010話 欲求
座ったままの姿勢より、正面を向かい合って抱き合う方が、サオリの両胸が裕司の躰に当たり
・・・感触を楽しむ事が出来そうだし。サオリの髪を撫でる流れで肩・背・腰・尻と自然にお尻を揉む事が出来そぅだし。
座りながらより、メリットが高まるとスケベ心が期待していた。
裕司の腕時計で10時05分頃、いつもの様に息を切らして、サオリは現れた。
会って早々に
「手紙が欲しい」
2人だけで会える様になってるのに、裕司の文字を欲してきた。
しかし、裕司の考えでは直接会える様になり、お喋りも出来る様になっているから
・・・これからは文字で感情を伝えなくてもいいんじゃね?
なのに、サオリ的には裕司の文字で救われた思いも有るからか、これからも『病院』と言う退屈にヤラレない様に
・・・裕司からの想いを綴った文字をお守りにでもして必要なのかなぁ?
正直、裕司的には2南から3北に移った事で、退屈な時間が殆ど無くなっていた。
トランプやオセロや将棋や麻雀などを出来る患者が存在して居るし、お喋りが成り立つ患者も居るし、何より、この小説『もぅ一つの病と僕』を完成させたい思いが強くて、少しの空き時間でも、全て執筆活動に力を注いでいる。
そこへ来て、サオリへの想いを込めた手紙を書くという作業は、ストレスとまでは感じぬけれど多少なりともしんどさを感じる。
しかし、サオリの命を守る為という使命感が、裕司の心をメラメラさせるので、自己犠牲精神で何とかしてあげたいと思った。
続けてサオリは、自分の部屋の同居人について話したり、裕司と一緒に暮らしたら家具屋さんとか洋服屋さんとか食事屋さんとかに行きたいって話を、永遠と聞かせてくれた。
「病院に入院中は病院という共通の話題が有るけどー、退院したら話す事が無くなって、ずーっとHな事してるかも?」
・・・そ〜なのかもしれない。
残り時間10分前位で、裕司はお決まりの行為に移りたく
「立ってしてみよっ?」
勇気を出して提案を口にした。
「何で?」
当たり前の質問をしながらも、サオリは立ち上がった。
「その方が座ったままより、ちゃんとハグ出来そ〜だからっ」
本心を隠しながら言い訳をして、少し奥まった所にある原っぱへ誘導した。
立ちでハグ・チュ一をした。
思った通りサオリの胸の左右が、しっかり裕司の躰を刺激していた。
・・・巨ではないが、ペチャでもなぃかな?
チューを持続しながら頭をナデナデ、ゆっくり首元・背中・腰へと、目的地の目前まで迫って、一呼吸。
サオリのロへ裕司の吐息を流し込む。
お尻上部に触れてる裕司の右手を、下へと滑らせてみる。
既に裕司のアソコは固くいきり立っていて、サオリの臍ら辺に当たるか否かの距離を絶妙に保っている。
・・・触っても平気そ〜だっ!
勝手に解釈し、徐々にお尻下部に向かって冒険へと繰り出す。
・・・柔らかいお尻の膨らみ。大き過ぎず小さ過ぎずだ。
右の膨らみ、左の膨らみ、行ったり来たりして、真ん中で一休み。
ゆっくり指を当ててゆく…。小指、薬指そして中指が丁度、中央部分になる様に……。
・・・当たった? ぃゃ、穴った!
そこから、そぉー一ーーっと前方に有る魅惑の花園へ、中指を伸ばしてゆく。
不意にサオリの唇が裕司から離れた。
「Hしたくなっちゃう♥」
「僕は、ずぅ〜っとなってるょ」
チュー無しのハグをしながら
「早く一緒に暮らしたい。そしたらイッパイ出来るのに」
こんなこともサオリは言う。
・・・結構、好き者のよ〜だ。
サオリとひとときの恋を終え、裕司独りだけのフリータイムへ突入する。
裕司の心中は、早くも違う女性の事へと切り替わっていた。
アルコール依存症のカナコだ。
正直、この感覚を裕司自身、まだ理解に苦しんでいる。
・・・もしかしたら、僕は異性との『SEX無しでも飽きる』気持ちが出てしまうのかぁ?
・・・今、一番トキメいているカナコとの関係も、ハグ・チューくらいをしてしまったら、飽きてしまうのか? ならば、いつまでもトキメキと言う興奮を失わぬよう、手繋ぎ程度に留めなくちゃイケないのかっ?
