
【資料】総務省・デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会(1月17日)
ここでは、総務省が2025年1月17日に開催した「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」(略称「諸課題検討会」)の第3回会合における審議内容の一部を文字起こしして掲載する。
諸課題検討会は「デジタル空間における情報流通に伴う様々な諸課題について、制度整備を含むその対処の在り方等を検討する」(太字:引用者)ために設置された有識者会議で、偽・誤情報問題への対処も含まれている。
諸課題検討会は「デジタル空間における情報流通の諸課題への対処に関する検討会」(略称「健全性検討会」、2024年9月4日をもって解散)を引き継ぐ形で設置された有識者会議である。
健全性検討会も諸課題検討会も、セーファーインターネット協会(SIA)・日本ファクトチェックセンター(JFC)に関係している憲法学者が中核を担っている。

1月17日の会合は公開(オンライン会議方式)で開催され、配布資料は公開されている。「参考資料3-1」として、健全性検討会の最終「とりまとめ」(昨年9月10日公表)のうち、偽・誤情報に対するコンテンツ・モデレーション(投稿取締り)を促進する制度など、憲法学者や法律家のワーキンググループ(WG)が中心になって作成した提言部分を抜粋した資料が配布されていた。

この日の会合は主に「闇バイト問題」が議題となったが、健全性検討会での提言の取り扱いも議論の対象となった。
第1回会合(2024年10月10日)で、山本龍彦慶大教授を主査とする新たな制度化WG設置が了承されていたが、まだ始動していなかったところ、今回の会合で改めて設置・始動が決まったとみられる。
会合は次のような流れで進行した。
① 事務局(総務省・情報流通適正化推進室)から「今後の検討会における検討事項案」(資料3‐1)の説明【約10分】
② 警察庁(組織犯罪対策第二課)から「闇バイト問題」の実態等(資料3‐2)についての発表【約20分】
③ ②に関する質疑応答【約30分】
④ 事務局(総務省)から「闇バイト問題」に対する総務省の取組み(資料3-3)の説明【約5分】
⑤ ④に関する質疑応答【約5分】
⑥ 事務局(総務省)から「今後の検討に当たっての論点(案)」(資料3-1)の説明【約3分】
⑦ ⑥に関する質疑応答【約30分】
ここでは、「闇バイト問題」の発表関連(②〜⑤)を除き、「今後の検討事項」に関する審議内容(①・⑥・⑦)を中心に文字起こしを掲載する。
なお、太字強調、(*)印の注釈、スライド画像引用、関連資料へのハイパーリンクは引用者による。この有識者会議の背景事情の詳細は月刊『地平』(2024年12月号〜2025年2月号)所収の拙著「ネット空間の検閲を望んでいるのは誰か」(上)〜(下)も参考にされたい。
総務省・デジタル空間における情報流通の諸問題への対処に関する検討会(第3回) (2025年1月17日午前10時〜)
宍戸常寿座長(東京大学大学院法学政治学研究科 教授・憲法学)
定刻でございますので、デジタル空間における情報流通の諸問題への対処に関する検討会の第3回会合を開催させていただきます。(以下、事務的説明につき略)
事務局
情報流通行政局、情報流通振興課情報流通的生活推進室の大滝でございます。(以下、注意事項につき略)
なお、本日の会合では、生貝構成員(*)がご欠席と承っております。それではこれ以降の議事進行は宍戸座長にお願いいたします。
(* 生貝直人・一橋大学大学院法学研究科教授が欠席し、座長を含め8名の有識者構成員が出席した。構成員の名簿はこちら)
宍戸座長
承知いたしました。それでは議事に入ります。(以下、事務的説明のため略)
事務局(*以下「スライド」は資料3-1)
事務局の方から今後の検討会における検討事項案について、説明させていただきます。次のスライドをお願いいたします。

デジタル空間における情報流通の諸課題に対する対応といたしまして、まずは昨年5月に成立した情プラ法の早期施行に向けて準備を進めてきました。
情プラ法につきましては、昨年の検討会で省令案と関連する違法情報ガイドライン案について、構成員の先生方に検討いただきまして、昨年末にパブコメにかけておりまして、引き続き早期施行に向けて粛々と対応していきたいというふうに思っております。
今後の検討といたしましては、第1回検討会の時に提示した検討会の役割の中でも記載させていただきましたが、健全性検討会における制度的対応にかかる提言を受けた深掘りをしていきたいというふうに思っております。
その際にデジタル空間における情報流通にかかる問題として様々に生じているところですが、昨年から特にSNS等を利用した闇バイトによる犯罪が、問題として立て続けに起こっておりまして、これを受けて政府としても対策強化に関する緊急対策を公表するなどしておりますので、こういった動きも踏まえながら検討をしていきたいというふうに思っております。
