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018話 日常

 けれど、裕司にはどういう訳か、痩せ型体型の女性を惹き付ける力が備わっているのか、元嫁もサオリもガリガリだ。

 その反動か

・・・もぅ嫌なんだ。太めがいいんだぁ!!
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 ココの精神病院にもケースワーカーが在籍していて、その人を利用して、今後の裕司の行く末を決めようと企んでいた。

 その人の仕事の1つとして『退院後の問題』について動いてくれるらしいと、患者づてに聞き

・・・今の僕に、正に必要な存在だっ。

 掻い摘んで言うと

・・・他の施設も検討してみたぃ。

と裕司は思う様になっていたので

「依存症回復施設、全ての資料を下さ〜ぃ」

とケースワーカーの女性に告げてみた。
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 まだ、サオリとの密会を裕司は

・・・仕方無いかぁ。

という気持ちが残っているので、継続中。

 サオリは開口一番、不満をぶち撒けてきた。

「何で番号、平仮名なのぉ? あちしー、ショックなんだけどー」

 電話を掛けるな! と念押しして、更に『見ないでほしい』意味合いで、渡した紙は小さく五角形に折り曲げていたのに、それを開いて文字を確認している事実に対する不信感の方が、裕司の心にとても巨大な幻滅を与え、サオリ側のショック等どうでもよく聞こえた。

 裕司の仕掛けたトラップに、サオリはまんまと引っ掛かってしまった。裕司はただの電話番号で、信用の出来る人か否かと測っていた……。

 サオリに対して、恋愛感が急激に無くなりつつある自分がいる事に気付いた。

 なのに、小山の天辺の原っぱ側で、長く抱き合い、サオリの左手で裕司のモノを、ハーフパンツ越しに触らせてみる。

 物足らず、ハーフパンツとボクサーパンツを勢い良く同時に下げ、勃起状態を直に握らせる。

・・・全然、積極的にしごいてくれなぃ。

「恥ずかしくないの?」

「全然っ」

「……やっぱ、ホテルでしたい」

 この流れで、サオリのを触りにいく。

 パンティの中のお尻を直に触り、勢いに任せて前方へスライドさせた裕司の右手は、サオリの陰毛の感触を捕らえた。

 そのまま一気に目的地へ……。

「嫌! ………はっ、…恥ずかしぃ」

「…ゴメン、嫌だったね」

 抵抗と言う壁を、もうすぐ越えられる気がした。次回はもっと攻めれると確信した。

 病棟へ戻り際、念の為にと既に書いていた新たな『電話番号の紙』をサオリに渡した。

・・・ふっ、…勿論、偽物だょ。

 それをソレだと気付いたら『電話をかけた』の証拠となる。嘘の数字を書いてあるから。即ち、その行動は「電話をかけないで!」と言っている裕司への裏切りであり、言われた事を守れない人という事になり『別れる理由』になるのだ。

 昨日から、2北病棟で働く『看護助手』という役職の、とある女性の事が裕司の脳裏にこびり付いてしまい気が気で無い。

 別の病棟なのに『2日連続で遭えた』だけの事で『運命』なんて言葉が過ぎってしまう程、彼女の事をもっと知りたくなっている。

 昨日はOTの一服場で、撤去した備え付けライター代わりに、彼女が『ライターを所持する係』をしていた。撤去の理由は、ライターを盗む者が現れたからだ。

・・・そぅ、……僕だっ。

 先に並んでいた患者らは、ライターを彼女から手渡しして貰い、自分で火を着けているのに、裕司だけは煙草を咥えて顔を近付けてみた。

「500円でぇーす!」

 なんとも可愛らしい言葉を発したので

「ちょっと待ってぇ!?」

 裕司は、何も入っていないポッケを弄る仕草をしてみた。

「…い、要らないですよ!」

 裕司の悪ノリを真に受けた彼女は、焦って火を着けてくれた。

 普段は20分程度の休憩時間で1本しか吸わない裕司だが、彼女の傍に居たい願望がそれを覆した。しかし、彼女は他の患者と喋り続けている。

 嫉妬が苛々に変わり、空気を読めないフリして、2本目の煙草を咥えたままで顔を近付ける。

 そこで、裕司は気付いた!

「その着け方ぁ、……働いてたでしょ?」

 ライターを横に寝かせて着火するやり方に、そう発言してみると

「…………」

 無言と言う肯定をしてきた。

 そして翌日の今日、またもOTの場で出遭え、驚きと喜びを感じた。

 この曜日はいつも通りに革細工をやりたかったが、2北病棟の患者が、1つしか無い革細工セットを先に使っていて、3北病棟の裕司もソッチに行って作業する格好になったのだ。

・・・って事は、今後もその患者が革細工を先にやっていたら、僕が2北の方々の縄張りにお邪魔できるぅ? また、彼女の姿を拝めるって事かぁ?

