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ライトノベルの賞に応募する(14)

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https://note.com/clean_cosmos816/m/mbd347da48b60

 セレクションのことを、どうやって母親に伝えよう。選ばれた嬉しさより、家族の都合をつけるという現実的なことを考えると、帰るのが気が重かった。もう着いてしまう。考え事をしながら自転車を漕いでいると、あっという間に過ぎてしまう。母親にどんなタイミングで、なんと伝えよう。そう考えながら最後の角に差し掛かる。赤いライトが路地から光ってるような気がする。いつもとは違う、アレ? と思う、違和感があった。
 最後の曲がり角を曲がると、違和感は恐怖に変わった。パトカーが2台と、救急車が停まっている。サイレンはなっていないが、3台とも赤いライトが回転して点灯していた。うちの前だ。見慣れたいつもの景色が、赤く照らされて、全く違う景色になっている。安心できるはずの風景が、恐怖映画の導入みたいな景色になっている。鼓動が一気に早くなるのがわかった。さっきのドキドキとは全く正反対だ。
「いったいどうして…。」
僕は、曲がり角で、自転車を停めて、茫然と立ち尽くしていた。救急車の後ろが大きく開いている。家からストレッチャーが出てきた。
「…お母さん!」
僕は叫んで、自転車をその場に放り出して、ストレッチャーの元に走った。自転車が大きな不協和音を出して倒れる。僕の声と、自転車が倒れる音で、その場にいた、救急隊員が3人と、ストレッチャーの上の母親がこっちを見た。
「お母さん! なんで?!」
母親の右目と、口のふちが腫れ上がっている。口の端から血も出ている。聞きたいことがいっぱいあった。
なんで怪我してるの…? 
なんでこんな酷い怪我を…? 
なんでもう帰ってきてるの…? 
ミワは…? 
父親は…? 
おばあちゃんは…? 
なんでこんなことに…?
「お母さん!」
ストレッチャーに駆け寄る。母親が、腫れた顔で、笑顔を作ろうとしていた。
「シュウ…。ごめん。本当にごめんなさい…。」
「お母さん!」
「お母さんたちが親で、本当にごめんなさい…。」
笑顔を作ろうとした母親は、笑顔を作ることに失敗して、口元だけ広角を上げ、目には涙を浮かべていた。
「息子さんですか?」
救急隊員の一人に声を掛けられる。その後ろでストレッチャーが上げられ救急車の後ろが口を閉じた。
「はい。」
「お母さんは怪我をされて、これから市立病院に運ばれます。携帯とか連絡先はありますか?」
「携帯は持ってません。」
僕はまだ携帯を持たされていない。
「父親なら…。」
「お父さん…。詳しくは警察の人に聞いてください。それでは、お母さんの経過は警察に連絡するように伝えますね。」
「えっ?」
「お母さんの傷が残らないように、病院に急ぎますので、ごめんね。」
そういうと、その救急隊員も救急車に乗り込み、救急車が走り去った。
救急車が停まっていたスペースがぽかんと空き、僕の前に家がそびえたっている。いつもより家がすごく大きく感じ、圧迫感を感じた。この家の中で、僕がサッカーしてるだけの間に何が起こったんだ…。両手をぐっと握りこむ。僕は意を決して、玄関にゆっくり足を進めた。






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