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97年組のファーストアルバムを聴き比べる〜スパカ、くるり、ナンバガの違い

さてさて、今日は97年組と誰が言い出したのか知らないけど、ジャパニーズオルタナティブロックを世に浸透させたとされる、3バンドがある。
一つは、スーパーカー
二つ目は、くるり
そして、ナンバーガール
だ。

私にとっての97年(平成9年)は、15歳にあたる年。
中学3年生から、高校一年にあたる年になる。

中3の時に、デビュー間もないスーパーカーを、あるバンドの前座で、渋谷クアトロで見た(97年の10月18日らしい)。
スーパーカーにとって、完全アウェイ。
クアトロに来ているお客さんは、全員、あるバンドをお目当てに来ている。
前座が出るなんて告知もなかったし、スーパーカーが出るという告知もなかった。
観客のお目当てでは当然全くなく、かなり冷たい視線の中での演奏だった。

私にとっても、渋谷クアトロは初めてだったし、小箱(?)のライブハウスも初めてだった。
初めてのモッシュに囲まれて、スーパーカーを見た。
でも、帰り道には、もう、スーパーカーの事で頭がいっぱいになっていた。
当時、スマホなんてないし、ネット環境も自宅にない。だから、帰り道に調べるとか、そういう事もできなかった。

でも、スーパーカーが忘れられなくて、何かで調べて、ラッキーとプラネットのリリースを知り、スリーアウトチェンジの発売を知った(98年の4月1日らしい)。高一から高二になる春休みだったようだ。
埼玉のど田舎の地元の駅前に、小さなCDショップがあった。
そこで、元旦那と、私は、一緒に2枚予約をして、発売日にスリーアウトチェンジを手に入れた。

スリーアウトチェンジは、透明なよくあるケースではない。赤白青のプラスチックでできていて、ジャケットなんてない。
歌詞カードは大きな正方形の一枚の紙で、それが折りたたんで中に入って居た。
写真は4人の横顔が証明写真みたいなサイズでちょっとあるだけ。イラストはなんかアメリカンなバットを持った男の子の一枚だけ。
でも、歌詞カードには、コードが記されていた。

スリーアウトチェンジを購入する前に、そういうCDを見たことがない。
透明のプラスチックの中の歌詞カードの表紙がCDのジャケットだ。
ジャケットは大体アーティストの顔写真だったのが、CDアルバムのジャケットをアー写以外で、アートワークするという文化が、売れている人たちの中で、なんとなく始まっていた、という時代背景だ。

本当にシンプルな作りで、潔さを感じた。

歌詞カードは本みたいな冊子になっているのが普通だったし、ツルツルの光沢紙が普通に使われていた。
でも
スリーアウトチェンジの歌詞カードは、大きな1枚の紙で、しかも、ツルツルしてない、なんの加工もされてない厚めの紙。なんという材質なのか、ちょっとわからないのだけど、不透明なプラスチックのケースに、光沢紙ではない厚めの普通の紙。しかも裏面はブルーブラックの1色刷り。フォントも可愛らしいゴシック体で揃えられていたし、曲のタイトルは全て英語(アルファベット)なのに、歌詞は全て日本語だった。歌詞に出てくる英単語も全てカタカナ表記だった。
とにかく、全てにおいてマットな印象で、何もかもが新鮮でオシャレだった。

普通歌詞カードは、見やすいように、曲事にページを変えたりするけど、スリーアウトチェンジはただ上から下に並べてあるだけ。改行さえ、曲の途中で次の行が使われていたり。

普通、ジャケットとか色んな所でアー写とか使いたくなるだろう。というかそれが一般的な時代で、それを一切しない、というのは、逆にこだわりを感じた。

私はその影響なのか、元々の好みなのか、なんというか、車の塗装にしたって、なにか自分で選ぶとなったら、マットな物を選ぶ。
ギラギラしたものより、マットな方が好きだ。

だから、スリーアウトチェンジのアルバムのアートワークももちろん凄く好きだと思った。

音も新鮮だった。
スーパーカーは、地元でライブを重ねてきて、デビューしたというタイプのバンドではなく、コツコツと音源を作って、それが割と早い時期にソニーに見出されて、録音→デビュー→ライブツアーという、順序で育ったバンドだ。
先行販売されていた、creamsoda、lucky、PLANET、だけだと言われることを嫌い、200曲にも及ぶ、音源の中から、CDアルバムの許容量めーいっぱいに音源を詰め込んだ。
最後のTRIPSKYは、後奏が長いのだが、どこで切断されてもいいように出来ていて、CDアルバムによって、ラストの数秒が違うのではないか?と噂されていた(実際に比べたことないのでわからない)。

スリーアウトチェンジの全体的な評価は、わかりやすいオルタナティブギターロックであるが、各曲は、その世界観の拡がりの可能性の示唆に富んだ、粒子の細かい作品集である。

文学作品に例えると、ギターロックというテーマにそった小話をまとめた、短編集と言えるかもしれない。

1曲目は、creamsoda
先行して発売されているのをアルバム用に別に録音したらしい。
ジュンジの、たーたたーたんという通るギターリフで始まるとても有名な曲だ。
青空の下で聞くような、軽快な気持ちのいいロックチューン。
ジュンジのギターリフに、ミキちゃんのベース音が重なり、コーダイのカウントが入り、それに合わせて、ナカコーの歪んだギターが後ろで鳴る。
ナカコーのちからの抜けたボーカルに、要所要所で、ミキちゃんの癖のない女の子のボーカルが重なる。
スーパーカーは、こういう音楽をしまーす!
と宣言するような、名刺のような1曲だ。

当時はAメロBメロサビ間奏AメロBメロサビという歌謡曲の雛形を、AメロサビAメロサビBメロ間奏Aメロサビみたいに、変形したっていいよね?という、価値観の創成期でもあり、この曲もそんな感じになっている。

ジュンジのリードギターは、クリーンな抜ける音を出します。ミキちゃんのベースはそれに重なるようにします。ナカコーのギターは、裏で思いっきり歪ませてノイジーなバッキングの基盤の音を出します。コーダイは掴みやすいビートを刻みます。そして、ちからの抜けた男女ツインボーカルでやって行きます。
みたいな、スーパーカーの雛形を1曲で示したみたいな、本当に名刺のような1曲であると思う。

作曲はナカコーがします。
作詞はジュンジがします。
ということも、雛形として示している。

2曲目の(Am I) confusing you?
は、ナカコーの歪んだベース音のギターから始まる、ナカコーの男性ボーカルのみで構成された1曲だ。
スーパーカーは青森の出身のバンドなのだが、それをスリーアウトチェンジの中で、たびたび「青い森」と表現するのだが、それが最初に表現されている。物語のようなジュンジの詞が片鱗を見せ始める。
サウンドとしては、歪みギターと軽快なリズムのドラムでやるけど、ボーカルとしては、優しく
余裕のある、割とゆったりしたペースでやってくね。って教えてくれる。

