(51)こうして顧客は去っていく
【実体験に基づUGCが経済を動かす】
これまで以上に、多くの人が評価しているものや、サービスに価値を感じる心理効果、いわゆる「バンドワゴン効果」が働きやすくなっています。
「悪事千里を走る」が加速するネット社会
1人の客に嫌われる事は、あと250人の客にられることだ
これは、世界ナンバーワンのセールスマンとしてギネス記録に認定されているアメリカのジョー・ジラードの言葉です。
【イマドキ消費に広告効果は限定的】
美辞麗句が並べられた広告に消費者振り向いてくれなくなりました。消費財企業で広告を担当する友人は「広告が効かなくなった」とかれこれ10年近く嘆いています。そして、「広告よりも使用者のレビューや評価の方が売り上げに大きく寄与している」と言います。
かつてはCMを中心とするマス広告を展開することが消費を動かす鍵となっていましたが、その影響が限定的になりました。資金力がある企業であっても、かつてのように高くの広告費を使ってマスマーケティングを展開すれば効果が見込める時代ではなくなりました。
マス広告に巨額の広告費をかけずとも、ウェブメディアやソーシャルメディアを通して多数にリーチすることが可能になりました。
【バケツの穴を小さくする唯一の解決策】
「顧客や市場について、企業は知っていると考えている事は、正しいことよりも間違っていることの方が多い」というドラッカーの言葉は、正しかったということです。
【離脱率5%の改善で利益率は25%アップ!】
マーケティングでよく知られた法則の1つに「1対5の法則」があります。これは、新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するコストの5倍床があると言うものです。
消費者が商品やサービスの存在を知ってから購入に至るプロセスは、AIDMの法則として古くから知られています。この法則によると、消費者はA(注意)、I(興味)、D(欲求)、M(記憶)という頭の中の4つのプロセスを経て、ようやくA(行動)、すなわち購入や来店に至ります。
【顧客をつなぎ止めるリテンションマーケティング】
かつてのwowowのリテンション率は1%。56万人加入しても5,000人しか残らない。
衝撃的な数字です。
大規模の割引キャンペーンを実施して大量の加入者を獲得した2006年から2007年における新規顧客数と定着顧客数の実績です。解約率99%ということは、実質的に残った顧客は、わずか1%と言う信じがたい数字です。
新規加入者を増やしても解約人数が増え続けるので、実施的には5000人しか会員数が増えていないと言う厳しい状況に陥りました。
【企業は見落とす「サイレントカスタマー」に注意ーその存在は7割強ー】
不満を抱えてサービスを離脱する人のうち4人に3人(75%)が企業に不満を表明することはせず、何も言わずに黙って去っていく「サイレントカスタマー」であると推測できる。
サイレントカスタマーとは、商品やサービスに不満があっても、企業やブランドにそれを直接口にせず、黙って去っていく顧客を指します。
クレーマーよりサイレントカスタマーの方がありがたいと考える企業が多いですが、これは大きな間違いです。満足していない理由を知る方が重要だからに他なりません。
【顧客満足の心理プロセス】
期待水準と知覚水準の一致、不一致の大きさが満足度を決める。
事前に期待した水準を期待水準と呼び、実際に体験して感じた水準を知覚水準と呼びます。この期待水準と知覚水準との比較を通じて「顧客満足」は形成されることになります。
知覚とは、私たち人間が視覚、聴覚、嗅覚、味覚角などの感覚を介して認識することを指します。あくまで、顧客ひとり1人が実際にどのように感じたかの主観的評価であり、同じ体験でも人によって感じ方が異なります。
【人間は自分の満足評価を捻じ曲げます】
多少のマイナス要素や都合の悪い情報には、目をつぶって、自分の判断を正当化して安心感を得ようとする心理は、認知的不協和を解消する行動としても説明されます。
【解約率が上がる10大要因】
離脱要因①価格と価値が見合っていない
離脱要因②使い勝手が悪くストレス
・UI/UXの改善が顧客を引き止める、最短ルート
シンプルで使い勝手が良いUIでありながら、利用者に温かみや親しみを感じてもらえる「視認性」、さらには使いやすさの「機能性」に加え、「遊び心」のあるサイトやアプリは思わずいろいろなページを訪問したり試してみたくなるものです。