そして今後の検討会の大まかなスケジュールでございますが、諸外国での対応も参考にしながら検討していきたいというふうに思っておりまして、諸外国における制度的対応の動向調査を実施したいというふうに考えております。 また、プラットフォーム事業者に対するヒアリングも実施したいと思っております。
ヒアリングの内容といたしましては、昨年の12月18日に総務省より各事業者に対して闇バイト問題への対策を行なうように要請を出しておりまして、ちょっとそちらの要請の内容につきましてはこの後、詳しく説明させていただきたいと思っておりますが、その要請を受けた事業者における取り組み内容ですとか、またそれに限らず違法情報対策として現状何を行っているのかといったところについて、実態をきちんと確認していきたいというふうに思っております。
そして今年の夏頃に、こういった制度的対応の方向性の整理を行うことを目指して進めたいと考えております。次のスライドをお願いいたします。


続いてスライド2とその次のスライド3になりますが、健全性検討会における提言の深掘りをしていくにあたって、提言の内容を、概要とはなりますが、これらのスライドでまとめさせていただいております。
また、参考資料3の1でも取りまとめの内容を抜粋する形で、詳細版をつけさせていただきましたので、適宜参照いただければと思います。
こちらのスライドにおいて、提言の中の広告に関する事項につきましては、広告ワーキンググループで検討しておりますので、記載を省略しております。
広告以外の項目といたしましては大きく四つの項目がございますので、一つずつ簡単におさらいとして見ていきたいと思います。
まず、一つ目のプラットフォーム事業者による偽・誤情報への対応のあり方についてですが、さらに論点としましては、対応を検討すべき偽・誤情報の範囲をどのように考えるべきかといった点ですとか、情報の流通拡散を抑止するためのコンテンツモデレーションとして、どのようなものが考えられるかといった論点がございます。
このコンテンツモデレーションの検討に際しては、偽・誤情報の範囲に照らした比例的な対応をするのが良いのではないか、といったことが提言されております。
また、どのような主体からの申し出ですとか要請をきっかけとしたコンテンツモデレーションの実施を促進していくべきかといった点について、コンテンツモデレーションの実効性確保のための方策も論点となっております。
そして本人確認の厳格化などについて、本人確認の厳格化を含め情報の発信自体を抑止するためのその他の方策についても、論点として含まれております。
続いて大項目の2(Ⅱ)として、プラットフォームサービスが与える情報流通の健全性への影響の軽減につきまして、リスク評価といったような形でサービスが与える社会的影響を事前に予測をして、その予測結果を踏まえて軽減措置を講じるといった対応のあり方が提言されております。
特に偽・誤情報が問題となった災害発生時などにおいて、この影響予測と軽減措置を確実に実施するための制度整備についても、提言がなされているところです。次のスライドをお願いいたします。
大項目の3(Ⅲ)としましては、マルチステークホルダーによる連携・協力の枠組みの整備について提言がなされております。具体的には、連携・協力の目的をしっかり検討していくことですとか、マルチステークホルダーによる協議・決定の実効性を担保するために協議会の設置を検討すること。その協議会を設置した時に、協議会に持たせる役割ですとか権限などについても、検討することが提言されております。
最後に大項目4(Ⅳ)として、その他全体に共通してくる事項になりますが、執行手段ですとかプロセスの検討、あとは対象とする事業者の範囲の検討、そして生成AIの利用が広がっているところですので、生成AIを用いて生成される情報への対応の検討などについても、提言がなされております。次のスライドをお願いいたします。

続いてのスライドですが、本日構成員の先生方にご議論いただきたい点をまとめさせていただきました。
こちらのスライドの説明と、これに基づくディスカッションに入って行く前に、先ほど話題として出た「闇バイト問題」について、これまでの検討会の中で取り上げられてこなかったところですので、この問題の実態ですとか、これに関する政府の対策の動き、そして総務省としてどのような取り組みを考えているかにつきまして、警察庁と事務局から概要をそれぞれ説明させていただきたいと思っております。
これらの情報について先生方のご参考としていただきまして、その上でこちらのスライドの論点について再度簡単に説明させていただき、意見交換の場に入っていけたらと考えております。事務局からの説明は以上になります。
宍戸座長
(以下、「闇バイト問題」に関する発表、質疑応答(前記②〜⑤のパート)のため、略)
宍戸座長
(略)それでは実質、すでにあのなかなかに越してきているような気もいたしますけれども、議事の2の意見交換の方に移らさせていただきます。
資料3の1に戻りまして、今後の検討にあたっての論点案について、事務局よりご説明お願いいたします。
事務局(*以下「スライド」は資料3-1の5頁目「今後の検討に当たっての論点(案)」)