そんな事を考えながら、敷地内をぐるぐる捜索してみる。1周、2周、逆周り、それでも見つからない。
・・・毎度の事だけど。そもそもカナコと外で会える事、それ自体がレアなんだょ。僕の毎日の散歩の途中に出会えた事だって、ほんの数回。だからこそ、貴重に感じるし、大切に想えるし、愛しくなるのかも。
そんな風に考えながら、裕司は病棟に戻る。
ホールで座りっぱなしのまま、この小説の続きを書いたり、サオリへの手紙を綴ったりで、裕司の右手中指に出来たペンだこは、痛みのレベルを通り越し、柔らかいシコリの様に変化していた。
今日は祝日な為、いつも作業療法室でだった麻雀が、病棟内で許されていた。
オオミネと言う患者さんがかなりの腕前で、初心者に毛の生えた様な裕司は、何度も何度もアガリ牌を振り込んでしまう。
翌朝からは、独り言の多い患者ナガミネと将棋の勝負をした。
その人との勝負では、負けた試しが無いので余裕をかましていた。
結果は言うまでもなく裕司の圧勝。
なのに、再戦を申し込んでくる。
更に難無く勝利。
更に更に、3手戻っての再戦。
しんどいから、わざと負けてあげた。
テンテーケテッケッテッケー♪
習慣付いてる、ラジオ体操第1・第2の最中
・・・そ〜いえば、2南に居た頃は看護師が1人ホールの前に立ち、CDラジカセでラジオ体操の音を出すと、患者の大半がホールで身体を動かす中、裕司だけは出入口の扉の方へ、身体の正面を向けてたなぁ。
理由は単純で、2北病棟に居るサオリが扉窓越しに手を振りに来るのを、発見し易くする為だ。
そうされると、裕司は体操を中断して扉に近付き、笑顔で手を振り返す。
・・・そんな事をしていた時期もあったなぁ。
かなり昔の事の様に感じてしまった。
午前の開放時間が訪れた。
密会場所で10時05分が過ぎた。
・・・そろそろかなぁ?
10時10分が過ぎ、10時15分も…。
・・・多分、久々に売店へ行ける日で、何か買い物をしているんだろ〜? ……最悪でも、10時半迄はココに座って、小虫達と戯れながら待って居よ〜っと。
なんて考えていたら、ビニール袋を提げた姿のサオリが現れた。
「たまに有る、朝のミーティングで遅くなっちゃった」
裕司の居る病棟では、そんなのは無く、不思議に思いながらも
「と、言う事は遅く出たの? もし、遅出なら戻りが10時半より後でもいいのぉ?」
「うん、10時40分戻りー」
不安を取り除けた。
今日のハグ・チューも立ちで行なった。サオリの両胸の感触をしっかりと受け止め、細い躰をギュッと抱き締め、徐に裕司の右手がサオリのお尻を触りに行く。
『触る』と言う表現を超えて『揉む』を遠慮無くしてみたが、嫌がる素振りも見せず、寧ろチューをしている唇が半開きになり、生温か〜い息が漏れて来た。
・・・今度こそ、マンマンまで触りに行くぞ! せめて、ズボンの上からでも。
希望を胸に、右手中指君の大冒険が始まった。ソコへ到達するまでの道のりは意外に遠く、最強の難関が……。
・・・そう、魔のブラックホールが待ち構えているのだぁ。
ソッチへ指を捕られると違った意味での快楽を与えてしまうかもだし、何より、裕司の指が可哀想になってくる。
なので、ソッチを横目にグルッと遠回りをして目的地へ進んでみたのだが、残念ながらその途中、躰の主が
「……気持ち良くっ、……なっちゃ、ぅ」
急に感想を述べ、躰を捩り、ハグのみの体勢になってしまった。
裕司は興奮を一旦リセットし、仕切り直す意味でサオリの頭をナデナデした。サオリも同じく裕司の頭をナデナデしてくれた。
裕司の性欲は、諦め切れず再び右手の挑戦を始めた。しかし、近くまでイッてタイムリミットに阻まれた。
・・・僕が『互いに手紙のやり取りを行なう』と言うサオリの提案を、仕方無く受けてあげるのだから『密会中はトーク無しのエロだけ』ってならないかなぁ?
裕司の思考では、最もらしい提案に思えて、自分の力では覆せなくなってしまった。
独りブラリ旅の時間がやってきた。
真っ直ぐOTの外休憩場まで向かう途中、裕司は早くも煙草に火を着けていた。
・・・喫煙場以外での喫煙に該当しそうだが、知った事かっ。
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