しじみの砂抜きには包丁、に騙された話
僕が子供の頃、よく食卓に登場した「しじみ汁」
あれ、おいしいですよね。しじみのエキスがよく出てて。
つい最近になって知ったことに「しじみの砂抜きに包丁を漬けておくと良いというのは嘘」っていうのがあったので今日はそんなお話です。
しばしば大人というのは子供のために遠回りな嘘をついたりしますね。
例えば、夕立などで雷がなると「おへそを取られるから気をつけなさい!」なんて薄着の子に服を着せたりシャツを中に入れてやったりします。
あれは夕立などで気温が急に下がってお腹を冷やすのを防ぐために「服を着なさい」ではなく「おへそを取られるよ!」と脅すわけですね。子供はおへそを取られたくないので必死で服を着たりするわけです。
まあ私もそうでしたが大人の「もっともらしい命令」というのはあんまり聞きたくないんですが、恐ろしいものに対する恐怖というのは子供を従順にさせてしまうものなので。
あさりの砂抜きに包丁、というのもそんなところです。
買ってきたしじみというのは体内に砂を含んでいたりするので、そのまま食べると砂が口に入ってジャリジャリするもの。それを防ぐためにはしっかり調理前に砂を吐き出させるのが必要になります。
よく大きなボールに水を張り、中にしじみを入れて放置することで貝が砂を吐き出してくれるのですが、そのボールに包丁を入れておくというもの。
「包丁からでた鉄分が貝に働きかけて砂を吐かせるのだ」とかなんとか父だったか母だったかに言われて「おばあちゃんの知恵袋的なやつだ」と密かに感動した記憶があります。
時が経ち自分が大人になってみると、包丁を水にちょぼんと漬けておくだけで鉄分が溶け出してしまうなら包丁なんてあっという間に溶けてしまうことに気づくわけで。さらに鉄分で貝が砂を吐く、ということも無いみたい。
そうであったとしてもじゃあ別に釘でもいいし鉄っぽいものを適当に入れておけばいいのになぜ包丁なのか、と考えると1つの結論に至るわけです。
「包丁がささっているしじみ入りボールは子供が手出しできない世界になっている」と。
釣りが好きだった私はそっと口をあけている貝の隙間に糸を垂らして「貝釣り!」などとやっていたことがあります。「僕の食べる分を2個減らしていいから金魚鉢にアサリやしじみを飼いたい」とごねたこともあります。
ただでさえ夕飯の支度の忙しい時間に「貝を飼いたい」「ほらほらほら貝が釣れたよ」と騒ぐ私は母にきっと迷惑をかけたことでしょう。「その貝生きてる?ねぇ生きてる?」とペタペタくっついていくのですから。
「包丁を入れておくと砂を吐くんだよ、だから危ないから触っちゃだめ」と母が言えば私は間違いなく手出しができなくなります。子供の危険物上位5つにランクされる包丁の前では魅力的に口をひらく貝もボディーガードに囲まれた芸能人のように手出しができなくなってしまうのでした。
しかしこれを「あなたが手を入れたり釣ったりすることで貝にストレスがたまり口を開くのをやめてしまうと砂を吐かなくなってしまい味噌汁になったときに口の中でジャリジャリするのでどうのこうのうんぬんかんぬん」と説明されたところで「じゃりじゃりしたっていいから2個頂戴」という気持ちに勝つことはできないので、やっぱり大人って賢いなと思いました。
あれから数十年、僕には子供が二人いますがどちらも包丁を入れなくてもしじみ入のボールには手をまったく出しませんでした。貝釣りの楽しさを教えてやればよかった・・・
#最近の学び
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