3曲目のsmartも、ナカコーの男性ボーカルのみの曲だ。
低音のイメージの曲で、ノイジーなサウンドなのに、聞きやすく、ゆっくり目の曲なのだが、ダーダダーダダンと繰り返される歪んだベースがリードギターのような役割を示している。
それも当時には新しい価値観だ。
アミダと涙とか、韻を踏む言葉遊びが楽しい。

4曲目のDRIVEは、アルバム発売後にシングルカットされた。
ドラムとベースはなく、ギター2本で、代わりにタンバリンの鈴の音が鳴らされている。

確かテレビに出た時は4人並んで、アコギを使ったんじゃないかと記憶している。もう一本はエレキだったか…アコギだったか…。記憶か定かじゃない。
音源の中では、アコギではなく、エレキ2本だと思う。

「夢でみたドライブみたいに
今日は
お姫様きどって
無邪気なままで

悩んでなんかないわよね?
長い夜に飽きただけでしよ?

忘れなんかないわよね?
ちょっぴり夢に疲れただけでしょ?

恐れてなんかないわよね?
ちょっぴりあなたが弱いだけでしょ?」

メルヘンチックなザ・女の子という歌詞なんだけど、結構厳しいことを全面的に言われてしまって、この歳になって聞いても、逃げてばかりの自分が叱られているようで、かなり痛所を突かれてしまう。
サビの繰り返しが2回なのだけど、最後だけ3回で、念押しされる。
そういう曲の構成という意味でも、歌詞の意味の区切りでブレスをせず、そのまま次にいって、歌詞の意味の区切りと、ブレスの位置をずらすとかも凄く新しく感じた。
文章の意味だと、
「夢で見たドライブみたいに/今日はお姫様きどって/無邪気なままで」
になるんだけど、
ブレスの位置でいうと、
「夢で見たドライブみたいに今日は/お姫様きどって無邪気なままで」
そういう細かい事がすごく新鮮に感じた。
今だと普通だよね。よくある手法。でも当時はめちゃくちゃ新しかった。

とにかく、ミキちゃんの高音ボーカルが、とてもいい。簡単なように聞こえるんだけど、癖のない女の子の声として、この高音域で歌い続けるってすげー。

これは97年組に限らず、ジャニーズオルタナティブロックに共通する事だと思うんだけど。
それまで歌モノって、ボーカルがメインで、ボーカルのためにバックミュージックがあって…。
という常識があったのだけど、もちろんスパカはボーカルはちゃんと聞き取りやすいんだけど、ボーカルも楽器の1つとして…。あくまでも音楽を構成する、音の1つとして扱われている。これはスパカが初めてやったことではなく、先人だと、ゆら帝とかが居るみたいなんだけど、それでも当時は新しかった。

ちなみにのちに、私はスパカのコピバンを組んで2回ほど仲間内のライブに出させて貰うのだが、セトリをみんなで相談したときに、「DRIVEは外せないでしょう!スパカのコピバンで出るのだから、来てくれる人に求められてるでしょう!」と、主張したのだが、楽器の構成的に再現無理と反対されて、私らのセトリには入りませんでした。

5曲目Greenageもナカコーのみのボーカルで、これもベースがリードギターみたいに使われるてるのか?改めて聞いてみると、ミキちゃんのベースが結構音作りされてて、ギターみたいな使い方されてるよね。
私は耳が悪いので、ナカコーのギターとミキちゃんのベースが聞き分けできないわ。

6曲目u
この「you」ではなく、「u」とする所が凄くオシャレだと当時から思っていた。
今だと、英語圏のネットスラングでyouを省略して、チャットとかで、uとされる事がよくあると思うんだけど、当時はまだ、そんなんないやん?
「ユー、会いたくなれ、会いたくなれ、会いたくなれ、僕に」だから、意味としてもyouなのに「u」をタイトルにする感じ凄く好き。オシャレ:)。
この、英語圏の顔文字とかも、まだない時代だからね。

これも歌詞の意味としての区切りと、ブレスの位置がズレてるの、ほんとにオシャレ。
ジュンジ天才だわ。
この物語みたいな、ジュンジの歌詞、寒いっていう人居るんだけど、はぁ~?って思う。あたしはどっぷり好き。物語みたい世界観なのに、ちゃんと韻を踏んでたり、言葉遊びもしてて、本当に天才だと思う。
この曲もナカコーのみの男性ボーカル。
地味な曲だけど、私は結構好き。
この辺りから始まる数曲は、のちの、ドローン(曲と曲の継ぎ目を分からなくする)の曲作りに繋がる感じがする。

7曲目Automatic wing
これはナカコーの男性ボーカルが主なんだけど、creamsodaみたいに、サビだけ、ミキちゃんの女の子ボーカルが重なる。
この曲も、ドローンに繋がる感じの、基礎の音を鳴らし続けつつ、いつの間にか曲が展開していく感じとかたまらんよな。
まだ7曲目か…。全部好きなので、書くことネタ切れになるかもしれないけど、抜粋ができないので、全曲触れていきましょう。

8曲目言わずとしれたlucky
初期の集大成って言っていいよね。
男女ツインボーカルを交互に歌わせて、いい感じのデュエット曲になってる。
これも先行販売でシングルカットされた曲ですね。

ほんとにどことっても好き。
全ての要素が好き。

ノイジーな基礎のギターの音がなり続けてて、歌のメロディラインは凄くシンプルで覚えやすいのに、それに重なるギターリフも同時に印象的でしっかり耳に残って…。
本当に凄く全体として聞き心地としては、シンプルによく纏まってるんだけど、奥が深い。
色んな音が何重にも層になってる。
どことっても好き。どの層に注目しでも好き。
あーめっちゃいい曲。

歌詞も本当によく出来てる。
全文引用したいくらい、たまらない歌詞。

女の子側からの
「見つかりにくいのは傷つけ合うからで
最近はそんな恋のどこがいいかなんて
わからなくなるの
それでもいつか少しの
あたしらしらとか優しさだけが
残れば
まだラッキー」だし

男の子側からの
「傷つけあう前に打ち明けられるかな
内心はこんな僕のどこがいいかなんて
わからないんだけど
それでもいつか少しの
男らしさとか広い心が
残れば
まだラッキー」だよ。

本当に。
そう思うよ。
こんな風に思い合える相手が居たら幸せだよね。
たとえ行き違っても、こういう風に心の底から思っても許される相手がいたら、そういう風に相手も思ってるって信頼できる相手がいたら、すごくラッキーだよ。