離脱要因③コスパの悪さにがっかり
離脱要因④「タイパ」の悪さにイライラ
離脱要因⑤失敗するかもしれない機能的リスク
離脱要因⑥心理的リスクの上昇
離脱要因⑦「ありきたりの良い体験」では物足りない
離脱要因⑧企業の不正・不祥事に失望
【ケース】オーケー"情報の開示"で顧客の信頼を獲得
徹底した安さに加え「正直さ」へのこだわりが顧客の信頼を生んでいるのです。他店にはない独自のポップがあり、それが「オネスト(正直)カード」と呼ばれるもので、商品のマイナス面を正直に表記しています。
「本日販売しております。スイカは、日照不足のため糖度が不足しています。お差し支えなければ他の商品のご利用をお勧めします。」
「台風の影響で、レタスの品質が普段に比べ悪く、値段も高騰しています。しばらくの間他の商品で代替されることをお勧めします。」
顧客をがっかりさせたくないと言う姿勢が伝わってきます。
オーケーが大切にしていることとしてHPでは次のように書かれています。
「『極めて謙虚で、極めて誠実、極めて金』」私たちは、こう評価されたいと日々心がけ、お客様にご不満がないよう、常に努力しています」
離脱要因⑨嫌われる「マーケティグ臭」
離脱要因⑩消費者を欺く「ダークパターン」
【顧客づくりよりファンづくり】
ファンの特徴は「顧客エンゲージメント」の高さ
顧客エンゲージメントとは、企業やブランドに対する信頼度や愛着など「好意的な感情」の度合いを意味します。
【ファンの存在がもたらす主な便益】
・購買理由を価格に求めない(価格競争の回避)
・継続して商品やサービスを利用してくれる(安定的な売り上げの確保)
・企業やブランドへ建設的な意見を寄せてくれる(好意的なフィードバックの発生)
・ポジティブな口コミを発信してくれる(好ましいUGCの発生)
・他の人に商品やサービスを推奨してくれる(推奨行動の促進)
・熱量の高いファンがファンを育成してくれる(ファンの育成)
【顧客を教えてくれないが、ファンは教えてくれる】
コアなファンを育成するとともに、ファンが新たなファンを生み出すコミュニティーとしての場を用意することが、継続的な取引の実現に重要な役割を果たすようになりました。
企業にとって重要なのは、こうした場で顧客にたくさんの無難ではない質問をすることです。
クレイトンクリステンセンらは著書「イノベーションのDNA」の中で「質問は創造的な洞察を生み出す可能性を秘めている」
と言い、「イノベーターは『今どうなるのか?』(現状)と『これからどうなるのか』(可能性)について理解を深めるためにたくさんの質問をする。無難な質問は捨て置いて型破りの質問する」と書いています。
【コアなファン層を広げる取り組み】
顧客を「ファン化」する取り組みに成功している企業の多くは、社員とファンが一同に集い、交流する場をオンラインやリアルでも受けています。
その先駆けとして知られるのがスノーピークです。同社の社員とファンが一緒に泊まりがけでキャンプを楽しむイベントを定期的に開催しており、コロナファンと会社の距離が近づくきっかけになっています。キャンプイベントはファンの声を聞き取る場ともなり、実際に製品化に直結するケースもあるといいます。
【コアナファンをアンバサダーに任命】
ファンをアンバサダーに任命する取り組みで有名なのがワークマンです。
ワークマンはSNSや動画配信サイトでワークマン製品を着用して発信している人や、製品のレビューをしている人を探して、公式アンバサダーに認定しHPで広く紹介するなどファンコミュニティーの活性化を図っています。
【顧客体験を下げるペインポイント】
細部まで徹底的にこだわることで、感動体験を創出すると同時に、顧客体験を避ける要因を排除することに注力しています。せっかく良質な顧客体験を提供していても、たった1つのペインポイントを顧客が知覚すると、顧客体験自体の魅力が低下してしまうことが多々あります。
ペインポイントとは“ペイン”すなわち顧客が感じる「痛み」であり、商品やサービスを利用する過程で、顧客が遭遇する不満や不快、不便さなど、マイナスの感情や状態を指します。
企業からしてみると「まさかそんなことが理由で」と思うようなことで、顧客が去っていくケースが実際は多々あるのです。