ライトノベルの賞に応募する(2)
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朝6時のアラームが鳴る。まだ起きたくはない。布団のなかでしばらくぐずぐずするが、1日を始めなければならない。父親と母親が脱ぎ捨てた洗濯物を洗濯機に入れて回す。物干し部屋に行って、サッカーの練習着とソックス一通りのものを畳んでカバンにしまった。ミワの制服も畳む。今日着る分はミワの枕元にセットしてある。昨日寝る前に明日何を着ていくか、ミワの希望を聞いて用意してある。祖母のデイサービスに必要な衣類もパッキングする。そのほかの洗濯物も畳んで家族ごとに振り分ける。そうこうしてるうちに、さっき回した洗濯ものが終る。代わりに母と父の濡れた洗濯物を物干しにつるして、台所に向かう。卵焼きは卵2個を2つ分作る。砂糖と白だしを入れて母の好みに合うようにする。ミワのお弁当箱にラップでくるんだふりかけ入りの小さなおにぎりを2つ。卵焼きを二切れ入れて、冷凍食品のストックから2種類出してそのまま入れる。冷凍食品を温めて入れなければ入れないと母に小言を言われたことがあるが、冷凍食品のパッケージにはそのまま入れていいと書いてあるのだ。食中毒の防止にもなるし、母の小言に返事はするが、ゆうことを聞かなきゃいけないときと、無視していいときと自分なりに判断している。そんなに言うなら自分で作ったらいいのだ。ミニトマトを一つ添えて、お弁当袋に詰めて、ミワの幼稚園バックに詰める。母が起きてきて、僕の作った卵焼きとみそ汁、炊き立てのご飯を自分でよそっている。そこまで僕がしてやる必要はない。父はどうせまだ寝ているのだろう。祖母の部屋に声を掛けて、ミワの部屋に向かう。こんなに小さな体で、ちゃんと一人で寝る。この家庭に生まれたのだ無理もない。本当は母親と一緒に寝たい年頃だと思う。ミワのベッドにしゃがみこんで、ミワのおでこをなでる。まだすやすやと寝ている。こんなにかわいい寝顔を母は見ることがない。
「ミワ? 朝だよ? 起きられる」
「うーん。」
ミワはまだ夢の中に居るみたいだ。でもそろそろ起きて幼稚園の準備をしないと間に合わない。
「ミワ、朝ごはんできてるよ。卵焼きだよ。早く起きて食べよう?」
「うーん」
ミワが目をこすりながら反応する。
ミワがやっと体を起こす。朝が来たことを彼女はこの小さな体で受け入れている。
「うーん。ねむいよー」
ミワが甘えた声を出す。
「幼稚園が始まっちゃうよ? 遅れていったら嫌でしょ?」
「うーん、わかった」
「一人で着替えられる?」
「うーん、お兄ちゃんやってー」
ミワのっリクエストに応えて、パジャマのボタンを外す。下着を脱がし、新しい下着を着せさせブラウスに手を掛ける。
「それじゃやだ。昨日着たのがいい」
「わかったよ、持ってくるね」
昨日服を一緒に選んだことなんてミワは覚えていない。洗濯は終わっている。
物干し部屋から昨日着た服を持ってきて
「これでいい?」
とミワに確認する。
「うん」
と言ってミワは腕を通した。
気に入った服を繰り返し着たくなる気持ちもわからないわけじゃない。そんなことで怒っても意味がないのだ。
「朝ごはん食べよ」
スカートを自分で履いたミワに声を掛ける。
「うん」
ミワはベッドから立ち上がり、僕の後についてリビングの椅子に腰かける。
「昨日はどうだった?」
ミワの小さな茶碗にご飯をよそり、ふりかけをかけていると、母がミワに問うた。
「うーん」
まだ目覚めたばかりのミワにそんなことを話しかけても、まともな答えが返ってくるわけでもないのに。でもそれが母親としての務めだと思っているのだろうと僕は無視する。
ミワの分と、自分の分のお茶碗とお椀を持ち、テーブルに向かう。
「…いただきます」
たった4歳なのに、ちゃんと自分で食べ始める。黙っていても誰かが世話を焼いてくれるわけではないことを知っている。
「おばあちゃん起こしてくるね」
僕は自分の朝食に手を付ける前に、祖母の部屋に向かった。ミワの起こしつけより、祖母の方が手がかかる。
「おばあちゃん、もうすぐデイサービスの人が迎えに来るよ」
ミワとは違い、少し強引に起こしにかかる。
「すまないねぇ。」
口ではそういうが、自分で動こうとはしない。僕は祖母のパジャマのボタンを手をかけ、昨日用意していた服に着替えさせる。粗相をするようになってきたので、紙おむつを履いて欲しいが、それは断固としていやらしい。上下を着替えさせて、朝ごはんできてるからと声を掛ける。どうせ部屋から出てこない。
僕は食卓に戻り、ミワのお弁当の残りの卵焼きに手を伸ばす。まずまずの出来だった。3人で食べるにはちょっと足りない気もするが、残ってもしょうがない。このくらいでいいのだ。
母は食べた食器もそのままに、出勤の準備をする。
「ミワの送りお願いね」
そういうと足早に家を出た。送りだけではないだろ、迎えも食事の準備もお風呂も寝かしつけも、全部僕の仕事だ。
ミワはゆっくりとした様子で、よそわれたご飯とみそ汁を口に運ぶ。4歳の子供が自分で朝食を食べるのは普通なのだろうか。この環境に慣れたせいで、ほかの4歳児よりもできることが多いのではないか。そんな不安が頭をよぎる。今度ネットで調べてみよう。
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