事務局の方から説明させていただきます。本日の回答でですね、先生方にご議論いただきたい点として大きく4つ記載させていただきました。一つずつ簡単に説明させていただきます。
まず論点1ですが、先ほど紹介した健全性検討会における制度的対応にかかる提言の深掘りにあたりまして、さまざまな項目があったところなんですけれども、どういった項目から、どういった形で深堀りをして行くべきか、という点についてぜひご議論いただければと思っております。
その検討にあたってですね、健全性検討会をとりまとめでも関連する記載がございましたが、偽・誤情報につきましては類型として権利侵害情報、違法情報、有害情報に分けられるというふうに考えておりまして、これらの類型ごとに表現の自由などとの関係で対応のあり方っていうのは異なってくるというふうに、事務局としては考えております。
権利侵害情報につきましては情プラ法である程度対応はしているところですので、今後の深掘りの中では違法情報、有害情報の類型に沿って提言の各項目のうちどういった項目について、どのように深掘りしていくべきかにつきまして、検討していくのが良いのではないかというふうに考えておりまして、先生方に議論いただければと思っております。
論点の2つ目としましては、先ほどご紹介させていただいた闇バイト問題のようにですね、デジタル空間における情報流通の課題というのは偽・誤情報に限られないというふうに考えております。そういったその他の課題について、どういった対応をするのが良いのかというところについて、どのように対応をすべきかという点について、どう考えるべきかという論点を設定させていただいております。
事務局としてはですね、対策としてある程度共通してくる部分もございますので、偽・誤情報だけでなく、闇バイト問題含む違法情報全体について対応のあり方を検討していくのが良いのではないかと、考えているところです。その際ですね、やはり闇バイトの問題のように、違法情報の流通による被害が大きいことを踏まえますと、違法情報対策についてまずは検討していくというプロセスが良いのではないかと考えているところですので、その点につきましても議論いただければと思っております。
その他3、4で記載させていただいておりますが、今後実施する予定の諸外国の動向調査ですとか事業者ヒアリングの中で、特にこういった点から確認ですとか調査すべきという事項がございましたら、ぜひご意見いただければと思っております。 以上となります。
宍戸座長
ありがとうございました。
それではただいまの事務局のご説明、それから資料3の1の内容全体につきまして、構成員の皆様からご意見、ご質問等を頂戴したいと思います。あの例にありました。チャット欄で私にお知らせいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか?
(沈黙)
上沼構成員、お願いします。
上沼紫野構成員(弁護士)
深堀りの論点に関して、違法情報についての検討から対策を進めると、1、2に関してですね、っていうのは賛成です。
おっしゃるとおりで、権利侵害情報は情プラ法の対処である程度の、要するに被害者がいるものですから対応が期待できるところではありますけれども、違法情報は被害者からの通告がないので、どうするかっていうのは必要なところかなと思っています。有害情報になってくるとなかなか、表現の自由が強く要請されるような部分なので難しいかなっていうのが…難しいからしなくていいということではないですけども、まずわかりやすいところからするべきかなというふうに思っています。
諸外国の動向調査に関して言うと、いろいろこう、諸外国の動向調査の時にぜひやっていただきたいのは、いろんな法制度の体系というかですね、要するにこう一つの法制度だけを見てもちょっとよくわからなくて、それが他の法制度と関係しているようなところがやっぱりあると思うので、非常にこう難しいことを申し上げて申し訳ないんですけど。関連の法制度をまとめていただかないとわからないかなというふうに思いました。以上二点かな。
宍戸座長
はい、ありがとうございます。 それでは山口構成員、お願いいたします。
山口真一構成員(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授・経済学)
ご説明いただきありがとうございました。 私からは三点コメントさせていただきます。
まず一点目が、資料とは直接関係がございませんが、やはり昨今のメタ並びIT事業者の動きというところ、これは無視できないことかなというふうに感じます。
メタの話は、するともう一時間以上話してしまうので、そこは置いといてですね、 ああいったことが起こったということはですね、改めて私たちに課題を突きつけたと思うんですね。つまり多くの一般市民の方たちがですね、言論コミュニケーションしているようなところで、まるで言論のインフラのようであると、道路のようにあるわけなんですけども、ただ結局、民間事業者の一サービスに過ぎないわけですよね。例えば、経営者が変わって方針が変わるとかですね、あるいは米国の政治状況が変わるとか、こういったことで環境は大きく変化するということが改めてわかったとか言うことなのかなというふうに思います。
