カーボンニュートラルと海事業界の未来について考えてみませんか?
「おぼろげながら、浮かんできたんです。46という数字が」
SNSをやられている方なら一度は聞いたことがあるこのセリフ。2021年の小泉元環境大臣がテレビのインタビューで答えたらしい。
この言葉を面白おかしく聞いていた方は多いことでしょう。でも製造業としては冗談では終われない。発言の真偽は定かではないが心中穏やかではいられない。
日本政府は2030年度の温室効果ガス削減を2013年比「26%」から「46%」に大幅に引き上げるという宣言を行いました。20%も引き上げるのに何か根拠はあるのか?と誰しも思ったことである。
役人の方々が帳尻を合わせていくのだろうということが容易に想像される。
鉄鋼や化学工業は重厚長大な産業であることからCO2排出量は必然的に多くカーボンニュートラルを達成しようという空気の中で肩身が狭い思いをしております。
多くの企業がサステナビリティレポートを発行しており、その中に温室効果ガスの削減量を報告して環境への取り組みをアピールしている。斜に構えていた若手時代にはプラントを止めてCO2削減に寄与したなんて酷くないか?と文句を言ったことを覚えています。
時代は大きく変化しました。大量生産・大量消費は終焉を迎え、隣の中国や韓国に追い抜かれていく産業も年々増えております。
VUCAの時代に取り残されないために変わる必要がある。誰もが思っていることではあるが企業単位になると腰が重いのでなかなか動かない。
残存者利益を狙いチキンレースをしているうちに両社潰れしまう。笑えない話だがJTCならやりかねないことである。
もじもじしているうちに需要は落ち込み各社の稼働率も下がっている。まさに製造業の生き残りをかけた闘いが始まりました。「聖域なき構造改革」を令和の時代にも行う必要があります。
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カーボンニュートラルは今やどこでも耳にする言葉である。
海運業界もまた削減を強く求められている業種であるので今治でカーボンニュートラルに関するSUNABACOイベントが開催されるのは必然だったのである。
7月22日(月)に行われた今治のトークイベント。豪華な来賓が多くいらっしゃいました。
モザンビーク共和国運輸通信大臣のマテウス・マガラ大臣、日本植物燃料株式会社の代表取締役である合田真氏、伊藤忠商事株式会社の船舶海洋部長である尾関洋彦氏。さらに双輝汽船株式会社の代表取締役社長の河上洋右氏に今治市長と錚々たる方々をお呼びされておりました。
その中でモデレーターを務められていた株式会社SUNABACO代表のなかまこさん。本当に凄い方です。
参加して色んな思いを頂いたので振り返りを致します。
ゲスト講演
マテウス大臣の講演はモザンビークについて私自身知らないことが多いため大変貴重なお話でした。
モザンビークは環境変動が激しく災害が多いが資源は豊富で天然ガスの開発も進んでおり日本の有名な会社も積極的に投資しております。
2023年にはエネルギー転換戦略を発表され、4つの柱として(1)再生可能エネルギーに基づく近代的エネルギーシステム、(2)グリーン産業化、(3)エネルギーへの普遍的アクセス、(4)輸送分野におけるクリーンエネルギーの利用を挙げております。
国内のみならずグローバルで貢献すると仰っており、天然ガスの開発が積極的なのも納得のいくお話でした。
バイオ燃料にも言及されておりましたし食糧問題とエネルギー政策のバランスの難しさなどにも触れられ、課題がある中でも進められているのだと感じました。
大臣のお話を聞きながら国、行政が積極的に動くことで物事が進みやすいのだなと本当に感じました。
日本も見習うべきことは沢山ある内容でした!
