角野隼斗 全国ツアー2019(Inspiration from Rachmaninov)福岡公演

行ってきました。はぁ~もぅ~すごかったです。いつも画面越しで観ていたかてぃんさんが実在の人物・ピアニスト角野隼斗として目の前に立っているんだから、このドキドキ感はたまらないです。ほんとに居たんだね。

ピアノの王子様の公演とあって、女子率の高さハンパないです。男女比1対9くらいではないか?年齢層は、角野さんのおねえさん世代(爆)が中心のようですが・・・もちろん若い子たちもいます。角野さんが会場中央の通路を歩いているときに、3人組の女の子たちが元気よく両手を振っていたら、角野さんも両手を振り返してました。彼女たち大喜びです。こっちはオッサンなんで、クラシック通のテイを装って泰然と座ってましたが、心の中ではおもいっきり両手を振ってたんだよな。

19時になり公演がスタート。角野さん、入場して一礼するや無言のままいきなり地鳴りのようにダダダダダンッ(CDと一緒)を弾き始めます。その後バロック風のランランラララン…へと続きます。これが次のバッハにも繋がるんです。帰宅してヘンデルの『サラバンド』がどんな楽曲かも確認して納得感が増しました。ナウシカだけに腐海(深い)!

1回目のMCでは、演奏中以外写真撮影OKの話もされてました。角野さんのOKが出るや否や、みんな一斉にスマホやタブレットを向け始める光景がちょっと面白かった。「連写されると記者会見みたいになるんで…(ほどほどに)」という発言、めちゃくちゃウケてました。次のバッハについて、予習動画をあえてチェンバロバージョンにした意図やバッハの先見性・普遍性についてのお話などもあり。実は私、ピティナの音源で角野さんのバッハ演奏動画(演奏シーン無し)を聴いてたんですが、2006年3月、つまり角野さん10歳の時の演奏となっていて驚愕したんですね、あまりのレベルの高さに。ただ、その動画の投稿は2010年になっていたので、2006年は間違いで14歳の時の演奏なんだ(それでも凄い!)と勝手に解釈してました。プログラムのメモでやっぱり小4の時に弾いたとわかり、改めて隼斗少年は神童だったんだと再認識した次第です。小4の自分を誇ってあげてください。そして20歳過ぎてもただの人にならず、進化し続ける天才・角野隼斗の現在のバッハ、堪能しました。

幻想つながりでバッハからショパンの『幻想ポロネーズ』へと続きますが、角野さんいわくショパンで最も好きな作品とのこと。角野さんの大きな魅力のひとつにYouTubeの即興Liveがあります。リクエスト曲をほんとに「美しく」繋げていくスタイルの原点のひとつがこの『幻想ポロネーズ』だとか。そうなのか・・・やっぱり奥が深い!(2度目) ※あのライブ、ほんとに大好きで。毎回素晴らしいけど、特に前回のvol.6は「神ライブ」だと思います。何度リピったことか。現場に参加できた人がうらやましい。ライブについてはまた別に書きたい。

前半戦のハイライトが『鐘』⇒『蠍火』ですね。『鐘』はフォルテシシシモということで、ご本人より事前に音量注意警報が発令されておりました。私は比較的後ろの方の席だったんですが、会場がサロン形式ということもあり、ものすごい音圧を浴びて震えました。そこからMCなしで『蠍火』へと続きます。ここで拍手しそうになって踏みとどまりました。そう、この2曲の流れはある意味、組曲のようなもので、途中の拍手はいらないのです。そしてあの『蠍火』を目の前で弾いてもらえる幸せ。多くのファンにとって、今回の公演の目玉がこの『蠍火』の生演奏ではないかな。この曲に対する角野さんの想いは、プログラムの中にしっかりと記されています。角野さんの熱い想いとファンの願いがシンクロした瞬間でした。

さて後半戦です。ラフマニノフの『交響曲第2番・第3楽章』をピアノソロのために角野さんが編曲した作品からスタートです。本当に美しいあの交響曲が、秘めた情熱が静かにほとばしる様なピアノソロ曲に生まれ変わりました。ラフマニノフへのリスペクトと角野隼斗のオリジナリティが溢れる作品だと感じました。