ですので、やはりプラットフォーム事業者ともちろん連携して自主対応を求めていくっていうのはすごく大事なことなんですけども、一律の、どうしてもここ押さえなきゃいけないとかですね、こういったところはやはりやってもらいたいというところは、ある程度制度的なところも必要になってくるのかなというふうに感じましたので、今回あの件が起こる前にここでは制度についていろいろ議論してきたわけですけども、引き続きあれを受けてですね、今後の議論もまた変わる部分もあるのかなというふうに感じた次第です。
二点目はですね、この議論いいただきたい点に書いてありますところの三番目ですね。諸外国の制度整備の動向調査というところですね。こちらは御省は非常に力を入れていて、何度も何度も調査されているということは私も理解しておりますし、また、目まぐるしく各国の制度が変化していく中でですね、継続的に調査していくことは極めて重要なことだということも理解しております。
私が常に大事だと思っているのが、日本としてどうするかという視点だと思います。つまり、今は欧州も米国も全然違う対応してるわけですね。さらに言うとアジア圏も全然違います。最近なんかオーストラリアの新しい法律が話題ですけども、様々なところが様々な思惑でいろいろな制度を敷いたり対策をしていたりするというところで、日本に何が馴染むのか、どういった方向性が馴染むのかといったところですね。日本独自の事情とか文化的な要素、こういったことを考慮しなければならないと。もちろん出てきた調査結果から、そういった日本の事情を加味して制度を考えていくんだとは思うんですけども、日本の事情というところについてはですね、例えば制度のニーズとかですね、こういったものが馴染みやすいとか、そういった調査、国内においても調査があって、それを合わせて検討できるとよりエビデンスベースで決められるのかなというふうに感じました。
最後にですね、四番目をこの闇バイトに関するヒアリングをされるということで、これは極めて重要なことだというふうに感じております。
プラットフォーム事業者とコミュニケーションをしている中でも、少なくとも日本の支社に関しては、闇バイトに関しては非常に重い問題として受け止めてるなというような印象は受けております。ただ、そういった中で、先ほど私少し申し上げましたが、資料にも少し書かれていましたが、闇バイトの募集会ってどれなのかと。ていうことの判断というのは結構難しい面もあるんですよね。なので、その対策というのは結構難しいとは思うんですが、もう実はこういうことやってますとかですね、あるいはこういったこと効果ありましたみたいなところもあると思うんですよね。そういった具体的な対策とか、効果というものをうまく抽出して、さらに言うと課題なんですけども、その中でベストプラクティスが出てきたらですね、それをぜひ各社にこうやってもらうとか、そういったような、まずはどういった対策が有効かっていうところをしっかりと把握できるといいなというふうに思いました。
もちろん今どんなことやっていて、どんな問題が発生しているという実態も把握できると。把握した上で話かなというふうに思います。私から以上です。
宍戸座長
はい、ありがとうございました。山口構成員おっしゃった二点目は、上沼構成員のおっしゃった二点目とも密接に関連する論点だなというふうに思いました。ありがとうございます。
では増田構成員お願いいたします。
増田悦子構成員(公益社団法人全国消費生活相談員協会 理事長)
ありがとうございます。私からは情プラ法では対応困難な事案として、闇バイト以外においても財産被害というものは発生しているという状況を踏まえまして、例えば投資詐欺であったり国際ロマンス詐欺なども同じなんですけれども、そうしたことに対する……最初の段階ではなかなかそれが問題であるということが、プラットフォーム事業者においても判断が難しいというふうに思いますので、そこに入り込んでしまった人や気がついた人からの通報窓口であったり、被害に遭いそうな状況であるということを伝える窓口をですね、もっとアピールしていただく、設置義務とともにですね、アピールしていただく必要があるのかなと。それと同時に、そういうことが問題であるということを、一般の方にも周知していただく必要があると思います。
それと同時にですね、商品とかサービスに関する問題っていうのもありますので、やはり問題のある商品とかサービスなどに関わってしまうきっかけとなっている広告であったり、ユーチューブはユーチューバーの方の動画だったりというものについての問題意識を、もっと一般の方に理解していただくのと、それからそこから通報していただくと、その窓口の周知ということが非常に重要ではないかというふうに考えております。
宍戸座長
ありがとうございます。 それでは続きまして、曽我部構成員お願いいたします。
曽我部真裕構成員(京都大学大学院法学研究科教授)
ありがとうございます。曽我部です。
