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【記録】福岡資麿・厚生労働大臣 定例記者会見Q&A


1月7日(火)記者会見

(注)質問事項は事前通告した。

筆者 昨年11月29日に感染症法の施行規則で5類感染症について改正した件についてお尋ねします。
 この改正では、新たに5類に位置付けることになった既知の感染症はいわゆる「風邪症候群」、これは日本呼吸器学会の正式名称ですが、これに含まれる感染症であると考えられます。
 この他に、新たに5類に位置付けられた既知の感染症があるのであれば、具体的にどういうものなのか教えてください。
 また、関連してまとめてお尋ねしますが、国立感染症研究所のホームページには、風邪のコロナウイルスは特に危険な病原体ではないため、感染症法上の位置付けがないと従来説明してきました。
 今回、感染症法の施行規則改正によって位置付けられるわけですが、5類感染症は、季節性インフルエンザや麻しん等と「同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるもの」と定められ、「発生・蔓延を防止すべき感染症」という位置付けだったはずです。
 厚生労働省は、風邪症候群についての危険性、病原性の認識を今回変更したのでしょうか。変更したのであれば、その根拠も教えてください。

大臣 現在、感染症法に基づく届出及び報告が求められている感染症は、既知の感染症です。
 今回、いち早く呼吸器感染症の流行の動向を把握するため、また、未知の新たな病原体等による感染症の発生を覚知するために、5類感染症に急性呼吸器感染症、ARIを位置付けたところ、急性呼吸気感染症は、急性の上気道炎、鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、咽頭炎、喉頭炎、あるいは下気道炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎を指す病原体による症候群の総称であり、これにはインフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス、咽頭結膜熱、A郡溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナなどが含まれうるということです。
 それ以外にも、肺炎球菌等の細菌性の肺炎や、肺非結核性抗酸菌症、肺真菌症等も含まれうると考えています。
 今回の急性呼吸器感染症、ARIを5類感染症に位置付ける見直しについては、発生動向を早期に把握し、データ収集を積み重ね、いち早く未知の新たな病原体等による感染症の発生を覚知し、治療法や対処法の開発に繋げることを目的とするものです。
 ご指摘の、国立感染症研究所ホームページにおいては、感染症法に基づく実験室内で病原体を取り扱う際の考え方について、風邪のウイルスは「特に危険な病原体ではない」とされているものであり、急性呼吸器感染症の危険性についての指摘ではありません。いわゆる実験室内での考え方と、そもそもの急性呼吸器感染症の危険性の表記ということです。

筆者 すでに5類に位置付けられている感染症は、今回何の変更もないはずです。
 そのため、大臣がいくつか挙げられた感染症というものは、すでに5類に位置付けられているものですので、今回の改正とは何の関係もない話であり、今回の改正によって、今まで位置付けられていなかったものが、新たに位置付けられたわけです。
 この位置付けられていなかったものというのは、武見前大臣の時は、風邪コロナウイルスであることは一例として例示されていました。
 他に何かあるのでしょうか。
 位置付けられていなかったものが、今回新たに位置付けられるものとして、他に何かあるのでしょうかということが質問だったのですが、先ほどの答弁では、どれが新たに位置付けられたものなのかが少しはっきりしなかったので、もう一度教えてください。

大臣 先ほども申しましたように、例えばARIの中で、インフルエンザ、新型コロナウイルス、RSウイルス、咽頭結膜熱、A郡溶血性レンサ球菌咽頭炎、ヘルパンギーナなどが含まれうるということですし、例えば、それ以外でということで言えば、肺炎球菌等の細菌性の肺炎や、肺非結核性抗酸菌症、肺真菌症等が含まれうると考えているということです。

筆者 その中に「風邪症候群」も含まれると、前大臣の時からも認識しています。
 風邪が含まれるということは、厚生労働省もパブリックコメントでも明記されていますし、そこを否定することはできないはずです。
 今回の答弁でも一切そのことをおっしゃらない。
 発熱の有無も問わずに、今回位置付けがなされたはずですので、本当に鼻水が出ている、熱は出ていないが喉が痛い、それも今回の定義に全部当てはまるはずです。全部サーベイランスの対象になるはずです。
 そのため、そういったものが今回5類に位置付けられたということは、今まで熱を伴わない鼻水や喉の痛みも、5類感染症と同じレベルの危険性があると認識を変更したのでしょうかとお尋ねしています。

大臣 目的といたしましては、未知の新たな病原体等による感染症の発生を覚知するために、今回幅広く、そういったものを対象にしたということです。
 その中で、今おっしゃったように、現場の運用等については支障がないような形で運営していく。
 しっかり報告はしていただきますが、現場の運営に支障がないような形で行っていくということを、今後、現場とも調整上、行っていきたいと考えています。