 サオリも2北病棟に居るので、易々とその女性の事を訊けた。

「髪が肩くらいで、水色の看護服を着てるんだけどぉ、その人、何て名前の人?」

「あー、アカネさーん。……30歳くらいだったかなー?」

 サオリ曰く

「嫉妬深そうで、きつそうで、怖そう。……負のオーラを感じる」

・・・次回のOT時に遭う事が有れば、その名を突然、呼んでやろぉ!

「あのー、2北の看護師達も『高橋 裕司さんには近付かないで!』って言っててー、サオリの主治医も『高橋さんとの接触の恐れが有るので、時間開放は当分やめておきましょう!』だって。……マジ、意味わかんないしー」

 サオリが洗濯物干し場から、伝えてきた。

・・・僕は、どんだけバイ菌扱いされているんだろぉ?

 ちょっとだけ嬉しく思い、ニヤけてしまった。

 結果的に2人の密会場は、小山から干し場へと移った。互いの病棟の看護師が、ナースステーションに集まる申し送りの時間、午前8時20分に、毎日、干し場で会う約束を交わした。

・・・となるとぉ、今後の時間開放は、ホントの意味での解放になるなぁ。

 凄く喜んでいる裕司がいた。

・・・あんなにサオリを『好き』だった感情が、これ程までに『嫌々』に変わるものなのかっ?

 裕司は自分でも驚いている。

 更に裕司の感情を察して『現実の状況』が後押ししてくれている様だった。

・・・サオリとの関係も潮時かなぁ?

 裕司は、チャラ男的な思考回路で次の恋愛に移ろうとしている自分に気付き、嫌気も感じた。
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 最近は、青春小説を読み続けて余暇を過ごしている。主にホールのベンチで寝そべりながらだ。

 この本は『ケータイにアップされた小説』の文庫本みたいで、正に、裕司の夢! ……否、目標だから何冊も読破している。

・・・僕の書く小説は、こんなピュアなラブストーリーにはならないなぁ。どっちのストーリーの方が世間ウケするか知らないけど、僕は、僕のやりたい様にやってる実体験を元に描くだけだっ!

 自分の道をひた走ろうと決心していた。

 また、3北病棟に患者が来た。新規の患者ではなく、隣の3南から転棟して来ただけだが。

「チエミさん。……おばさんで、太ってるよ!」

 先に、お部屋の衣装棚が看護師の手によって運ばれていて、衣類をチラッと見ただけで誰が来るのかを言い当てるワタル君は、本当にリスペクトだった。

 その患者も入院暦が長いから、荷物を見たらワタル君には余裕で分かるみたいだ。

「おばちゃんかぁ〜…」

 ガッカリを口にしたが、実際、小柄で小太りで小綺麗なチエミさんを間近で観て

・・・有りだなぁ。

 そう思ってしまった。

・・・そ〜いえば、2南病棟に居た頃も、ご年配の女性達と少しだけ関係を作ったっけ〜?
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 カズミさん。2南に移って早々

「私と結婚するかい?」

 かなりブッ飛んだ発言をしてきたが、よくよく話を聞いたり、口調っぷりで

・・・このおばちゃん、金持ちだぁ!?

と思い、それが事実だとすると、邪険に扱うのは勿体無い。

 ルックスも、若い頃はモテてただろぉなぁ?って感じだし、小柄で細身で巨乳? …胸元に、折り畳んだ大量のトイレットペーパーを入れてる為、そうは見えるんだけど…。時々してくれる、白髪のツインテールも凄く心をときめかせてくれた。

 何かの話の流れで、生オッパイを見せてくれた時は、正直、裕司の下半身の野郎が反応してしまった。明らかな、おばちゃん相手に……。

 やはり、大きくはなかったけど、綺麗な真っピンク乳首は、裕司の好みな感じでもあった為。

 初めて話した時もそう感じたけど、カズミさんはある宗教にハマッていて、その洗脳されっぷりに、裕司は付いて行けず

「何だよソレ!? 全然、聞こえねーよ!! 本当にそんな偉い奴が居んなら、俺が聞こ〜とせずとも向こうから語り掛けて来いよ! ああ〜?」

 何度も何度も宗教ネタを話された挙げ句、辛抱堪らず裕司が怒鳴ってしまい、彼女とは深い深い溝が出来た。

 そんな事が有って以来、ボケ老人の様に

「アラカキさん? …アラカキさん? …アラカキ、さん?……」

 裕司の方へ顔を向け、身を乗り出す勢いで、普通に呼んでいるけれど、間違っている為シカトしていると、いつまでもリピートするものだから、裕司はイライライライラして精神がやられそうになったりしていた。
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 そして、もう1人、気に掛けてしまったおばちゃんが居た。

 サトミさん。

 普段は物静かで、殆ど会話を誰ともしていないくらいだけど、歳の割には垂れてもいない胸が大きく、スタイルも良く、……難を言えば、顔の皺が多く目立つ事くらいだ。

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