闇バイト問題をはじめとする違法情報のに対する対策をまずは進めてはどうかというご提案なんですけれども、こちら構成員の皆様方がそういうことで同意されるということであれば、別に、特に大勢に異を唱えることでもないんですが、私は若干違和感があってですね、特にここに書いてある違法情報の流通に被害が大きいことを踏まえ、というのは、被害があるから違法になっているのであってですね、そういうことを言うと、有害情報よりも違法情報対策が常に優先することになりかねないわけです。
健全性検討会におきましては、これは先ほど山口構成員からも直近の状況を絡めてですね、お話ありましたけれども、偽情報の問題であったりですね、そういったところについてようやくですね、踏み込んだ議論ができたと、これは山本先生のご尽力、宍戸先生のご尽力もあったところですけれども、そこでかなり踏み込んだ提言がなされたわけです。
その後、先ほど山口構成員からご言及があったメタの問題であったりですね、あるいは日本国内の選挙にまつわる様々な問題が生じている中で、また違法情報の流通の、ずっと以前からですね、総務省等で議論してきたことですので、そういう意味では若干後戻り感が見える、感じるところであるわけです。
ですので、今回当面、闇バイト問題、違法情報の問題を検討されることは、そのご方針であればそれはそうだとは思うんですけれども、やはり健全性検討会の成果をですね、無駄にしないような、今後の進め方というのが求められるのではないかというふうに思います。
もう一つ、諸外国調査に関して申し上げたいんですけれども、私も以前から申し上げているところですが、制度そのものもさることながら、各国当局がどのような体制でどのように情報収集、分析をし、法律を執行しているのか、あるいは、集めた情報とか知見に基づいて新たな対策を検討したりしているのかとかですね、そういったところを、つまり、法執行にまつわる実情といいますか、実態といいますか、そういったところにもですね、関心を持っていただくというか、調査していただくと非常に有益なのではないかなと思います。以上です。
宍戸座長
ありがとうございました。 森構成員お願いいたします。
森亮二構成員(弁護士)
私からも三点ばかり申し上げようと思ってまして、一つは繰り返しになるんですけども、先ほどの犯罪実行者募集情報ですね。これ問題はどこにあるのかというと、先ほど山口先生の話もありましたが、本当に犯罪者募集情報なのかどうかわからないということです。そうなわけですけれども、なので違法化するのは難しいっていうのはよくわかるんですが、実際の対応としてはですね、先ほど警察庁さんのご説明にありました、四ページのようなですね、この発信者は犯罪者かもしれませんよという警察のリプライがつくということになるわけです。 もし犯罪実行者募集集情報かわからないんだったら、そんなことしていいのかという話に当然なるわけです。
よくわからないけれども問題の解決のためには一定の対応が必要だと、これはやはり国民的議論をしてですね、しっかり法制化しないと、事実上、本当は犯罪者募集かどうかわからないけれども、問題が重大だから事実上の処理で済ますというのは、私は話としては逆だと思ってまして、難しい問題であるからこそ法制度化しないとできないんじゃないか。逆に言いますと、何か本件とは違う、事実上問題の大きい情報というのが出てきた時にですね、法律はないけれど、あるいはたまたまある職安法のようなですね、ちょっと違う法律があるけれども、そこは別件逮捕で片づけてしまうということは、本来の道から外れてるんじゃないかというふうに思います。それが一点目です。
もう一つ、海外の法制度調査のところですけど、これにつきましては、私はできればですね、いろんなところで問題になっている本人確認ですね、利用者の本人確認について海外でどのようにされているのかというのを、古いものは拝見したことがあるんですけど、アップデートをしていただければというふうに思っております。
それから三点目に、犯罪利用との関係で本人確認とともにログをどうするか、ということが議論されてきているように思います。今日のご説明にはなかったんですけれども、いろんなところでログの保存の問題を伺うような気がしておりまして、特にSNSへの投稿のログですね。それにつきましては保存期間というものが一定程度決まっております。これはどう決まっているのかというと、一定の期間保存しなければいけないということではなくてですね、長期間にあたって保存することは通信の秘密との関係から問題であるというふうにされています。
これについてもですね、私はあの現状の通信の秘密との関係で、過度に長期間保存することは漏洩等の問題が発生するから良くないという考え方が、基本的には妥当すると思っておりますけれども、この問題との関係でログの保存を仮に保存期間を考える、見直すというようなことになるのだとすれば、それは通信の秘密の観点から、しっかりした検討が必要ではないかというふうに思っております。以上です。
宍戸座長
森先生ありがとうございました。それでは大谷構成員、お願いいたします。
大谷和子構成員(日本総合研究所法務部長)
まず、私自身が健全性の検討のところについて詳しくないので、すでに調査が行われているということであれば、そのようにご指摘いただければと思っているんですけれども。