自分に自信がなくなるのも等身大だし、
それでも、ちょっとの可能性にかけてみよう、
そう出来たらラッキーだよねって、思う。

歌とほぼ同時に、すっと引く、後奏がない所もシンプルで好き。

9曲目333
これはミキちゃんの女の子ボーカルだけの曲ですね。
ナカコーのノイジーギターから始まる曲で、上から下に下がっていく音なんだけど、いつの間にかベースも、リフを鳴らすギターも重なっていって、音が膨らんでく。
ちょっと的外れな感じの、呑気な、能天気な、ギターリフもとってもいいのよ。このギターリフはくるりに通じる感じがある。
僕呼びの男の子の歌詞なんだけど、ミキちゃんがそれを歌うことで、可愛らしい世界観が完成する。
「流れる星に願いをかけるのよ
素顔の僕はどうか変わんないで」

「戻れなくて、歳をかさねてくの?」
やかましーわ!
と、おばちゃんは言うとります。
あたし16歳からなんも成長してないわ。
同んなじこと思う。
刺さりすぎる。

10曲目TOP10
「のんびり待ってるよ」
が漫才のオチみたいに使われてる、いいきっかけよね。曲の中のアクセントがしっかりあって、展開がとてもわかりやすい。
このタッタタラッターンって裏で鳴ってる、能天気なギターのリフも、ちょっとくるりっぽいな。
らららで世界線が続いてるのもええよなぁ。

11曲目MyWay
creamsodaの世界線だよね。
スピード感のあるロックチューン。
メインになる音が、バッキングギターになったり、単音のギターリフになったり、ベースになったり、ドラムになったり、楽しい曲よね。

スパカはボーカルがちゃんと前面に出て聞き取りやすい、いい音の配分だと思うんだけど、歪みギター好きやわ。

弱気になって言い訳言うけど、ちゃんと前向きな可能性を歌詞で現してくれるのも好き。
二枚目なんだってと2回目になってとか、もー言葉遊びが巧みすぎる。天才か?天才なんだよ。

12曲目Sea Girl
これもミキちゃんの女の子曲。
ギター2本とベースもドラムも、同じリズム音で重ねるんだけど、曲の展開でバラバラになって、また纏まって。
オルゴールの箱の中みたいな可愛すぎる曲なんだけど、でも、アルバムの世界観のノイジーギターはちゃんと鳴らして、スパイスがあるのよね。
本当によく出来てるわー。

13曲目Happy talking
ミキちゃんの女の子ボーカルが続くターンです。
この曲もオルゴールの中みたいな、印象的にはこじんまりとした可愛い曲なんだけど、それだけではなく、ラジオから聞こえて来るみたいなノスタルジックな音作りがど頭からされてて、裏でちゃんと歪みギターの音がいつの間にか鳴ってて、アルバムとしての世界観の統一性はちゃんと抑えてるんだけど、遠足に持っていくお弁当みたいに、1口づつ違うものが色々入ってて、楽しい曲です。

14曲目Trash & Lemmon
ナカコーにボーカルが戻ります。
上空で旋回する飛行機の騒音みたいな、上で一定速度で周り続けてる音がギターの音は鳴らし続けてるけど、リードがギターになったり、ベースのメロになったり、本当に厚みがあるんだよね。
層が厚い。スリーアウトチェンジは、シンプルなわかりやすい作りに見えて、音の薄っぺらさ、安っぽさ、が、全くないんだよね。上手いなあと思う。
途中のトコトコトコトコみたいな音って鍵盤なのかな?ギターなのかな?
スリーアウトチェンジは、ライブでの再現性を考えて、一発録りでやったらしいんだけど、って事はこの飛行機みたいな旋回するなり続けてる音を先に録音して、鳴らしておいて、トコトコトコトコって音はギターの音を重ねてるんだろうか?
シンプルな仕上がりなのに、音に薄っぺらさがないんだよな。
五月蝿くギターが鳴ってても、薄っぺらい音楽ってあるんだけど、なんというか、スリーアウトチェンジにはちゃんと奥行きがあるんだよね。
凄いなあ。

15曲目PLANET
唯一オーケストラを使った曲ですね。
私は耳が悪いので、どのくらいの規模のクラシックの奏者を使ってるのかわかんないんですが、オルタナティブギターロックの使い手が、オーケストラを使うと、こうなるよ?
という可能性を示してくれている1曲だ。
メインとしてはしっかり元々のギターが鳴らしてるんだけど、その尾ひれの部分をバイオリンとかのオーケストラに任せることで、音がすご広がって行くんだよね。弓だけなのかな。使ってるの。オーケストラだと思ってたけど、弓だけなのかな。弓だけかなあ。

曲の始まりが、オーケストラ楽器の自由な音出しで始まるから、クラシックのコンサートいって、そういうシーンを見ると、もう私の脳内では、自動的にPLANETが再生されてます。もう病(やまい)と言っていいくらい、PLANETの音は身体に染み付いています。

メインの音楽をトラに任せてしまうのではなく、そこは絶対譲らず、バンドサウンドが前面にあるんだけど、その余韻の部分を生のトラに任せて、その余韻だけだったのが、水に墨汁垂らしたみたいに、ふぁっーと気持ちよく拡がって、ナカコーがトラつかうと、こういう世界観になるよーってのしっかり残してるんだよね。
くるりは、7枚目のワルツを踊れで、アルバム1枚使って、その可能性を形にして素晴らしい結果を残してるんだけど、スパカが解散しなかったら、この世界線のアルバムも生まれてたんじゃないか?と思うと、早々に解散してしまったのが、惜しいよなぁ。ほんとに。
もっと魅せて欲しかった。

トラに主役を譲らず、ちゃんと、ナカコーのいい感じにちからの抜けた、ゆったりと余裕のあるボーカルが前面にしっかりいて、本当に気持ちがいい1曲。
終わり方も、すっと自然に引いていって、波が寄せたら、そのまま引いていくみたいに、本当に自然にトラを使ってる。
1曲しか、トラを使ってないのに、他の曲に悪影響を及ぼすような違和感もないし、本当に程よいのよ。
音って、鳴ってるのが無くなっちゃうと、寂しく感じるじゃん?だから、PLANETでトラを使ったら、この後の曲で、その不在を思って、んー?と感じてもよさそうなんだけど、全くそれを感じさせず、4人だけで、ちゃんと奥行きのある音楽を生成できてるから、トラが入る事にも違和感がないし、抜けて居なくなっちゃうことにも違和感を感じさせない。
これをデビューアルバムでやってのけるって、ほんとに凄いなぁと思う。
スーパーカーが、トラを使ってアルバムを作る世界線も観たかったなぁ。きっとうまく作るんだろうな。

