からだを通した占い | 莉琴
「からだは正直だ」と言うが、正直どころか饒舌だと思うことがある。
九州で診療所を開いている方の東京での出張整体へ友人の紹介で伺った。
Kさんという50代くらいの女性による施術は裸足で横になった足裏マッサージから始まった。
2分くらい経った頃に「親からの圧が強かったですか?」と尋ねられた。わたしは少し考えてから、
「兄弟の中で一番しっかり者と言われて常に期待に応えようとしていました。そういう意味では勝手に圧を感じていたかもしれません」と返した。
「この腰は勝ち気が表れてますね」
その後も全身から特徴的な箇所を見つける度に指摘や質問をされたが、殆どが思い当たることばかりで、まるでからだを通した占いのようだった。
あまりに的を射ているので、もしや透視能力があるのでは?!と尋ねると、Kさんは笑いながら答えた。
「よくそう聞かれるんですけどね、そんな特殊能力はないです。からだに刻まれた特徴は過去や最近の感情とつながっていることが多いので、これまで色々な方を施術した経験からお尋ねしているだけです」
あるときは足裏を触ってすぐに「最近ものすごくストレスを受ける出来事がありませんでしたか」
と尋ねられた。
「昨日、珍しく家族とケンカしましたね」
と毎度のお見通し具合に苦笑いしながら答えると、なるほど…と言いながら、慈しむように足裏をマッサージされた。
わたしの感情のくせの何が原因でケンカになったのか、どうしたら回避できたかなど、そのあと展開された会話はまるで尼さんとのやり取りのように柔らかく、素直に聞き入れることができた。
からだは全部受け止めてくれていて、Kさんはそれをただ読み取って代弁者のように伝える。
いつでも相棒のように味方でいてくれるからだに心強さを感じつつも、引き受けさせてごめんねと申し訳ない気持ちにもなった。
通い続けるうちに、変化が現れた。
自分のからだに刻まれた感情のくせを知って意識して過ごすことで、
「最初にいらした頃は随分気が張って強ばっている印象でしたが、最近はからだも内面もやわらかく柔軟になって、より自分らしく戻っているように感じます」と言われた。
初診のやりとりを思い出し、夜寝る前に自分で足裏をマッサージすることもある。
もう親の期待に応える必要はないんだよ。気持ちを受け止めて、たくさん踏ん張ってくれてありがとう。と足裏にそっと触れる。直近のことから何十年も前のことまで記憶し刻んでいる足裏と対話するように、疲れた家族の肩をもみながら話しかけるように、ただマッサージをする。
最近、面倒くさがりの出不精だからと話したら、即座にこう返された。
「なめくじ化・省エネ化しようとしていますが、”運動”と名が付くものに萎えるだけで本当はアクティブです。エネルギーもむしろ余っている。自分で動くことで周りや状況も動かせるかたなので、動いてエネルギーを循環させてください」
…やはり、からだは饒舌だ。