このような違法情報の一般の利用者が探知した場合に、例えばそのコンテンツを報告するとかポストを報告するというような仕組みがあって、それがどのように利用されていて、その報告があったものにSNS事業者からどのように対応しているかといようなことについての実態調査というのが行われているかどうか、それについて確認したいと思っておりまして。
ヒアリングの際に、例えばこの一年間で行われた違法情報らしきもののポストの報告などに対しての対応実績などを開示していただき、実情を発揮していくということは、少なくとも必要な事項になるのではないかなと思っております。
偽情報や誤情報に対するコンテンツモデレーションの実態であるとか、その体制などについては、これまでもヒアリングの機会を多数設けてきておりますけれども、違法情報ということについて日本の法律をどのように理解して、何を違法というふうに判断してきたかという枠組みを含めて、ヒアリングを実施させていただくことが望ましいかと思っております。コメント以上でございます。
宍戸座長
ありがとうございました。ご発言のご希望について、一通り伺いましたけれども、さらに他の構成員のご発言を踏まえてということで、何かございますでしょうか。
少し、場つなぎ的に、構成員の皆様からいただいたご意見を少し整理しながら申し上げたいというふうに思います。
第一に、アジェンダ、今示していただいている事務局の論点案の1、2と共通して、関連するところでございますけれども、違法情報の問題ですね。ある違法情報の発信・流通に対する対策っていうのが、闇バイト問題に見られますように、これは非常に喫緊の課題であり、それについて加速して取り上げていくべきだということについては、概ねご意見の一致があったように思います。
思いますが、同時に、健全性検討会でこれまで議論してきた偽情報、誤情報対策全体についてどう考えていくかということです。この問題については、制度的な対応に関する提言を前回の健全性検討会のワーキンググループ、山本主査からいただいた整理をしっかり深掘りしていくべきでないかという曽我部構成員のご指摘には、私も同感でございます。
とりわけですね、山口構成員からご指摘のありましたように、非常に短い期間で、健全性検討会の報告書が出たのちも、プラットフォーム事業者の方々をめぐる環境、その結果としてデジタル空間における情報流通のあり方の環境が非常に変わってきておりますので、そのことを踏まえて、違法情報にとどまらずしっかり制度的な検討については深掘りをしていくということは、当然必要なことというふうに思っております。
そのことはこの後の進め方ということで、山本構成員、いやな予感がされていると思いますけれども、制度ワーキンググループに私からお願いしたいいうふうに思っております。
それからですね、3の諸外国の制度整備の動向調査についても、非常に重要なご指摘がいくつかございました。
一つは、上沼構成員からご指摘ありましたように、わかりやすくDSAとかなんとかいうふうな、部分部分っていうか切り取るような話ではなくて、全体ですよね、例えば、もしかすると民事訴訟、日本にいえば民事訴訟法的な話であったり、刑事訴訟法的な話であったり、といったようなことも含めた全体的な調査、全体の文脈というのがわからないといけないのではないかということがございましたし、曽我部構成員からご指摘ありましたが、現実の法執行の体制や運用とその結果から出てくる制度の見直しといったようなプロセスですね、ガバナンス全体についてもなかなかこれ把握するのは、あの文研文系調査となど難しいところもありますけれども、あの把握していただくということがまあ必要であるだろうというのをご指摘の通りだと思います。
また、個別のご指摘といたしましては、森構成員から本人確認の必要、本人確認はSNS事業者などがどうしているのかということについてのバージョンアップがやはり必要なのではないかというご指摘もございました。これらを取り込んで調査を設定していただければというふうに思います。あわせまして、ここでは3で得られた成果と1、2の部分の突き合わせということになりますけれども、山口構成員おっしゃいましたように、やっぱり日本の実態の調査、まさにこの検討会でヒアリングなどを通じて行なっている部分というのがあると思いますけれども、それと中から諸外国の制度整備と、その中から日本の現状あるいは文化、あるいはサービスの環境と、いろいろなこととどういうふうに突き合わせて制度について検討するかと、これも制度ワーキンググループにおいてもご検討いただく点かと思いますけれども、これも重要なご指摘というふうに受け止めたところでございます。
それから四点目のですね、SNS事業者の方々に対するヒアリングということで、総務省からなされたお願いについてのフォローアップでございますけれども、同時にですね、諸外国ではこういった問題にどういうふうに対応されているのかと、一方では反面調査みたいな感じになりますけれども、一方では外国の制度整備、先ほど言った制度運用に関する調査をするのに、一方で事業者の方々ご自身についても、諸外国ではどういうふうに対応されているんですか、EU法圏ではどう対応されているのか、アメリカではそういうこと問題にならないんですか、かみたいなことをですね、両面から聞くことによってクリアな全体像が描けるというふうに思いますので、この点はヒアリングにおいて特に重視することかなというふうに思います。