16曲目Yes,
ミキちゃんの女の子ボーカルにバトンタッチです。ノイジーなナカコーのバッキングギターとちゃんと音作りしたベースの音でノイジーに始まる事で、前の曲のオーケストラのことを自然に忘れさせてるのか。そういう視点で観ると、本当に凄いことやってるなあ。
ミキちゃんのボーカルだけとったら、小箱の中の可愛い女の子なんだけど、サウンドとしてはノイジーさを頭から出すことで、トラが居なくなっても音の寂しさを感じさせず、今までの世界線にそっと戻してるんだなあ。
線路の分岐を右から左にいつの間にか移動させて、スリーアウトチェンジの世界観をブレさせない。
いやー、分析的に聞くとまた発見があるものですね。うまい。

17曲目I need the sun
なんかね、なんだろ、Yes,のあと、後のJUMPが頭の中でなるんだよな。なんでだろう。全然似てる曲じゃないのに…。
ベースと、リフのギターから始まって、いつの間にか、抜けるドラムとバッキングギターが鳴ってる。
ナカコーのみのボーカルだけど、伸びるコーラスラインと、メインのボーカルラインが行き来する。
層の作り方が本当にうまい。
どっちがメインだったか、分かんなくなるくらい、音のバトンタッチがうまいんだよ。
この曲のドラムは抜ける感じの音で、後のリズムマシンみたいな軽い音作りに繋がる気がする。
だから、JUMPが鳴るのかな。
なんだろ。わかんない。

18曲目Hello
アルバムも終盤。最後の盛り上がりに入ります。
ミキちゃんの負担の大きい曲ですね。
ライブでHelloはじまると、ミキちゃんに注目が集まり、ちょっと客席も緊張した気がします。
ベースの音が大きいし、肝になるし、走る感じのスピード感のある曲だし、ミキちゃんのボーカルでガっとサビ入るので、とちれない。頑張れー!とみんながミキちゃんを応援する曲です。
luckyと同じく、男女ツインボーカルをうまく使った疾走感のあるノリのいい曲です。

19曲目、最高トリを飾るのは、前述したTRIPSKYです。
ボーカルはナカコーのみで、でも、歌をやっぱり楽器のように使ってますよね。
静と動のハッキリした、メリハリのあるラストを飾るのにふさわしい曲ですよね。

スーパーカーの解散のライブでも、最終曲でした。轟音であるのに、最期に聞いたTRIPSKYは泉のように静かに感じました。
スーパーカーって、ライブの時に、ボーカルが真ん中じゃなくて、リードギターのジュンジが中央で、向かって右にテレキャスを持つバッキングギターのナカコー、左にベースを弾くミキちゃん、奥にコーダイのドラム、という配置なんですけど、解散の時は、まずナカコーがギターを置いて、ハウリングさせてステージを降りました。それにミキちゃんが続いて、やっぱりベースをハウリングさせて居なくなりました。
そして、ビートを刻んでいた、コーダイもドラムを叩くのを止めて、去ったんです。
最後1人残ったジュンジがギターを鳴らしながら、ふと後ろを向いて顔を上げるんですが、もうそこにメンバーは誰も居なくて、ジュンジも諦めたように、ギターを弾くのを止めて、やっぱりハウリングさせてステージを降りました。

私はこんな切ないライブをこれ以後も見た事がありません。
ナンバガの再結成の解散のピアアリーナMMにも行ったけど、やっぱりスーパーカーの解散のライブの方が切なかった。ナンバガの再結成後の2度目の解散ライブは「思い出作り!」と向井が何度も色んな所で言ってたけど、そういう、確かに切なくはあったけど、でも透明少女4回もやったし、なんか大人の、頭で理解できる、お別れだった。なんかまたそのうち4人とも元気だったらやりそうな気もするし、切なさはあったけど、頭の理解が追いついてる感じ。ふざけ倒した、プリクラ表示させたり、最後までお祭り騒ぎやろーぜー!って感じだった。

でもTRIPSKYで終わったスーパーカーの最期は、なんか、凄く静かで、神聖で…。ハウリングの音なんて、ノイズなのに、3つのハウリングの音がとんでもなく切なく響いて。
あー最期なんだ…って、感情が追いつかない感じだった。
精密で、厳かっていうか…。あー本当にこれが最期なんだって…。感情が追いつかないだけじゃなくて、頭でもなんか理解できてなくて、なんかとにかく切なかった。
ジュンジのコラムを読むと、発表される1年位前から、解散は決まっていたらしい。自由が丘から三茶にたまたま馴染みの飲み屋さんと同時期に引っ越したみたいなコラムで、少しだけその事に触れられてた。
スーパーカーは、ジュンジとナカコーの不仲で解散したと言われてるけど、きっとそうなんだろうな。
スーパーカーの解散の事はなんか触れちゃいけないタブーみたいになってて、なんかやっぱり切ない。

しばらくハウリングだけの時間が続いて、THANK YOU SUPERCARってレーザーが舞台に表示されて、ハウリングの音がロウソクを吹き消すみたいにフッと消えて、客電が付けられると同時くらいに、LASTSCENEの音源がかけられた。
私ら観客はスーパーカーの最期を看取ったみたいな…。アンコールなんてもちろんない。
その時の自分の影みたいな輪郭だけ、Studiocoastに置い行くしかなくて、知らないうちに自分の輪郭とも切り離されて、お別れしたみたいな…。そんな頭も感情も追いつかないまま、見守るしか方法がなかった。
2005年は私は23歳だったらしい。コピーバンドをやっていたのは高校3年の夏までで、元旦那が受験勉強に本腰を入れるタイミングで自然消滅したんだけど、連絡をとってなかった、メンバーと久しぶりに連絡を取って、4人で行った。
社会人一年目の最後。
思春期の自分の輪郭と、多分その時お別れした。
寒い冬の事だった。
LIVEの最中はいつも通り汗だくになったけど、外に出た瞬間、汗が一瞬で冷えた。
帰り道のことをあんまり覚えていない。


さて、くるりに話を移動しよう。
そういう風にスーパーカーを好きなった中3から、高一。スーパーカーには、早々に機関となるファンサイトがあった。私はそこのBBS(掲示板)に入り浸り、SNSもまだない時代、だけど、スーパーカーのファン同士の交流が密だった。そこでくるりも勧められた。
1stのさよならストレンジャーが発売されたのは1999年4月。私は17歳の年。高校2から高3に上がる春だ。記憶より以外と遅いな。
スリーアウトチェンジを買ったのと同じく、地元の駅前のCDショップで、元旦那と一緒に購入した。
私はあんまりシングルCDを買わない。スーパーカーは買ったのだけど、くるりは買わなかったと思う。

スーパーカーのスリーアウトチェンジが短編集なら、くるりのさよならストレンジャーは、長編小説だと思う。
くるりのアルバムには、それぞれモチーフを強く感じる。
作家は同じだけど、全く違うことを書いた長編小説を読むような感覚に似ている。

