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2020年、コロナ年に採用された教師として 紆余曲折の日々<その3>

本来なら5月末に運動会をする予定だった。

一時は開催も危ぶまれた運動会だったが、10月開催で方針は固まっていた。


僕にとって忘れもしない初めての運動会

僕にとって教師として初めての運動会。
与えられた当日の役割は、学級の管理と学年演技と3、4年生の徒競走のスターターでした。
スターターというのはいわゆるスタートの合図を出す人です。

楽しみな気持ちと不安な気持ちが入り乱れていました。

さて、そのときの僕はというと、学年主任とあまり良い関係が築けていませんでした。

というのも、学年主任が運動会についてさも当たり前のようにこういったのです。
「運動会は保護者のためにある」と。

心の中で密かに
「じゃあ、やらなければ良いじゃん」
とツッコミを入れました。

それはさておき、運動会はやりたくなくてもやらなければなりません。

「何かが子どものためになる」
その一心で運動会のモチベーションを保っていました。

しかし、この頃から学年主任とコミュニケーションを取らなくなっていきました。

余談ですが、
年度終わり、子どもたちは春休みを楽しんでいる頃、学校では「誰が何年をもつ」などというような人事が行われます。
来年度、僕が担任した子どもたちの学年主任をすることが決まっている先生が僕の教室に来てくださることがありました。3月28日くらいだったと思います。
その先生が僕の教室に入るなり、こう言いました。

「この教室、外からの情報が遮断されてるみたいだね」

それほど、学年主任とコミュニケーションを取っていなかったのかと反省しました。


さて、話を戻しますね。
運動会の1ヶ月前になると学年演技の練習が始まります。
最初は手取り足取り教えられていた子どもたちは日を追うごとに上達していきます。

学年演技の練習の先生たちの仕事、それは、
誰よりも楽しく、大袈裟に振り付けを子どもたちと一緒に踊る。

他の先生方は違うかもしれませんが、僕はそんな印象をもちました。

学年の雰囲気は良くありません。そんな中、踊る。これがとにかく辛かった。踊りながら鳥肌が立つほどでしたから。

運動会の本番の1週間前、スターターの練習も始めました。
練習といっても、スターターピストルを持って誰もいない体育館で
「よーい、パン!(スターターピストルの音)」
とひたすら繰り返す。
さっきのは、声が高かったな。タイミングもっと早い方が子どもたちは走り出しやすかな。といった具合に。

もし、その僕の姿を誰かが見ていたら滑稽に思ったことだろう。もしくは、とうとうこいつは頭がおかしくなったかと思ったことだろう。

しかし、必死でした。子どもたちは近くで見守るお父さんお母さんにかっこいい姿を見せたいのですから。子どもだちが良いスタートを切れるように何度も練習しました。

本番がやってきました。
前日はあまり眠れませんでした。
確かに、子どもたちより緊張していました。

学校に着くと、早朝にもかかわらずお祭りムードが学校全体を包み込んでいました。

そのとき、僕はとても緊張していました。
言うなれば、部活の最後の大会。絶対に負けられない試合の開始前のような感覚。

そのとき、何かと試験の面接で部活経験が役に立つと言われたのを思い出して納得したのを覚えています。

運動会が始まりました。開会式、校長先生の言葉、子どもの宣誓の言葉と順調に進んでいき、

ついに、学年演技です。子どもたちは練習時の僕の苦痛とは裏腹に、これ以上ないほどの素晴らしい演技を見せてくれました。

あんなに辛かった学年演技も子どもたちの一挙手一投足を固唾を飲んで見守り、終わったかと思えば、涙が溢れ出してきました。

子どもたちは本当にすごい力を持っているなと感じました。

その後、3、4年生の徒競走になり、スターターとして2学年で合計100回近く、
「よーい、パン!」
を繰り返しました。

そのときのことはあまり記憶がありません。
とにかく、終わった瞬間、ほっとしたことを覚えています。

初めての充実した運動会。色々な感情が次々と押し寄せてくる。

「よかった。大成功だ。」
と思いました。

しかし、子どもたちは担任の僕を見て違和感を感じていたようなのです。
それは、運動会後の保護者からいただく評価アンケートの記述で明らかになったのです。学年演技のことについてでした。


うちの子どもが○組(僕が担任するクラス)だけ褒めてもらえないと毎日ご飯を食べながら
悲しそうに言っていました。残念です。

いまだに僕が担任した子どもたち、そしてその保護者の気持ちを思うと胸が苦しくなります。

「せっかく開催できた運動会だったのに」

これは、運動会以降、僕の一つの教訓となる出来事でした。

次回に続く

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