最後に、森構成員からですね、通信ログの保存について通信の秘密との関係で慎重な、専門的なご検討が必要ではないかというご指摘ありました。これについても私も同感でございます。
一通り構成員の皆様から頂いたご指摘をさらいつつですね、最後にもう一点申し上げれば、広い意味での全体に関わるお話といたしまして増田構成員からいただきました、デジタル空間における財産的な被害を受ける消費者の保護についてのプロアクティブな対応を、事業者にあるいは、これは民間全体あるいは官民全体に求めるご指摘もございました。
これも関連する省庁も多いかと思いますけれども、この場での重要なご指摘かと思いますので、その取り扱いもですね、私、事務局の方で考えさせていただければ、というふうに思っております。
ひとまず構成員の皆様からいただいたご意見を私なりに整理しながら申し上げましたが、例によってお前は歪曲しているぞとかですね、色々あるかもしれませんし、追いつかれたこともさらにあろうかと思います。
まだ若干時間ございますので、さらに自由にご発言があれば承りたいのですが、いかがでございましょうか。(沈黙)
山本構成員お願いいたします。
山本龍彦構成員(慶應義塾大学大学院法務研究科教授)
非常に嫌な予感がしているというところなんですけれども、今、宍戸座長がおっしゃったことに本当に尽きるなというふうに思っておりますけれども、いくつかコメントさせていただければ。
さっき曽我部構成員からお話があったように、有害情報を含むですね、そういった問題についてしっかり今後はしっかり検討していく必要があるのではないかなというふうに感じました。とはいえ、まず優先度合いをつけなければいけないところでいえば、違法情報から議論始めるということについては私も賛同いたします。
繰り返しになりますけど、これは有害情報について完全に射程から切り離したということではおそらくなくて、いわゆる若者の依存症の問題であるとか、メンタルヘルスの問題なんていうのも海外では指摘されるところだと思いますので、今回、優先的に違法情報からやるとしてもですね、法令違反情報じゃなければ逆に何やってもいいかということでは必ずしもないのではないかというところで、いろいろ議論を深めていただければ、今後はいけないのかなというふうに思いました。
二点目ですけれども、やはり今後は法令違反情報については対応義務のようなものを法的に求めるということも検討の余地があるかなと思いますけれども、その場合やはり権利侵害情報に比べて濫用のリスクというのが高くなるように思いますので、そういった濫用、検閲的な運用にならないような、透明性の規律ですとか、そういったこともしっかり合わせて検討していかなければいけないのではないかな、というふうに感じました。
最後、これも曽我部先生、大谷先生、宍戸先生からご指摘あった、海外調査のところでもやはりエンフォースメントの実態ですとか、あるいはその効果とか、あるいはそのリアクションみたいなこともあわせて調査をされると、我々としては非常に議論しやすくなってくるかなというふうに感じました。さしあたりありがとうございます。
宍戸座長
ありがとうございます。一点目、三点目はですね、(…聴き取り困難…)山本先生がひきとっていただけるということで、大変私としては安心を致しました。
二点目のお話は、まさに森構成員が繰り返しご指摘されているように、違法情報として、多分プラットフォーム事業者SNS事業者の方々に違法情報の媒介ないし流通に関する法的な義務を課すと言った場合に、これがあの有名な成原教授のおっしゃりようで言いますと、媒介者を通じた検閲にならないようにするためには、少なくともやはり何が媒介してはならない違法情報なのかということ自体、これにおいて明確に提示されていなければ、事業者でも何もできないので、そこについて必要であるというのはですね、やはり媒介の側から議論して、この場においても重要な視点ということで、これは政府全体において必ず共有していただいて、意識していただく課題かなということを改めて申し上げたいと思います。
それでは上沼構成員お願いいたします。
上沼構成員
1のですね、深掘りの話で違法情報からっていうふうに申し上げたんですけど、有害情報にたぶん分離されるのかもしれませんが、緊急性の高い、例えば震災時の流言みたいなやつは、今のうちに検討しておかないとその時じゃとても検討できないという意味で。あと場合によっては生命、身体に影響するということなので、その点は少し重点ポイントが上がるんじゃないかと言おうと思って、忘れました。
すいません。追加です。以上です。
宍戸座長
ありがとうございました。 この手はあの先ほど曽我部構成員がおっしゃられたのとやっぱり重なりますよね。
上沼構成員
曽我部先生の聞いて思い出したっていう、はい。
宍戸座長
災害時、それからやはり例えば選挙運動期間中の問題とかをどう考えるかいうのはずっと、健全性検討会でも議論のあった点でございますので、これについては引き続きこの場で議論していくのは当然のことかと思っております。