新しい音楽に貪欲な時期だった。

さよならストレンジャーの全体としての評価は、やっぱりわかりやすいジャパニーズオルタナティブロック。
スーパーカーのスリーアウトチェンジには、基礎の部分にノイジーな歪みギターがほとんど常に流れていたけれど、さよならストレンジャーにはそれがない。緩急がしっかりしてる。

1曲目のランチは三拍子の曲で、前奏がない歌ドンだ。
佐藤征史のウッドベースの生音に、もつれるようなポロポロと零れるギターの音が絡まる。そこに呼吸の音も聞こえそうな、岸田の大切に歌うボーカルが乗る。
ドラムの音は全く主張せず、恐らくスネアを軽く鳴らしているだけなんじゃないかと思う。
物語の導入のような優しい曲で、歌詞の内容も凄く近くの手に届く範囲の事を歌われている。
すぐに自分の手元にも存在するような、想像しやすい日常を歌うのが、岸田はうまい。

くるりは結構三拍子のワルツの曲が度々ある。
他のバンドサウンドでは珍しいので、1曲目に三拍子のランチを聴くと、さあて、くるりを聞きましょう、と心の準備が整う。
君が作った食べきれないランチ、微笑む声が僕のものじゃなくなる瞬間、久しぶりに立てたコーヒーを前に未来の事を話しコーヒーは冷めてしまう。
そして、優しく続く、んーんと優しく続くコーラス。物語の幕開けだ。

2曲目は虹。
ランチとはうって変わって、大きく響く、楽器の音。
音の拡がりと同時に拓ける世界観の歌詞。
ボーカルと同時に、すっと静かになっては、次第音の数も増え大きく鳴らし、囁きだった岸田の歌のボリュームも上がっていく。

この曲はギターのコードがそんなにむつかしくないので、私も自分でギターを弾いて今たまに遊んだりするけど、結構声張ってしまう。歌っていて、結構気持ちがいい。

強弱の大きい曲で、終わったと思うともう一度ピークが来て、立つ鳥跡を濁さずみたいに綺麗におわる。

3曲目のオールドタイマーはわかりやすいノリのいいスピード感のあるノイジーなロックチューンだ。
チンチーンという、あれは電車の環境音(?)なのかな?、一瞬の環境音から始まる。

たっしんさんクリストファー期の最高に走ったライブの最後に、アンコールを私が叫んで、やってもらった思い出の1曲でもある。
ランチも虹も好きだけど、オールドタイマーはやっぱり凄く好き。
ライブでやって欲しい曲。みんなで盛り上がりたい曲だ。

3曲目さよならストレンジャー。
2023年末の感覚は道標のツアーの最終日に、岸田と、佐藤征史と、もっくんの初期メン3人で最後にやった曲だ。
ということは、くるりにとって原点のような曲なのだろうか?

これを聞いていると、なぜか村上春樹の短編集のTVピープルを思い出す。ブラウン管のテレビのなかから、小人が出てくる話だ。

「テレビの中飛び出していた」
「テレビの中僕は息絶えてた」
「テレビの中はもぬけの殻」
とテレビという単語が3回出てくるのと、ストレンジャー(よそ者、知らない人)という意味の語感のせいだろうか。

だから、私にとってのさよならストレンジャーは、村上春樹のTVピープルの記憶とだぶる。さよならストレンジャーのイメージはTVピープル。

たびたび出てくる、気の抜けたサイダーが初出する。

4曲目のハワイ・サーティーンは、鉄琴のビブラフォンっていうのかな?それと、コップを叩いたり、紙を破いたり、そういう環境音に、コーラスが乗った箸休め的1曲。
もちろん全部ソラでダサダサスキャットでご勘弁頂けるのなら、再現できる。
環境音楽といっても、さよならストレンジャーに欠かせない1曲だ。
この曲だけ作曲が佐藤征史になっている。

5曲目は東京。
先行リリースされた1stシングルで、やはりとても有名だし、最初期の代表的な曲だ。
支持する人も多い。
もちろん私も好きだ。
迷うようなもったりとしたギターのリフは、くるりらしい。

岸田は京都から離れ東京に上京して来て、まだ稼げて居ない時期に書かれた曲らしい。

カラオケで東京と検索すると、本当にいっぱい曲が出て、くるりの東京を探すのが難しい。
みんな、東京に思うこと、東京で思うこと、がいっぱいあるのだろう。
くるりの東京は、これまで過ごしてきた、地元を離れ、上京して、感じる事にやっぱり通づるものがある。

私は最近、趣味で小説(?と呼んでいいのか分からないのだけど…)のようなものを書いているのだけど、初めて書いたそのテキストの中に、くるりの東京をまるママ引用させてもらっている。
どこにも公表してないものなんだけど、田舎から出てきた女の子2人が東京でサバイブしていく中のある春の日の1晩の出来事を綴ったものだ。
私はその中で、どうしても東京を引用したくて、主人公の2人を無理やりカラオケに強制連行した。

ということで、その一節をコピペする。

『最後だから好きな曲歌いな、なんて曲? って聞いてくれて、くるりの「東京」って言ったら、すぐ検索してくれて、くるりの「東京」を入れてくれた。朱音はすごい。
「東京の街に出てきました~♪」
 東京はキーが低いのだと、初めて知った。

『東京の街に出て来ました
 あいかわらずわけの わからないことを言ってます
 恥ずかしいこと ないように見えますか
 駅でたまに昔の 君が懐かしくなります
 雨に降られて 彼等は風邪をひきました
 相変わらず僕はなんとか大丈夫です
 よく休んだらきっと良くなるでしょう
 今夜ちょっと君に電話しようと思った
 君がいない事 君と上手く話せない事
 君が素敵だった事 忘れてしまった事

 話は変わって 今年の夏は暑くなさそう
 あい変わらず 季節に敏感にいたい
 早く急がなきゃ 飲み物を買いにゆく
 ついでにちょっと 君また電話したくなった
 君がいるかな 君と上手く話せるかな
 まぁいいか でもすごくつらくなるんだろうな
 君が素敵だった事 ちょっと思い出してみようかな
 君がいるかな 君がいるかな
 君がいるかな 君と上手く話せるかな
 ララーラララララ ラララララ ラララララー』