1月10日(金)記者会見

(注)質問事項は事前通告した。「記者A」は他社の記者であるが、筆者の質問と関連していたため、掲載した。

記者A 感染症について伺います。中国を中心に感染が拡がっているヒトメタニューモウイルスや、米国で初の死者が確認された鳥インフルエンザについて国民の関心が高まっています。
 政府として取り組む対策があれば教えてください。
 また国民への呼びかけがあれば、合わせてお願いします。

大臣 ヒトメタニューモウイルス感染症は、咳、発熱、鼻汁等のいわゆる風邪症状を示すウイルス感染症の1つであり、従来から日本においても感染が報告されている感染症です。
 ご指摘の通り、現在、中国を中心に感染が拡がっていると報道されていますが、WHOからは、この時期の流行は予想されるものであり、異常ではないとの発表があったものと承知しています。
 このため、このウイルスの中国における流行により、直ちに特別な対応が必要な状況であるとは考えていませんが、国民の皆様におかれては、インフルエンザ等の感染拡大も見られる中ですので、手指衛生や咳エチケットといった基本的な感染防止対策の実施について、改めてお願いさせていただきたいと考えています。
 なお、本年4月から、急性呼吸器感染症を5類に位置付けることにしていますが、この見直しにより、こうした病原体の発生動向の把握・分析ができるよう調整しているところです。
 また、鳥インフルエンザについてですが、1月6日に、米国で初めての鳥インフルエンザの患者の死亡が公表されたと承知しています。
 米国CDCからは、一般市民への公衆衛生上のリスクは低いと判断していること、ヒトからヒトへの感染は確認されていないこと、ヒトの感染リスクを高めるウイルス変異は確認されていないことが指摘されています。
 引き続き、国内外の発生動向を注視するとともに、各国と連携しながら、情報収集に努めてまいりたいと考えています。

筆者 ヒトメタニューモウイルスのニュースが出ました。
 このように、普通の風邪であっても、耳慣れない名前を聞くと人々は恐怖を感じ、社会に影響を与えることが如実に現れた事例かと思います。
 風邪には200種類以上の原因ウイルスがあり、5類移行の影響が懸念されます。
 そこで改めて、今、大臣も少しおっしゃいましたが、ヒトメタニューモウイルスは感染症法上の位置付けがこれまであったのかどうか、今後これを5類に格上げするのかどうか、その根拠も教えてください。
 併せて、従来知られていた4種類の風邪コロナウイルスも変更の対象になるのかどうか、国立感染症研究所には、実験室内の取扱いの話ではなく、「生涯に渡って何度も感染するが、軽い症状しか引き起こさないため、問題になることはない」と明記されています。
 5類移行によって、厚労省はこの見解を変更することになるのかどうかも含めて教えてください。

大臣 ヒトメタニューモウイルスによる感染症は、いわゆる風邪症状を示す感染症であり、現行の感染症法には規定されていない感染症ですが、これまで日本でも感染は見られた疾患です。
 今般、急性呼吸器感染症を5類感染症に位置付けることとしたところであり、これにより、ヒトメタニューモウイルス感染症により、急性の上気道炎あるいは下気道炎の症状がある患者については、急性呼吸器感染症、ARIとしての報告対象となります。
 また、一部の患者から採取する検体の分析により、ヒトメタニューモウイルスなどの病原体の発生動向の把握・分析ができるようにする方向で、今、検討が進められているところです。
 風邪ウイルスについてのご指摘については、5類感染症とは、すでに知られている感染性の疾病であって、現在、その中でも、例えば感染性胃腸炎や手足口病等が分類されていますが、国民の健康に影響を与える恐れがあるものであり、その感染力及び罹患した場合の重篤性などについては様々であるものと承知しています。
 今般、急性呼吸器感染症を5類感染症に位置付けることにより、こうした流行しやすい急性呼吸器感染症の流行の動向を把握すること、仮に、未知の呼吸器感染症が発生し増加し始めた場合には、迅速に探知することが可能となるよう、平時からサーベイランスの対象とすることを可能とすることとしたところであり、風邪のウイルスによる感染症についての見解を変更するものではありません。

筆者 手足口病はすでに5類になっているということかと思います。
 ただ、ヒトメタニューモウイルスや風邪のコロナウイルス、その他諸々の、たくさんある風邪の原因ウイルスについては、これまで位置付けがなかったと思います。
 今回、5類に移行するということは、これの病原性や危険性の評価を変えないと、5類という法的な位置付けはできないのではないでしょうか。
 それについての、改めて、厚労省の位置付け変更についての根拠を教えてください。

大臣 ヒトメタニューモウイルス感染症や、また、これまでの他のコロナウイルス等を5類にするということではなく、こういった症状に起因して、先ほども申しましたように、上気道炎もしくは下気道炎、こういった症状がある方については、ARIとして報告の対象とするということであり、病気自体の位置付けを変えるものではないということです。