さらにご意見、あるいはご質問いかがでございましょうか。(沈黙)
今日のところはよろしゅうございますでしょうか。(沈黙)
それではそういたしますとなんとなく、座長の責任を果たそうともこれから思うのでありますけれども、まず本日いただいた意見を踏まえまして、ここでお示しをしている「今後の検討にあたっての論点案」はいわばバージョンアップする、この紙それ自体をバージョンアップするということになるのか、まあなるんだろうと思うんですが、まずそれだけでなく実際の回し方ということについても、本日いただいたご指摘を踏まえて進めていくということにしたいと思います。
この点については、事務局と私の方で相談をして、おそらくは次回研究会において、今後の検討にあたって論点はこうですよということで実際に一致していくということになろうかと思います。
また、このうちということですけれども、とりわけ1のあたりでございますが、これについてはですね、制度的対応にかかる提言ですね、健全性検討会における提言を控えた深掘りについて、制度ワーキングループでしっかり進めていただくいうことをお願いしたいと思います。
そのように進めさせていただくということで、構成員の皆様、よろしゅうございますでしょうか。
(他の構成員から「賛成です」の声)
ありがとうございます。チャット欄でもご異議なしといただいています。
あわせまして、私からご提案でございますけれども、先ほど森先生からもご指摘ありましたように、電気通信事業者が保有する通信履歴の問題でございます。
この点ですね、電気推進事業者の保有する通信履歴が操作、あるいは情報流通プラットフォーム対処法における発信者情報開示請求に対する対応の前提となるということは、構成員の皆様よくご承知の通りでございます。
この点、これまた森先生からご指摘ありましたけれども、この通信履歴の保存期間の問題はどのように考えるかということは、一方では操作、あるいは事業上の必要等々ですね、さまざまな保存が必要である、保存の必要性と、他方で通信の秘密それから個人情報の保護とのバランスの観点から、これまで は電気通信事業における個人情報保護ガイドラインの中で、この通信機関の保存、通信履歴の保存期間について定めがあり、また解説も書かれ、これを踏まえて電気通信事業者の皆様において保存期間を設定し運用されているところでございます。
このような観点からいたしますと、通信履歴の保存のあり方につきましては、先ほど申し上げましたけれどもガイドライン、さらにその根っこになっております電気通信事業法上の通信の秘密のあり方に関わります。
この問題については、例えばこの場でやるっっていうのも一つの考え方なのかもしれませんけれども、総務省で、利用環境課の方で、ICTサービスの利用環境の整備に関する研究会を別途持っており、この場の構成員の方々の何人かはその研究会あるいはワーキングループにお関りいただいているわけでございますし、何よりも私、両方巻き込まれているわけでございますけれども、今申し上げましたICTサービス利用環境整備研究会の方で、この通信履歴の保存のあり方について、繰り返しになりますが通信の秘密等々の関係で専門的なご検討をいただくと、なんかこう私から私みたいな感じで、座長の上だけ見るとそうなるわけですが、そちらの検討会で検討を進めていただくと、そしてその後、デジタル空間の諸課題への対処を検討しているこの場においても、その専門的な検討の成果を踏まえて、改めてさらに議論をしていくという段取りを踏みたいというふうに考えました。
この点、構成員の皆様、いかがでございましょうか。
(他の構成員から「賛成です」の声)
ありがとうございます。ご異議ないということでございますので、そのように進めさせていただきます。
なお、先ほど申し上げましたICTサービスの利用環境整備に関する研究会の方では、闇バイト問題に関連して携帯電話契約時の本人確認のあり方等についても検討が進められる予定だというふうに承知をしています。そういう意味で両方に関わっておられる構成員の方々には、それぞれの観点から検討、ご議論に参加していただくということになりますが、よろしくお願いいたします。
本日予定した議事は以上でございますが、何か改めましてご質問ご発言等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
では最後に事務局より連絡事項があればお願いをいたします。
事務局
次回会合につきましては、別途事務局からご案内させていただきます。事務局からは以上です。
宍戸座長
これにて本日の記事の議事はすべて終了となります。以上をもちまして、デジタル空間における情報流通の諸課題の対処に関する検討会第3回会合を終了とさせていただきます。皆様お忙しいところご出席いただき、また闊達にご議論いただきまして、誠にありがとうございました。
これにて閉会といたします。
(この先、新たな情報はありません。筆者の取材執筆活動をサポートいただける方は、有料登録にてお願いいたします。)
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?