日記:りんごを買って食べた話。


りんごを買いました。
近所のスーパーで150円くらいだった気がする。

理由は「なんとなくりんごをそのまま食らいつきたかったから」。

みなさんはりんごを皮ごと食べてことがありますか?私はなかった。
明確な理由はないが、私の家がカップ麺であれど盛り付けなけれならないほど食に厳しかったから皮ごと食べるなど許されなかった。大方この辺りの影響であろう。

当然りんごは剥いて食べる方が旨いのだろう。カットするにしても皮を残すのは造形を重視したシーンしかないし、何より食べやすい。
だが、アニメや映画に描写された果物を直接食らうの野生的な姿への憧れ、そして未知のものに対する好奇心はそのような合理性を優に超えた。

帰宅し、りんごを洗うとすぐさま私はかじりついた。
汁があふれた。普段は切られている状態しか見たことがないので気付かなかったが皮がこのはちきれんばかりの果汁を閉じ込めていたのだろう。
そして果肉がぎっしりと詰まっていた。この果肉と果汁が全て自分のものになる、その嬉しさは何物にも代えがたく甘美な感覚だった。
そして私は汁がこぼれぬよう、果肉がこぼれないよう、りんごの全てを妄執にとりつかれたように味わった。

そしてりんごはヘタと種を残しなくなった。さっきまで全て自分のものだったりんごがもういない。その空白は何とも形容し難い感覚であった。

一週間経ち、私はあの甘美な感覚をもう一度味わいたく思った。今度はアップルパイにしようか。
そう向かったスーパーで完成品が600円で売られていて全てがどうでもよくなった。



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