決勝ゴールの伏線を想う
はじめに
さまざまな論客が集うJリーグ界隈のnote。もちろん私が応援しているジュビロ磐田関連でも、多くの先輩方が素晴らしい記事を上げてくださっており楽しみにしている。
日々、それらの記事を読んではいいねボタンを押しているわけですが、先日の試合でどうしても感情を抑えきれず自分でも拙い雑文を晒してみたくなってしまいました。
それは2024年8月11日、エコパスタジアムで行われたジュビロ磐田と鹿島アントラーズの試合。
降格圏に沈み、さらにチームの得点源でもあるジャーメイン良とペイショットを出場停止で欠くという絶体絶命のピンチで迎えたジュビロが、開き直ってフォーメーションを変えて2-1の逆転勝利でモノにした、這い上がるきっかけを作った試合。
その決勝ゴールについて。
決めたのは古川。静岡学園時代からエコパでの試合は得意だったらしく、そのようなコメントが試合後にもあった模様。
状況おさらい。
1-1の同点で迎えた終了間際の88分。西久保のロングスローを敵陣奥で受けた植村がすぐさまゴール前にグラウンダーのクロスを入れる。渡邊りょうが突っ込むがわずかに届かず流れてしまう。そこをファーから突っ込んできた古川が、相手DFの濃野とゴールポストの間の、本当に狭い、ボール1個ぶんしかないようなスペースに思いっきり蹴り込んだ。
ジュビロはアントラーズ相手にはこのところめっきり勝てておらず、じつに2017年以来7年ぶりの勝利。ホーム開催での勝利となると12年ぶり(2012年以来)とのこと。すげー。
西久保の驚異的な身体能力
びっくりしませんか? さほど助走しないくせに、あのスピードであの飛距離のスローインを投げ込める選手が、世界中でどれほどいるだろう? あんなに線が細そうなのになんで?
ロングスローといえば、今シーズンのJリーグで話題になるのは町田ゼルビアだが、基本的に彼らはゴール前に放物線を描くようなふんわりとしたロングスローを入れて、ペナ内でセカンドボールを拾って得点に繋げるというスタイル。
対して西久保は、ボールをタオルで拭きもせず、わりと直線的にペナ内に投げ込むことが多い。それをペイショットやジョゼが受けてチャンスに繋げるシーンを、今シーズンはよく見る。本当に得難い選手だ。
なおロングスロー後の腕のフォロースルーというか、両腕がグルンと廻って両掌が頭くらい上にきちゃうフォームはむちゃくちゃカッコいいと思っています。可動域どんだけあるんかと。グッズ化希望。はやく。
植村の天才的センス
受けての植村は、早稲田でキャプテンを務めていた極めてサッカーIQの高い選手。昨年7月の早慶戦を味フィーに見に行ったんだけど、ガチで植村と慶應の塩貝(横浜Fマリノス)はレベチでしたよマジで。
このシーンでも、西久保が投げ入れる直前にスルスルッとDFの間を抜けて、かなり深い位置でフリーでボールを受けている。
植村も、西久保ほどではないが鋭いロングスローを(しつこいようだがタオル拭きを必要とせず)投げ込めるタイプ。だからこそなのか、お互いの信頼感というか、「アイツならこのへんまで飛ばすやろ」的な阿吽の呼吸できっちり収めて、コネコネしないですぐさまゴール前にフィードするテクニックはさすがのひとこと。
河治さんのタグマでの「磐田の歓喜」でも「洋斗くんがスローの飛距離を信じてくれた」っていう西久保の記事があったしね。
この、ミドルサードくらいの位置から前線に入れてゴール前につなげるロングスローは、他のチームにも研究(というか真似)されそうで怖いのだが(特に次節)、ふんわりロングと突き刺すようなロングでは対応しやすさに雲泥の差があるので、多分大丈夫だろう。うむ。
ハンパない献身性の新加入FW
その植村のクロスにまず突っ込んだのは、渡邉りょう。セレッソ大阪から期限付き移籍で来てくれた、人格・能力ともに備えたアタッカーだ。
90分終えてのチームスタッツで、いつもスプリントで上位に来る選手がいないのがジュビロというチームだった。それが、この試合ではトップこそ23回のアントラーズ濃野に譲ったものの、じつに21ものスプリント回数を重ね試合全体の2位だった。
疲労困憊だったはずなのに、あそこで振り絞るように突っ込んだツメを見せてくれた渡邊りょうは、全磐田サポのハートをガッチリ掴んだはずだ(前節のアシストも素晴らしかったしね)。
で、仕上げの古川
前節のアシストもそうだが、数字で残る結果が積み上がってきている。一見チャラい、いまどきの若者ふうだが、良いコンビだった藤原が北九州にレンタルで出るなど、年齢的にいつまでも甘えていられるわけではないのは本人も重々わかっているはずで、相当な覚悟と努力で自分の道を切り拓こうとしているのがヒシヒシと伝わる。