 カラオケの室内に、的外れなギターの再現音が響く。
 東京に出て来たばかりの頃、この曲は地元に居る時に感じたのとは、違う意味を持つようになり、繰り返し聞いた。久しぶりに歌詞と直面してみると、こんなことを言っていたのかと思い出す。
 私は地元に想い人を置いてきたわけではないけれど、地元の好きなところ、忘れてしまったこと、いつまでも忘れないないこと、懐かしく思うこと、東京に馴染めているかなと不安に思った日、いつの間にか東京の方が居心地がよくなっていると気づいた日、変わってゆく自分、変わってゆく知らない地元、ふとあの日に連絡を取りたくなるけど、電話を受けてくれる変わらない相手なんかどこにもおらず寂しくなること。
 そんな郷愁の思いと、東京に感じる思いが交差して胸を刺す。
 演奏停止ボタンを押さなかった朱音が、宙を見つめている。
「なんか、湿っぽくなっちゃったね…。」
 沈黙に耐え切れず、私は言う。
「いい歌だね、なんかグサグサくる。」
「ねー…。この曲書いた人は、京都から上京してきてすぐ、この曲書いたんだよ。」』

という具合で、なんだか、生まれ育った土地を離れて、生活する時に思う感情を、本当にうまく5分半で表現してくれていると思う。
調べてみたら、5分半と結構長い曲だった。
感触としては、そんなに長く感じないんだけど。

くるりの東京の価値を、自分で表現しなおすという事がむつかしすぎる。

なんていうか、聞いたらわかるじゃん。

歌詞としての文字情報も、流れている音楽も、結局東京聴くしかないし、東京聴けばわかる。
東京から感じることは東京を聴くしかない。
それくらい過不足なく完璧で、素晴らしい曲だと思う。

書いた岸田にとっては、どういう価値の存在の曲なのかわからない。
きっと岸田には、岸田の思いがあるし、思い出は決していいものばかりではない。思い出したくもない、嫌な過去の自分と向き合わなくちゃいけなくなることもある。
ミュージシャンが、過去の自分の曲を、再現するって、きっと書いた時の自分を思い出すこと他ならないと思うんだ。
だから、それが、必ずしも、気持ちのいい事だけじゃないと思う。苦悩の中生まれる曲だってあると思うし。というか苦悩がないと曲なんか書けないんじゃないだろうか?

聴いている私たちが、それぞれ思うことも違うし、書いて、歌っている岸田が思う事も違うと思う。

なんというか、ある匂いをかいで、ぶわっと鮮明に記憶が蘇ってしまう瞬間を、無防備に受けてしまった、みたいな。
くるりの東京には、そういう質感というか、感触というか、音楽は耳から入る物だけど、それで収まってくれなくて、色んなものを、色んな複雑に絡み合う感情を、引き出すスイッチみたいな、作用のある曲だと思う。

くるりの東京には、そういう効力というか、不可抗力というか、作用というか…。なんか囚われてしまう、スイッチである曲だと思う。
凄く強引な、力のある曲だと思う。

そういう芸術はよくあるものじゃない。
本当に稀なものだ。
くるりの東京を聞くたびに、私はなにかまた自分の中に違う発見をする。
10代のときに、初めて聞いた感触と、41になって、聞く感触は全然違う。

胸をうつ音楽は、そういうもので、いつ聞いても新しいし、いつ聞いても、違う感情を揺り動かされる。

東京とはそういう唯一無二の楽曲であると思う。

フジファブリックの赤黄色の金木犀という曲の中に「冷夏が続いたせいか今年はなんだか時が進むのが早い」という一説がある。

岸田のいう「今年の夏は暑くなさそう」と予想した、夏の事を、志村は「冷夏が続いた」と振り返っている。
今じゃ考えられないけど、平均気温が、上がらない冷夏というものが、昔はあった。
近い時期に、生まれた名曲に、そういう共通点を見つけるのも楽しいよね。
確かに昔、そんなことがあったなぁと思う。

岸田は1976年の生まれで、東京は1998年のリリース。
志村は1990年の生まれで、赤黄色の金木犀は2004年のリリース。

猛暑日のグラフググッてみました

夏は昔より実際暑くなってるみたいです。
信じられないよね。

6曲目はトランスファー。
元旦那情報によると、さよならストレンジャーの中では、岸田は3曲目のオールドタイマーと、このトランスファーが好きらしい、と言っていた。根拠があったのか知らんけど。

前奏や間奏のギターのリフも迷っていれば、
歌詞も「迷ってる~」で始まるし、
トランスファーを直訳すると「移動」とか「乗り換え」らしいけど、それが上手くいかずに物理的にも、感情的にも迷ってしまっている。

でも、全体的な、仕上がりとしては、勢いのあるロックチューンだと思う。
ギターがブルースっぽい、であってるのかな。ちょっと私音楽の知識ないので、合ってるのか分かんないけど、なんというか、ちょっと昔の洋楽っぽさがあるギターの音だと思う。
音作りとしては、迷いのない、ハッキリとした、鮮明な音だと思う。

8曲目、葡萄園は、次の7月の夜の前奏だと思ってた。ディズニーランドのスペースマウンテンみたいな曲。ひゅんひゅん。

9曲目、7月の夜と書いて、なながつのよると読みます。
さよストは、夏のモチーフの曲が多いなあと思うけど、7月っていっちゃってるもんね。

後ろでずっと絡んでるみたいなギターの音が岸田っぽいと思う。どこかちょっと前の洋楽のギターの音がする。

スーパーカーでも書いたけど、97年組の音楽は、薄っぺらさがないという共通点があると思う。
音が複雑に層になってて、どの層にもメロディがある。97年組の共通点なのか、ジャパニーズオルタナティブロックの共通点なのかわかんないけど、飽きがこないんだよね。ちゃんと層にして音楽作ってくれると。
仕上がりとしてはサラッとシンプルに見えるけど、ちゃんと層を重ねて作りこんでる。ミルフィーユみたい。

10曲目りんご飴。
なながつの夜、行った先はお祭りだったのかもしれない。
潮田雄一さんという、好きなギタリストがいるのだけど、その人が15年前くらいに、ソロでやり始めて、最初のライブに、ちょうど行って1発で好きになって、未だにたまに見に行くんだけど、その時に思ったのが、くるりのりんご飴だった。歌も自分で歌っていたライブ全体を通して感じた印象が、本当に似ていた。潮田さんは、その時、公園とかで自分で撮った環境音を流しながらライブをしたんだけど、本当にりんご飴だと思った。深夜から明け方の電車の倉庫の歌なのか、貨物列車の走る様子なのか、そういう曲があって、とても好きだと思ったんだけど、なんか匂いが似てるのだ。

この曲もドラム無しで、ベースもなしなのかな?12弦ギターで潮田さんがやったライブで感じた事と感触が似てる。あーウドべか。あーランチと同じウドべの生音を低音に入れてるのかな…。
ギターを二重にしてるのか…でも1本でも出来そうなんだよな。そのギターを追いかけるように鍵盤と歌が入って、どっちが先かわかんなくなるようなシンプルな追いかけっこの曲。全部生音だろうな…。