次の『Unravel』について、POCKET WIZさんのことに言及されています。ヤンキーの恰好して都庁ピアノでこの曲を弾いたことで知ってくれた人が多いと体感的に感じているので思い入れが深いと。私はそれより少し前の卒業式オタクピアノドッキリでしたが、もちろんこの曲を弾く神手院さんも観ていたわけで、ご本人がコメント欄にバージョンアップして出したいと宣言されてたような記憶が…。あのころあの動画を観ていた人の中でどのくらいの人が今回の公演で約束の『Unravel』を聴くことができるか考えると胸熱ですね。壮大で幻想的な新・Unravelでした。

そしてプログラムの最後が大曲『ピアノソナタ第2番』です。リサイタルを締めくくるにふさわしいドラマチックな曲ですが、心身ともに負荷が大きくエネルギーが必要な曲だそうです。アルバム『PASSION』の中にも収録されており、2018年のピティナ特級の確か2次予選でこの曲を演奏する角野さんの動画もアップされているので、ファンにとっては馴染みのある曲ですが、改めて魂の演奏を目の前にすると感動で気持ちが揚がります。

拍手の中、再登場してアンコールで弾いてくれたのが、オリジナル曲の『After The Monochrome』です。去年、パリ留学時代に作曲したそうです。冬のパリのずっと曇ってどんよりとした白黒の風景から、たまに晴れる瞬間の街に色が戻る情景を曲にしたものです。モノクロームの前半から転調を経てカラフルな光に包まれたパリの街並が脳裏に浮かんでくるような美しい作品でした。そして拍手が鳴りやまない中で、もう1度戻ってきてくれて、人差し指を立ててゼスチャーでもう1曲と言いながらひょいとピアノの前に座り、さらりと『子犬のワルツ』を弾いてくれました。これがまた滑らかに走り抜けて去っていく感じでよかったです。

公演の後はお待ちかねのサイン会です。ロビーでCDを購入してサインの列に並びます。『PASSION』・・・2枚欲しかったけれど、残念ながらひとり1枚だそうです。列が近づいて来るにしたがって、ドキドキしてきました。いい年こいたオッサンがピアニストの青年と対面するのにこんなにときめくなんて、自分でも滑稽です。私の番になって、サインをもらいながら話しかけました。「オッサンですけどドキドキしてます。ありがとうございま。」 角野さんはちゃんとこちらを見ながら「来てくれて嬉しいです。ありがとうございました。」と返してくれました。疲れているところ申し訳なかったけど、握手もお願いしました。どうしても「神の手」に触れたくて…。角野さん、快く両手で握り返してくれました。あぁ~惚れちゃいそうだ!

以上、角野隼斗さんの福岡公演の感動を言葉に残したくて、ここまで一気に書き上げました。読み返してみると、オッサンなんであまり気持ち悪くならないように自制したつもりですが、鼻息が聞こえてきそうで少し恥ずかしくなりました。

角野さんを目の前にした印象: ほんとに居たんだね(2回目)。 天才ピアニストって知ってたけど、生演奏の迫力は別物だった。また生演奏聴きたい(来月の大宮ラフマピアコン2番行きます!)。 媒体でみてきた印象からオープンでフランク、フレンドリーな人柄だろうと思っていたが間違いない! 立ち姿はスラリと背が高くモデルの様だったが、座っていると小柄に見えた。顔が小さく、目が大きく、睫毛が長い。 そういえば、某マッチョなピアニストさんに、すごく気さくで話しやすく、そしてカワイイ、と言われてましたな。やっぱりその通りなんでしょう。

ふと見返すと3000字を超えてて、自分でもびっくりしてしまいました。自分にこんな熱量があったのかと不思議なんですが、角野さんの影響でピアノを始めて、ツイッターとノートのアカウントも作りました。やったことのないことばかりで、あまり飛ばしすぎると息切れしそうなので、ほどほどにしようと思いますが、今日は書くことが楽しかったです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。

【追記】 ひとつ書き忘れたエピソードがあります。サイン会の時、自分の直前に並んでいた妙齢の女性が、手のひらに収まりそうな小さなぬいぐるみ(何かのお守りなのかもしれません)のお腹のあたりにサインしてほしいと角野さんにお願いしていました。角野さん、にっこり微笑みながら「いいですよ」と快く引き受けていました。でも、いざサインしようとすると、小さくて柔らかい布製のお腹へのサインはとてもやりにくそうで、しばし固まったあと、真剣な表情でゆっくりと丁寧に書き込んでいました。そしてサインが完成すると満面の笑みを浮かべながら「できました!」と言ってその女性にぬいぐるみを返していました。女性の方、とっても嬉しそうに何度もお礼をしてました。微笑ましくもほっこりする場面でした。ほんとうにいいひとです。