彼がおちゃらければおちゃらけるほど、内面の葛藤が見えてくるようで、見てる側としては正直辛かったりもするのだが、ここ数試合で報われつつあって心からホッとしているし、結果を出し続けてさっさと海外に行って欲しい。
あんなに狭いコースにおもくそ蹴り込んでしっかり決めてしまうような若者が、どれほどの練習を積んでいるのか。想像するまでもない。
決勝ゴールに至らせたもの①
ようやく本題。この逆転ゴールには、伏線があったように感じた。
ひとつは、DAZNやYouTubeでも確認できるので、わりとわかりやすい。
西久保がスローインする直前、松原組長が古川に向かって腕を上げてゴール前に促すようなジェスチャーを見せている。しかも2回。
古川が動き出したのは、植村が収める直前。まさに松原に促された形。
西久保と植村と松原は、たぶん同じイメージを共有できていた、ということなのでしょう。松原は西久保が構えた体の向きと、植村の動き出しを見て2人の意図を察して、明らかに古川に指示を出してるし。
決して全体がデザインされたわけではないものの、こうした指示出しが結果を生むあたり、さすがの組長。
試合後に公開されたジュビロ公式チャンネルのGo onでは、「言ったでしょ、あそこに走り込んでけば絶対◎□※■○◆(聞き取り不能)だから」と古川に話しかけているので、影のアシスト認定で間違いない。
決勝ゴールに至らせたもの②
もうひとつの伏線は、ちょっとこじつけっぽいけどジュビロのチームカラーというか、横内監督のフェアネスがもたらした結果なのではないかと。
この試合、鹿島のPKは正直疑問だったし、某元審判のnoteでも大多数のジュビロサポと同じ見解というか、主審が下した判断とは真逆な意見だった。かなり明確に。
対して、後半早々のジュビロにPKが与えられたかと思われたシーンでは、(DAZNでの放送では)映像リプレイも一方向のアングルのみで、PKが覆されたこと自体もそうなんだけど、主審とVARとの関係性だったり、いろいろ懐疑的にならざるを得ないという状況だった。
つまりは、要所要所でのジャッジが明らかに不利な流れ。
そんななかで、ジュビロの山田の手がアントラーズ三竿の顔面に不意に入ってしまい、当たりどころも悪かったのか三竿選手は流血という事態が起きてしまう。
最初は「えー、ファールかよ!?」という態度だった山田も、実際に顔面を血だらけにしている三竿選手を見ると、態度を改める。
三竿選手の治療中、試合は再開されるものの、アントラーズは1人少ない状況。FKを跳ね返したあと、結果的にボールを収めたジュビロのGK三浦は、ひと呼吸置くと思いっきり前に蹴り込んでボールは相手GKに渡る。
これ、最初はミスキックかと思ったんだけど、DAZN画面の端っこで、横内さんが三浦に向かって大きく両手を叩いて「ナイスナイス」的なジェスチャーをしていたんですね。
ああ、そうかと。そうなんかと。
三竿が治療でなかなか試合に入れないなか、相手にボールを持たせて対等な人数になるよう横さんが指示を出したんだろうな、と。実際、前線の渡邊りょうもボールを追う気ゼロだったし。
絶対に勝ちたい試合で、それでもズルいことはしない、こちらが流血させちゃってピッチアウトしてしまった選手が戻って来られるよう、相手にボールを渡して時間を使わせろと指示を出すだなんて、指揮官としてすごくないですか?
結果、相手GKからのビルドアップの途中でジョルディが引っ掛けて山田が敵陣深くまで追ったあと、いったんボールを奪われはしたものの結果的にマイボールのスローインとなり、三竿が戻った直後に西久保植村古川のコンビネーションが完成してしまうわけです。
不利なジャッジに翻弄されてフラストレーションMAXながらも、きちんと相手をリスペクトしてフェアな勝負を挑んだからこそ、転がってきたチャンスをモノにできた。
実際横さんからそういった指示が出ていたかどうかはわからないし、個人の想像というか妄想にすぎない。
でも、もしそうだったらと思うと、あのゴールは本当にご褒美というか、ブレない姿勢がもたらした最良の結果というか、とにかく益々このチームが好きになってしまうというか胸アツすぎるというか。
私は割と単純なんで、こういったストーリーを好みますし、勝手に想像してニヤニヤしてしまうんです。すんません、非ロジカルでw
次節に向けて
ジャメが戻ってくるという前提で、フォーメーションをどうするかが注目ですね。基本、勝ったチームは変えないのがセオリーだけど、絶対的エースを欠いた状態はあくまでスクランブル。もとの4231に戻す可能性も高いけれど、この日の433(というか4123)は未来を感じさせてくれるものだった。
前3枚を、ジャメ真ん中にして右ジョゼ左りょうではアカンですかねえ?
いちファンとしては、現地に駆けつけて見守ることしかできない。町田の坂なんぞ、チャリで一気に駆けあがってみせるぜってことで。