースカイ・ブライトがぼやけた映像の中に見えた時点で、「あ、やばいかも」という予感はあった。イントロが流れ、カメラが鮮明な像を結んだ瞬間、私は完全にぶっ壊れた。

「いや待って嘘でしょ嘘嘘嘘なんでその二人並んでるの!???まじで????待って待ってなんで?????嘘じゃんなにこれ私だけを殺す兵器なの!!!?????しかもなんで『メッセージ』????ふたりとも桜が背景で制服着てるカードあるじゃん天才か???????」

……とかなんとか叫んでいたような気がする。一緒に通話しながら見てたフォロワー各位にはたいへんうるさくしてご迷惑をおかけしたこと、この場を借りて謝罪させていただく。

画像1

SSR[緋薔薇の令嬢]黒埼ちとせ

画像2

SSR[トキメキ☆ホーダイ]久川颯

ここからは、私の言葉にならない興奮をもう少しきちんと掘り下げたいと思う。

参考資料として、『メッセージ』の歌詞を掲載しているサイトを貼っておく。この曲の歌詞世界は、「少女がラブレターを受け取って告白の返事をするまでの浮き立つような感情」を主題としている。
また、ふたりとも制服姿のカードや立ち絵があるが、学校生活に当てはめれば、颯は「人懐っこい感じの後輩」、ちとせは「ミステリアスな感じの先輩」っぽい印象になると思う。
ある意味イメージ真逆の二人に同じ歌詞をあてがって、告白の返事をする未来に胸が高鳴っている様を歌わせるだけで「天才天才天才~~~!!!!」と言いたくならないだろうか。私はなる。

ここからは歌詞に散りばめられたモチーフを少し深掘りしていきたい。
個人的にちとせと颯を結びつける上で、担当として反応したワードは「桜」「夢」である。

二人とも制服姿で桜が描かれているカードがあることは先程示したが、二人のデレステ内のコミュにおいても桜は重要な位置づけになっている。

颯がメインを張る『O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!』のイベントコミュのエピローグでは桜の季節であることが示される。ここでは桜の花というモチーフは、始まったばかりのアイドルとしての未来への期待を象徴するものになっている。

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一方、ちとせの恒常SSR「緋薔薇の令嬢」のコミュでも桜は登場する。ここでの桜の花は、儚さやいつか散りゆくものの象徴として扱われている。

写真 2020-09-07 19 23 27

同じモチーフである「桜」の扱いの違いは、そのまま颯とちとせ、二人の持つアイドル観や人生観、『メッセージ』で語られる「夢」や「未来」への考え方にもつながってくる。

まずは「夢」について。
『メッセージ』の歌詞にも、冒頭で「Living in the dream I'm feeling the light of fantasy」と歌われたのを皮切りに「それとも夢かな」「憧れていたドラマの中」など、夢想・空想としての「夢」を思わせるフレーズは何度か出てくる。

ここから先は一次資料のない担当Pとしてのいち解釈の話になる。

久川颯にとって「夢」とは「いつか自分の手で叶えてみせる未来」なのだと思っている。
颯は他のアイドルと比べて、特に突き抜けたキャラクター性や特技を持っている訳ではない。また、双子の姉である凪とセットで扱われることに少々コンプレックスを抱えていることも伺える。しかし、彼女の持つ魅力の核は、そうしたわかりやすい一芸の有無や便利な記号としてのコンプレックスではない。自分の望む未来をいつか掴み取るという揺るがない意志、それこそが久川颯の輝きの源泉だと私は思う。
そう考えると、歌詞世界で描かれるラブレターによる告白という青春の1ページ、その返事をする瞬間を心躍らせながら待つ風景は、久川颯にとって限りなく現実と地続きのシーンであるように思われる。

一方、黒埼ちとせにとって「夢」とは、「いつか失われるとしても、それを見せ続けることに意味があるもの」なのだと私は解釈している。
「私は長くない」ということを語る一方で、不老不死の吸血鬼であるという「設定」(……かどうかもいまいち定かではないのだが)を嬉々として見せつける。一方で、千夜やプロデューサーに向ける視線は、信頼を含みながらもどこか「自分が居なくなった後」のことを見ているようだ。だからこそ、限りある今のかがやきを見るものの目に鮮烈に刻みつけることがちとせのアイドルとしての在り方の根源となっている。
それゆえに、歌詞の中で描かれる「当たり前の青春」は黒埼ちとせにとってあり得ざる夢想の絵画であるように見える。

しかし、そんなある種正反対の感情を内に抱きながらも、颯・ちとせの両名がアイドルとしての今の時間を享受し、楽しんでいることは間違いなく共通している。

私の記憶違いでなければ、今回の『メッセージ』歌唱時に、ラストサビあたりで二人がお互いを見て目を合わせるシーンがあったはずだ。
二人が同じ歌詞を歌いながらまったく違うものを見ているのであれば、あのアイコンタクトを含んだ振りは成立しないのではないだろうか。
だからあの目線の交差は、「こうして歌っている今がたのしいね」という純粋な感情で二人がつながった瞬間だったのだと思っている。
あの瞬間のことを、私はたぶん忘れることはないだろう。

アイドルとして活動していく中で、颯とちとせの「未来」は、少しずつ変わっていっているように思う。
颯は凪とニコイチの双子ではなく、つながりを維持したまま、個々の存在として独立していっているように見える。
ちとせもまた、「長くない」と語っていた己の命にも、もしかしたらその先が
あるのではないかという予感を抱くようになっている。

お互いの半身である凪や千夜、そしてプロデューサーや他のアイドル、ファンといった様々な人々の交流を通して、「はじめて」の経験を積み重ねていく中で、考え方や身の処し方が、少しずつ変わっていっているのだと思う。そうやって得たものは、きっとこれからもっと積み重なっていくと思っているし、その力を受けて、もっともっと輝ける未来へ向かうことができると、私は信じている。
だからこそ、実装から一年余りを経て、デレステ5周年というタイミングの大きな舞台で、この言葉を歌ってくれたことを、私はとても嬉しく思っている。

「飛べるよ もっと どこまでも in a dream」

願わくば、その美しい夢の続きを、二人が遠くへ羽ばたき飛んでいく姿を、これからもずっと見ていられたら。
二人のいち担当Pとして、そんなふうに願っている。

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