基調講演1
ジャトロファについては事前になかまこさんから資料共有して頂き合田さんの取り組み含めて予習させていただきました。
バイオ燃料は思えば大学生の頃から話として聞いておりました。バイオエタノールは所属していた研究室の教授が夢を見そうな話だったので何度も話を聞かされたことを覚えております。
可食部由来のものは食糧問題とのバランスを考慮すると浸透しなかったのが事実。気づいたらあまり聞かなくなっておりました。
ジャトロファは非可食植物であるため食糧問題という観点では有利に働きます。
合田さんの講演の冒頭に仰っていた「資源成約下の中で競争か協力か」「植物燃料は足りなければ協力して植えたらいい」というお言葉には深く感動致しました。
環境への貢献は大学時代によく夢をみましたが人生とは不思議なもので環境負荷の高い製造業に入社し、そのような思いを忘れかけていたのは事実。
昔に抱いていた気持ちを思い出すことが出来たなんて恥ずかしくもあり嬉しくあります。
ジャトロファはパーム油より広域で栽培が可能。使用するとCO2換算として悪化する肥料や農薬も不要。絞った油を直接利用できれば大型プラントも不要となる。ちょっと残念だとは感じましたw
生産性も高まり、カーボンクレジット市場も増え、バイオ燃料の使用義務化の動きもある。今は流れが本当に変わったのである。
船の燃料に直接利用することが来ることを願うばかり。海事業界のカーボンニュートラルに向けた取り組みがさらに加速することを期待しております!
基調講演2
伊藤忠商事の尾関さんのご自身の経験からお話しされた内容は大変貴重でチャレンジすることの大切さを改めて実感致しました。
社内の制度を利用して立ち上げたマリンネットという会社。想定通りにうまくいかない、キャッシュも尽きかけている中で一度断りかけたものの引き受けた仕事が大当たり。
ビジネスは想定した通りにうまくいかない。「失敗の過程で新しいビジネスモデルの誘発や、新しい資源を獲得できる可能性もある」というお言葉が刺さった方も多くいたのではないでしょうか?
さらには既存資源と新規資源の組み合わせによって新たなチャンスを得ることが出来る。
お聞きした内容はベンチャーだけではなく従来の仕事にも通ずることです。
うまくいかないと思うからやらないのではなくまずやってみる。チャレンジする上で本当に必要なマインドだと感じました。
若手からおっさんまで本当にこのお話は聞いた方がいい内容でした!
トークセッション
なぜ今治でこのような革新的な取り組みが進むのか?
脱炭素化やデジタル化への取り組みが官民が直面している課題であるがうまく進んでいないのが実情である。
今治では話が次々と進んでいく。その疑問の答え合わせが出来ました。
今治という土地に集積されている人の知恵。例え暗黙知だったとしても長年培った膨大な情報がこの地にある。
そこにSUNABACOが参画しITを加える。さらに行政の後押しを受ける。
これぞまさに我々がこうなったらいいなと夢見た光景でした。
国、行政、民間の取り組みに商社も加わりチャレンジを行う。オールジャパンでデータを集めることが出来る今治に全てが集まってきた。これを生で見れたことは貴重な経験でした。
本当に凄い瞬間に立ち会えたこと嬉しく思います。
まとめ
カーボンニュートラルに向けた取り組みは目標が変わることはあっても止まることはありません。
そのために我々が出来ることは何か?と悩むこともあるでしょう。
原始的な生活に戻ることは難しく今の利便性を維持したまま達成することは困難なチャレンジになります。
日本の一つの街で困難にチャレンジしようと盛り上がりを見せている。
それを見た自分はどうするか?同じくチャレンジを行っていきたいです。
現職の仕事が必ずしもカーボンニュートラルに貢献するわけはありません。でも製造業に所属しているからには逃げることは決してできません。
未来をよくするために行動を起こす。チャレンジする。
自分に出来ることを地道に積み重ねていくことを決して忘れてはならない。
これを機に少しでも環境負荷軽減について考えてみませんか?
未来をよりよいものにするために
今回もお読みいただきまして誠にありがとうございます。子供たちが夏休みに入り生活スタイルが変わりバタバタされていることもあるでしょう。
暑い日も続くためくれぐれも体調には気を付けてお過ごしください。
以上、ご安全に!