11曲目は傘。
鍵盤かギターの電子音と、シャッフルみたいに刻むドラムと、環境音。そこに思いっきり歪みギターとベース、鳴らすドラム。この曲も緩急のハッキリした曲。
のちのチームロックの曲(ばらの花)とかに繋がって行く足がかりのような音遊び。ギターのワウペダルの音わんわんさせてる音ってことは、やっぱり電子音は、鍵盤なのかな。

緩の部分はスパカのナカコーの歌と被るんだけど、さよストとスリーアウトチェンジの完全な違いは、急のところで岸田のボーカルが結構声張る所かもな。ナカコーはスリーアウトチェンジで絶対声張らないんだよ。どこまでもゆとりがある。
パズルみたいだなあ。
この曲ライブでやるのかなあ?やったことあるのかなぁ。ないってことないと思うけど。
この系譜で、チームロックの曲は出来てるんだろうな。そういう未来の音源を聞いてから、この曲を聞くと、そう思う。
ギターの音がやっぱりちょっと昔の洋楽っぽい骨のある音がするんだよなあ。
スリーピースで厚みを持たせようとすると、そうなるのかなあ。

12曲目はブルースで〆。
岸田の歌詞にたまにでてくる、生々しいエロの匂わせ。ハム食べたいにしても、この曲にしても、絶対そういうことだろ?
昔、くるり好きだって言ってる女子の友達にそういうことだろ?って言ったら、すげー蔑まれた目で見られたことあるな。あたしの発想がおかしいのか?いやいや、他に考えようがないだろ。
私には音も歌詞の内容も男性っぽい、男性ならではの、ゴツゴツした欲の曲にしか思えん。
これも緩急のしっかりした曲。
ストレンジャーって単語を多分わざと出して、アルバムを締めくくろうとまとめに入ってるんだろうな。
この曲もライブでやった事あるのかな?セトリの中で上手く組んだら、トランス状態に持って行くのに、気持ち良さそうだけど、聞いた事ない気がするなあ。

こうやってスパカと音を順番に聴き比べてみると、スーパーカーの出す音が、本当に優しく感じる。
さよスト単品で聞いてたときは、こんな男性っぽいゴツゴツした荒々しい直接的な音作り、音楽とは思わなかった。どちらかと言うと穏やかと思ってたんだけど、比べてみると、本質的に全然違うもんだな。

後奏の鍵ハモからが三拍子になって、ループしてると、1曲目のランチとの境目がよくわかんなくなる。んで、いつの間にか何周も聞いてる。そういう中毒性のあるアルバムに仕上がってる。

いつでも愛ある明日を信じていたい、がついた嘘なのかなぁ。ランチの聞き方が変わってくるなあ。穏やかな日常って思ってたけど、5分で作った嘘をついた愛の歌だったのかな。
ランチ好きだったのに、なんか改めて歌詞追いながら聞いてみると、そうなってしまうなぁ。
そんなしかけ絵本みたいな構造になってたのか…。
ジュンジの書く詩がより甘くメルヘンに感じる。

あたしは今までずっとさよストを勘違いして聞いていたのかもしれない。こんな荒々しいものを秘めたアルバムだと気が付かなかった。

そーゆーことかー。なるほど。
うーん。単品でさよストだけをループしてたら、気が付かなった。うへー。新発見。
お尻と頭を繋げるって、スパカが先だと思ってたけど、くるりが先だったのか。これもドローンの手法になるのかな。
スリーアウトチェンジが粒子の細かい砂みたいな粒でできた曲だとしたら、だいぶ大きい岩だなあ。ゴツゴツしてる。全体的に。こんなにゴツゴツした質感だったとは、しらなかった。ずっと穏やかなアルバムだと思ってた…。
ドライブで聞いてるとそんな事を感じなかった。
今改めて再評価しております。
でもやっぱり、オールドタイマー好きだな。


さてさて、最後にナンバーガールです。
実はですね、私は向井の音源をお金を出して買った事がありません。前にも書いてるんですが、元旦那も含め、周りの人たちはみんなナンバーガール!って、透明少女が出てすぐ言い始めたんですよ。1999年5月。さよならストレンジャーの出た翌月の事ですね。この時は私はスパカのコピバンを組んでたのですが、3人ともナンバーガールだ!ナンバーガールがいい!ナンバーガールやりたい!と言っていた。
んで、歯医者の息子だった、ベースがですね、透明少女私の分を買ってきてくれて、いいから聞けと、渡されました。
家帰って再生してみるものの、正直全く理解できなかった。なにも分からなかった。
スパカファン友達もナンバーガールに夢中になってて、SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICTが1999年7月に出るのですが、そのアルバムを渋谷のタワレコで買うと、地下のインストアライブのチケットが2枚貰えたんです。んで、スパカ友達がチケット余ってるってんで、貰えてタダで入れて貰ったので、スパカ友達に連れられてライブを先に見ました。みんなライブに既に行っていて、カタカナのナンバーガールのTシャツを来ておりました。そんな中、私はタワレコ渋谷の地下で、音源も覚えず、ただだし~というノリで会場に入りまして、みんな前行くので、それに連れられて訳の分からないままモッシュに揉まれ(その時はそれほど激しくはなかったけど私は、ライブに踊りに行ってたので)なんか楽しー!とだけ思いました。向井は当時お客さんによく絡んでまして、その日も絡んでました。指された男性は顔見知りのスパカファンでした。
どこから来たのか?とか一連のやり取りをしまして、そんな君に贈る桜のダンスが披露されたのです。
ナンバーガールの1stはSCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICTなのでしょうか?SCHOOL GIRL BYE BYEなのでしょうか?

くるりなら、さよストの前にファンデリアがあるじゃないか!となると思うんですが、ファンデリアはやっぱりなんというか…。8曲だし、図鑑に通づるものはあるんだけど、なんか乱暴な印象で、デビューするぜ〜って作り方じゃない気がするんだよなあ。だからやっぱり1stはさよストなんじゃないかなあと思うわけです。Interlude歌なしのインストだけど、歌入れて再録しとるよね?風が吹いてるーいつもって岸田が歌う声が頭の中で聞こえるんだけど、くるりの曲多すぎて思い出せねー。でも確かに歌ってる所は覚えてる。だから、ファンデリアは完成形ではないのではないかと…。おばちゃんはそう思うわけです。手にする順番が、確実にさよストか初めで、追いかける形でファンデリアを聞いたので。(Interludeが何の曲になってるか知ってる人いたら教えてください!)

スリーアウトチェンジは題材の決まったスーパーカーという作家の書く短編集だと言いました。
さよならストレンジャーはくるりという作家の書く長編小説だと言いました。
ナンバーガールの作品群についてはですね、ナンバーガールという作家の書く、続き物のシリーズ見たい思えるんですよ。京極夏彦の書く、京極堂シリーズみたいな。あんまりアルバムでひとつの世界観をと言うより、全ての曲が地続きにというか、なんだろうな、続きを聞いてる感じがするんですよ。どう思います?