1月14日(火)記者会見

(注)質問事項は事前通告した。

筆者 厚生労働省は、昨年のパブリックコメントで5類感染症に「風邪」を含むことは明確に認めているかと思います。
 改めて、この4月から、日本呼吸器学会の正式名称である「かぜ症候群」に当てはまるような感染症は、全て5類に格上げすると同時に、「特定感染症予防指針」の対象にも位置付けて、発生の予防・蔓延防止の対象とする予定であるということで間違いないのか、改めて明確に教えてください。
 そして、これら「かぜ症候群」に当てはまる感染症の病原性に対する評価を変えたのかどうか、これも改めて教えてください。
 また、今後は普通の「風邪」とは言わずに、様々な耳慣れない病原体の名前がついた感染症の動向が発表されたり、報道されたりすることになる可能性があります。
 ヒトメタニューモウイルスを巡る誤報に見られるように、社会に不安や混乱を与える恐れがあると考えられないでしょうか。この点についてお聞かせください。

大臣 今般、いわゆる「かぜ」の症状も含まれる急性呼吸器感染症を5類感染症に位置付け、さらに特定感染症予防指針の対象としたところです。
 5類感染症とは、国民の健康に影響を与える恐れがあるものであり、発生動向の調査を行い、その結果に基づき必要な情報を国民一般や医療関係者に提供・公開し、発生・まん延を防止する必要がある感染症としています。
 したがって、ご指摘がありましたが、病原性に対する評価を変更しなくても、発生・まん延を防止する必要性等を考慮して、5類感染症に位置付けることは可能だと考えています。
 その上で、今般、「かぜ症候群」を含む急性呼吸器感染症を5類感染症に位置付けたのは、将来的なパンデミックに備えて、流行しやすい急性呼吸器感染症の流行の動向を早期に把握すること、仮に未知の呼吸器感染症が発生し増加し始めた場合に、迅速に探知することが可能となるよう、平時からサーベイランスの対象とすることを目的としたものです。
 なお、追加でおっしゃったように、なかなか聞き慣れない言葉によって不安や混乱を与えるのではないかといったご指摘についてですが、一般的に言えば、感染症に関する知識は、わかりやすく周知し、国民に正しくリスクや対応についてご理解いただくことが重要だと考えており、引き続き、SNSや厚生労働省のホームページを活用して、混乱がないように理解促進に努めていきたいと考えています。

1月17日(金)記者会見

(注)質問事項は事前通告した。

筆者 今回の厚生労働省の感染症施行規則改正について、改めて確認します。こちらの5類位置付けについてこれまで質問させていただきましたが、特定感染症予防指針というものについて確認します。

これまで、こちらの予防指針は、従来、結核や性感染症などを対象に作成され、急性呼吸器感染症については、唯一インフルエンザだけが作られていたと承知しています。今回、インフルエンザ以外の「かぜ」を含むARI全般に拡大したのはなぜなのか教えてください。

これに関連して、コロナ禍が始まり6年目に入っていますが、医療機関や高齢者施設などで「人権侵害」の一種と捉えられる「面会制限」の問題が未だ続いています。この特定感染症予防指針の対象を「かぜ症候群」など、ARI全体に拡大することによって、施設管理者があらゆるARIの流行情報に反応するようになり、「面会制限」の問題に影響するのではないでしょうか。

また、就労制限や登校制限などが拡大する可能性もないとは言い切れないと思います。これは文部科学省の所管だと思いますので、それが影響がないと言い切れるのかどうか、大臣の所見をお聞かせください。

大臣 「特定感染症予防指針」とは、特に総合的に予防のための施策を推進する必要がある感染症について、その原因の究明、発生の予防及びまん延の防止、医療の提供など、当該感染症に応じた総合的な推進を図るための指針です。

特定感染症予防指針は、特定の感染症についてそれぞれ策定されており、急性呼吸器感染症については、現在、インフルエンザのみであったところです。そういった意味では、コロナなども入っていなかったということです。感染動向の把握に加えて、感染症に関する正確な知識の普及を図り、適切な感染症対策の推進につなげるため、先ほど申し上げた、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザも含む急性呼吸器感染症に関する包括的な特定感染症予防指針を策定することが、昨年の感染症部会において了承されたところです。

こうしたことも踏まえながら、今後、感染症部会において、今般の感染症施行規則の見直しを受けた、特定感染症予防指針の具体的な内容について議論をしていくこととなります。

急性呼吸器感染症サーベイランスの実施や、「急性呼吸器感染症に関する特定感染症予防指針」の策定は、感染動向の把握等、適切な感染症対策の推進につなげていくことを目的としており、再三申し上げていますが、医療機関や高齢者施設等の面会制限への影響はないと考えています。

しかしながら、今おっしゃったように、他省庁の所管の部分もあるではないかというお話しもありました。わかりすく周知するために、Q&Aを厚労省HPに掲載するなど丁寧にご説明するほか、ご指摘のあった文部科学省を含む関係省庁としっかりと連携していきたいと考えています。


(関連の記者会見録)


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