【元サッカー選手 早坂良太の自伝:両親】
【親】
両親には、サガン鳥栖への移籍が決まってから報告しました。
両親は昔から保守的だったので、安定している大企業を辞めて、不安定なプロに挑戦するということを伝えたら、あまり良い反応はされないと思っていました。
しかし、聖書の一節を例に、簡単な道よりも難しい道を選びなさいという説明をしてくれ、決断を尊重してくれたことにとても驚きました。
うちの両親は結構厳しく、幼少期から生活の中で色々な制約がありました。
TVが家に無い。
外食しない。
友達の家に外泊できない。
などなど…。
親のことは尊重していたので、言う事は聞いていましたが、どこか納得していない自分もいました。
また、父親は当時の時代の多くの家庭がそうだったように、モーレツサラリーマンで、家にいることはほとんどなく、たまにいる時はずっとイライラしているような感じでした。
父親なので絶対的存在は揺るぎませんが、コミュニケーションを取ることが全く無いので、何を考えているか分からないという感じでした。
そして時を経て、私は父になり、父は祖父になりました。
年末年始に家族で集まった時に、お酒を飲みながら色々な話をするようになり、当時の話や価値観を聞くと、実はものすごく家族のことを考えていたことが分かります。
その都度思うのが、当時にもっとこのような話を聞きたかったな。ということです。
親の価値観は、子どもに深く根付いています。
そのことを成長していく過程で理解し、自分自身の様々な経験を通して、自分なりの新しい価値観を作っていく必要があります。
だから私は子どもに、自分の思いをあえて伝えるようにしています。
ただ、注意しなければならないのは、伝えるだけで、押し付けることはしないということです。
私はこう思うけど、「どう思う?どう感じた?」という子どもなりの、その瞬間の想いを聞くようにしています。
子ども達は私たちとはまた違う価値観の、新たな情報が溢れる世界を、自分自身の足で歩いていかなければなりません。
息子たちはサッカーをやっていますが、私から一度もサッカーをしたら?と言ったことはないです。
親の価値観や正解を押し付けてしまうと、思考することをせず、子ども自身が成長する機会を止めてしまうことにつながるかもしれません。
【Key Word】
両親、教育、共育
【あとがき】
厳しかった私の父親も年々優しくなっています。
自分が親という立場にならせてもらって思うのは、自分の両親って本当にすごいなということです。
自分が親にしてもらったことくらいは、子どもたちにもしてあげたいと思っています。
社会に色々な価値観があるように、親子関係も色々な形があって良いと思います。
私自身、引退してから子どものサッカーの大会などを見に行くことが増えました。
施設やグラウンド、道具などの環境面は、私の子どもの頃に比べたら、格段に良くなっています。
ただ、ビックリしたのは、今も昔と変わらず、試合中に監督やコーチが子どもたちに対し、怒鳴っていたことでした。
試合後に子どもを呼び出してプレー内容を説教して、泣かしている親もいます。
もちろん、素晴らしい指導をされてる方もたくさんいらっしゃいます。
怒ること、意見を言うことが間違いだとは思いません。
時に大人は子どもたちに、愛をもって厳しく接することは必要です。
ただ、この愛が本当に子どもたちのことを思ってのことなのかは、疑問に思ってしまいます。
ただの大人の感情の発散ではないのか。
もちろん、社会を生きる上で、厳しさは必要だと思います。
例えば、グローバルに世界を見た時にサッカー選手を目指すのでも、海外の選手の中には、家族を養うために家族と離れ、日本にくる選手もいます。
目の鋭さが違います。
そんな選手たちとポジション争いをするわけですから、怯まず戦わないといけません。
私は選手時代のオフには必ず、海外に旅行に行くようにしていました。
そこでは小さな子どもが、学校に行かずに物売りをしています。
生きるために必死で、そこには本当に生命力があります。
日本は世界一平和な国で、規律のある社会生活をおくれます。
ただ、外の国に出るとその常識は通用しません。
優しさを突き通すには、自分自身が強くなることも必要です。
社会で生きていく上で、なりたい自分になるためには、どこかで自分自身で立ち上がって、意見を主張しなければならないからです。
それは決して、大人に言われたからすることではありません。
私は子どもたちに、その時に、自分なりに思考して、行動して、決断できる人になって欲しいと思っています。
引退して、色々な人に会っている時に「そう思ったならやるしかないよね」と言われました。
2021年12月より、自身の経験をベースにサッカーを通して成長できるサッカースクールを始めようと思います。
世界は常に流れていき、価値観も変わっていきます。
正解の無い世界を、子ども達が楽しんで生きていけるように、私も「共育」を通して共に成長できるように努力していきたいと思います。
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