ということでですね、ナンバーガールは家で全く聞かず、ライブに行くのが楽しいバンドでありまして。アルバムで聞くという事をしてきてないんですよ。だから、語れるものもござーません。
うちで聞くのは、スーパーカーとか、椎名林檎とか、歌が歌いやすいのばっかり聞いておりました。
だから、ナンバーガールを音源として聴き始めたのは、しゃーなし、最近なんですよ。
全てがライブの記憶に繋がるので、最も血が沸き起こる音源ではあるのですが、どうも今も昔も、家で一人で聴く音源ではなく、ライブで聞きたい曲なんですよね。モッシュに揉まれて汗だくのぐちゃぐちゃになりながら、踊り狂って聞いていたい。
だから、ライブに通って全てを覚えたので、曲のタイトルと、曲が一致しない。タイトル見てメロディーが出てこない。困った困った。
というわけでナンバーガールの1stはSCHOOL GIRL BYE BYEだと思うております。
でもアルバムとして聞いて来てないので、何も言えません。ごめんなさい。
全曲紹介…したいっすよね。ここまで書いたんだから。

もうね、2万字なんです。
疲れた。書くの疲れた。
全部わかるんですが、音源としてもこだわりとかわかんねー。

当時の音源の印象は、なんか向井のボーカルクソちいせー。家で聞かせる気あんのか?こらー?という感想でございました。

1.omoide in my head
2.大あたりの季節
3.センチメンタル過剰
4.September Girlfriend
5.IGGY POP FAN CLUB
6.水色革命
7.渚にて
8.SUMMER of California '73
9.mini grammer
10.我起立唯我一人(アイスタンドアローン)
11.4 track Professional2*(よんトラックプロフェッショナル)

ナンバーガールは音源聞きまくってきてる人にバトンを渡します。
頑張って曲とタイトルが一致するようにこれから音源聞きます。ライブ見れないし。
ナンバーガール家で聞くとさ、ライブ行けない事実が悲しすぎる。本当にライブ行きたくなる。解散してる事実を、いまだに受け入れられない。ただひたすら悲しい。みんなで歌いながら踊って飛び跳ねたい。じっとして家で聞けない。
みんなどうしてるん?じっと家で音源聞いてるの?マジで?じっとしていられる?
おばちゃん座りながら踊ってます。家でも。はい。様子のおかしい人になります。
あーナンバーガールのライブ行きたい。息絶えるまで通いたい。踊り狂って死にたい。最期はそこで迎えたい。

ということでですね、97年組の1stを聴き比べて参りました。
私にとって、高校生という、多感な、音楽に貪欲な時期に、97年組はちょうど旬だったんです。
もしね、私が1756年のヨーロッパに生まれていたら、絶対モーツァルトに夢中になってるんですよ。絶対なってる。モーツァルトと同時期に生きてて、生でモーツァルト聞けたら、夢中になってる。モーツァルトで踊ってた。
だからですね、音楽って、やっぱり、旬な時期に自分の意欲が向いてる時期に、いい!というものを追いかけるんだと思います。
こないだあのちゃんいっていて、今私が中高生だったら、あのちゃんに夢中になって、追いかけたと思う。

過去の音源で、すげーいい!と思っても、ライブ行けないと熱量保てない。古くて、ライブ行けなくても聞き続けてるの、はっぴいえんど位じゃないか?
3年前にライブに行く!という目標も一応達成できたし。たった3曲だったけど。

やっぱり音楽って生もので、旬な時期を捕えられると、すっごく楽しい。
97年組は、私にとってそんな存在なんです。
だから、97年組こそが音楽!とも言わないし、世代が違えば、魅力的に感じるものにも変化があるじゃないかと思う。
たまたま私にとって、1番身近で、手に取りやすくて、ライブに行きやすくて、その時好きだと思ったのが97年組だったってだけ。
系統の好き嫌いはあるとは思うんですが、生まれた時や、場所が違ったら、きっと違う音楽に夢中になってた。
20歳の私の1番若い友達は、しきりにBaseBallBearって言うんですよ。私はBaseBallBearはほとんど通ってない。ナンバーガールも、くるりも、スパカも拾ってちょこちょこ聞いてはいて話が通じる曲もあるんですが、彼女にとって、その時。手に取りやすくて、身近で、魅力的だった音楽がBaseBallBearだったんだと思う。

だから、私は高校生という、1番音楽を聞きたかった時期に、97年組が居てくれて、ただ、ただ、とてもラッキーだったとしか言えない。
タイミングが違えば、他のバンドに夢中になってたのかもしれない。
多分系統としては似るだろうけど、日本語ネイティブで、1982年に生まれてって、環境だったから97年組がドンピシャでたまたまハマったってだけ。
あと5年遅く生まれてたら、こういう熱で語る対象がフジファブリックだっただろうし、多分ちょっと違ってるとおもう。
私と同じ生まれ年でも、ビジュアル系のバンギャの子もいたし、ひたすらジャニーズの子もいた。ただ、私にはそれらは全然刺さらなくて、たまたま好んだのがオルタナティブロックと言われるジャンルだったってだけ。
あと5年早く生まれてたら、ゆら帝主義者だったかもしれない。チバ推しだったかもしれない。
そんな世界線も楽しそうではあるけれど。
多分好きな系統は同じだと思うけど、同じ熱量で音源聞けてたとは言えない。

ラッキーだったねえ。
そう思うよ。

ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙初回のえぞ行くんだった。
1999年夏。高二の夏。
あたしのためにあるブッキングだった。
お金もあったし、一緒に行こうってメンバーも決まってたし、行くはずだったのに、元旦那が泊まりだから行くなって言われてゆうこと聞いた私がバカだった。
全て観たい人しか出なくて、スデージも1個で、ほんとに程よいサイズ感のフェスで…。
向井が帰りたくないって、駄々こねた時よ。
あのステージでもう一度ぶちかましたいって、ナンバガ再結成のきっかけになったフェスよ。

あたしめちゃくちゃ行きたかったの我慢したのに、その3年後だか4年後に、あたしを止めた元旦那は、大学の友達と楽しそうに行きやがった。それを笑顔で見送ったあたし、偉すぎるだろ。
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙、あたし人生で後悔してることってほぼないんだけど、自分の意思を他人の指図で変えなきゃ行けなかったの本当に後悔してる。
人生で最初で、最大の後悔。
マジで行っとけ!ばよかった。
タイムマシンがあるのなら、高二の夏に行って、お前一生後悔するから、えぞ行けって、言ってくるわ。
ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙



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岸田繁に絡む記事が多くなっちゃったので、一覧にしました。合わせてどうぞ‪(꜆*ˊᵕˋ)꜆🍵
https://note.com/clean_cosmos816/m/m60433fd76ec0






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