【元サッカー選手 早坂良太の自伝:北海道コンサドーレ札幌〜引退】
【プロ】
私は常に自分なりにプロでありたいと思っていました。
プロの定義も人それぞれだと思いますが、自分なりの考えを書きたいと思います。
プロのサッカー選手の優先順位の最上位は、所属しているチームの勝利です。
ただ、勝利以外のもっと高い視座で考える必要があり、ファンの満足度の向上、チームを支えてくださってる方々の価値向上などを高める必要があります。
選手はいずれ引退が訪れますが、チームには引退はありません。
みんなが同じ方向を向き、色んな時間軸や視点でチームを捉え、応援していただいてる人たちが様々な形で豊かになるということを目指すのがサッカークラブとしてのプロだと思っています。
ただ、選手でいる時は、やはりチームの勝利に集中することがプロフェッショナルですし、クラブには選手が勝利に集中できるように環境を整えることが求められます。
プロサッカー選手の世界は結果で評価されます。
なので、試合に出場しないと評価に影響が出ます。
チームの勝利という目標が達成されるのであれば、自分の試合出場は関係ありません。
「チームがあっての自分」です。
私もそうでしたが、この思考の変換が非常に難しいですし、選手はわかっていても中々できません。
試合にスタートから出れるのは11人で、メンバーに入れるのは18名です。
必然的に、試合に出れる出れないがはっきりします。
しかし、出れなかったとしてもチームと契約することを選んで、契約書にサインしたのは自分自身です。中には監督が全く試合に使ってくれないこともあります。
残酷でシビアな世界です。でも、逆に結果を残せば評価されます。
私も監督が変わるとスタメンの構想から外れることが多かったかもしれません。
ピッチ外に立たされ、練習に参加することなく、練習が終わることもありました。
ただ、最終的には監督の構想に入り、ピッチ上でチームに貢献できるようになっていました。
試合に出れなくても、いつか試合に出て結果を出すための準備は怠りません。
常に自問自答して自分なりに答えを探して、必要なことを実践していました。
私は試合に出れていない若手の選手によく、試合に出るチャンスは1年の中で必ず、2回はくると言っていました。
ただその2回はいつくるかは分からない。
明日かもしれないし、シーズン最後の試合かもしれないと。だから、常に準備することが大切だと。
そしてその準備している姿は誰か見てくれる人がいるし、そのチャンスがきた時に結果を残せば、評価は大逆転します。
むしろ監督は今までの姿勢と結果を残したことを評価してくれ、重宝してくれるようになる可能性は高いです。
ただ、姿勢として間違えてはいけないのが、試合に出て結果を残すということが目的があり、それに対して準備することはただの手段です。
よく試合に出れない選手が陥るのが、この目的から目を逸らしてしまい、手段だけに集中してしまうことです。
結果を出すための準備のはずが、準備する自分に満足してしまい、結果が出ていないのに満足してしまう。
監督はDFからのビルドアップの能力を求めているのに、そこの練習はせずヘディングの練習ばかりして、目的から目を逸らしてしまっている場合などです。
もちろん、試合に出れる人数は決まっているので、自分自身でできることは全てやって練習で結果を出しても、試合に出れないことはあります。
その時は代理人やチームに相談し、正当に環境を変えるという選択肢が出てくると思います。
監督も人なので、好き嫌いはあるでしょうし、中には占いで選手を選んでしまう監督もいます。
私が感じていた苦しい状態は、「チームが勝てていないのに、準備を常にしている自分にチャンスが与えてもらえないこと」だと思います。
チームとして結果が出ていないのに、自分はグラウンド上で貢献出来ない。というのはチームにおいての、自身の存在意義が無いと感じてしまいます。
昨年引退を決断したのは、選手として30歳を過ぎてから、毎年最後のつもりで取り組んできましたが、試合に出れない状況の時に、常に万全の準備をするのが難しくなってきたことが、自分の中で大きかったです。
チームは常に試合に出なくても、いることに意義があると言ってくれましたが、私はサッカー選手である以上、常に100%の準備をし、若手と同じ状況で競い、試合に出た時にチームの勝利に貢献することが大切だと思っていました。
試合に出れないのであれば、自身の悔しさに蓋をしてチームの勝利にどんな形であれ貢献すること。
試合に出てなくてもいいやと思ってしまったのなら、それは今まで好きで続けて、仕事にさせていただき、多くのことを与えてくれたサッカーに対して、失礼になると思っていました。
【Key word】
【あとがき】
私は思考が行き詰まると生物や自然の本を読んだりすることがあります。
特に人間と同じ社会性の高い、蜂やアリの研究が好きです。
勝手に人間の方が頭が良くて地球の支配者と思っているかもしれませんが、地球に変化が起きた時に生き残るのは小さい生物かもしれません。
アリの研究の中で、巣の中で内勤をしていた個体が歳をとると、危険な外に出て働く外勤に出る傾向が高いということが分かっているそうです。
サッカーの現役生活も時間的制約があります、選手個人は長くやりたいでしょうし、試合にずっと出たいと思っているでしょう。
しかし社会や組織という大きい視点で見たときに、継続的に成長するという点では、どこかで個人の思考を変える必要があると思います。
きっと自分たちも若い時に、未来への投資のために起用してもらっていたと思います。
もちろんベテランの選手にも素晴らしい価値を提供する選手もいます。
今、コロナや環境問題などで社会は色々変化しています。
人それぞれ色々な考えがあると思いますが、その思考のベースには未来に矢印があることが大切なのでは無いか、と伝えられている気がします。
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