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北海道の国内外来種カブトムシの小型化の可能性

 北海道では、元々、自然分布していなかったカブトムシが、本州から持ち込まれ、国内外来種として全道に定着して、約50年近く経つ。
 北海道の伊達市でもカブトムシが非常に多いことから、私は、2014年の夏に捕獲調査をした。その時、驚いたことが、本州のカブトムシより、サイズが小さいということだった。上記の写真は、オスの小型のカブトムシである。個体差があるので、全てこのサイズではないが、それでも、本州で捕獲されるようなサイズの大型のカブトムシは、いなかった。

カブトムシ 小型化

 24日間で、成虫203個体(オス54個体、メス149個体)を捕獲し、ノギスでサイズを計測した。
 私は、虫屋ではないので、全く昆虫について無知なのだが、計測した後、文献収集をしたら(調査の前にやるべきだが)、日本で一番メジャーともいえる昆虫のカブトムシの研究者がほとんどおらず、論文が、僅かしかないことに気がついた。
 このため、サイズを原産地の本州と比較しようにも、比較データの文献がほぼなく、困り果ててしまったのだ。

 それでも僅かな原産地のデータから、小型化の可能性(伊達市のみの記録なので可能性とした)を指摘したのだが(羽馬,2015)、仮に、北海道のカブトムシが小型化しているとして、その要因まで突き止めることはできなかった。理由は、サイズの決定要因が、あまりに多すぎて、遺伝的な創始者効果などの要因なのか、北海道では主に堆肥がカブトムシの幼虫の発生源であるため、幼虫期の温度環境なのか、原因を特定できず、現象だけの報告とするしかなかったのだ。

 伊達市だけのデータだが、北海道の他地域でも、カブトムシは小さいと聞いている。小型化が、どのくらいの地理的規模で起こっているのか、生育環境によるのか、遺伝的要因によるのか、新環境に対しての適応なのかどうかも、不明である。
 しかし、新たに進入・定着した地域で、外来種が原産地より小型化あるいは大型化した場合、定着先で原産地とは異なるニッチを占めることとなり、予想外の相手と競合が生じる可能性がある。

 今後、国内外来種カブトムシの在来生態系への影響を検討する上でも、対策を考える上でも、体サイズなどの形態情報の蓄積は必要であり、北海道および原産地である本州各地の体サイズの地理的変異のデータの蓄積が求められる。
 また、これから、カブトムシ採集シーズンに入るが、北海道では、カブトムシは、国内外来種である。捕獲し、飼育したカブトムシは、増やさず、放さず、最後まで、飼育してもらいたい。

《参考文献》羽馬 千恵(2015)北海道伊達市における国内外来種カブトムシの体サイズの記録.昆虫と自然(2015年8月号)。
 ※写真は、オスの小型のカブトムシ(北海道伊達市産)

【飼育方法は以下】

https://www.amazon.co.jp/-/en/%E5%93%80%E5%B7%9D-%E7%BF%94/dp/4893088645/ref=zg_bs_12870421_5/357-7494530-7411414?pd_rd_i=4893088645&psc=1


【追記①】哺乳類での「ベルグマンの規則」みたいに、Temperature size rulesというのが昆虫の世界ではあるらしく、幼虫期の温度が高いと、成虫になる速度が速いために小型のまま成虫として出てくる、というような規則があるようですが、私は昆虫屋じゃないから、Temperature size rulesの論文を読んでも、あまり解りませんでした。でも、おそらく北海道は堆肥で幼虫が発生しているので、温度がとても高い幼虫期を過ごしています。サイズの変化は、その関係だと思うのですが、堆肥の温度との因果関係はわかりませんでした。成虫になる速度が速くなれば、成虫として外に出てくる時期も早まるはずなのに、北海道でカブトムシが最も多く観られるのは、8月です。ただ、飼育下では5月に成虫になったという話もよく聞くので、昆虫は、哺乳類と違って、進化が早いというか、世代交代が1年ですからね。
【追記②】北海道のカブトムシは国内外来種なので、野外に放つことに問題はありますが、野外から捕ってくることには一切問題がありません。むしろ、捕ってきた方が、在来種にとってはいいと思います。
実は、クワガタムシも北海道はすごく多いのですが、カブトムシは異常な増え方で、在来種に悪影響がないとはいえないと思います。
カブトムシは土で繁殖し、クワガタムシは朽木で繁殖しますから、冬季に地面が凍る北海道には、クワガタムシはいても、もともとカブトムシはいなかったのです。
しかし、人為的に堆肥というものができて、何らかの理由で北海道の野外に放たれたカブトムシが堆肥で繁殖するようになりました。
実は、面白いことが分かって、堆肥は、農家さんの好みで好きな地域から購入していることが聴き取りでわかりました。つまり、北海道全域で爆発的にカブトムシが増えたのは、農家さんが、堆肥を色んな好みの地域から購入するためです。堆肥の中に紛れ込んだカブトムシの幼虫が、北海道をぐるぐると回って大移動し、分布を拡大させているのだと思います。冬前の幼虫期の栄養状態なども成虫のサイズに影響を与えていると思います。また、ボトルネック効果の可能性も否定できないと思います。元々、北海道にはカブトムシはいなかったので、遺伝的多様性がない可能性も考えられます。いずれにせよ、今後の研究での解明が期待されます。


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