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オンライン研修なのにリアル会場を設けるのはヤメにしよう(その逆も)

企業研修に携わる皆様にとっては、オンラインとリアル会場のハイブリッド開催を余儀なくされるケースが、少なからずあるのではないでしょうか。今回は、我々が実験してみた結果をもとに出した結論とその理由をご紹介します。やはり、やってみるとわかることってあるんだな、と肌で感じた良い経験でしたので共有していきます。

結論:企業研修でハイブリッド型は止めた方が良い

本社にいる人は教室に集まりましょう、とか、小グループずつ小部屋に別れてzoom繋いでやりましょう、とか、いかにも日本企業だとやりがちですよね。我々の結論は、受講生のことを考えるならまずオススメしません。今からなぜダメなのかを説明しますので、研修担当者の皆様が上司や現場を説得するために使ってください。

目の前にいるのに直接会話できない気持ち悪さ

我々の実験による一つ目の気づきは、やはり目の前に人がいるのに、画面に向かって話し掛けるのは、とてももどかしく気持ち悪さがある点です。いわゆる『ガヤ』的なリアクションや、ツッコミのような反応、あるいは、聞き逃した箇所を隣の人に聞くなど、ごくごく自然にやってきた行為が、オンライン参加メンバーを気遣って控えるようになります。それがめちゃくちゃストレスになるんですよね。やってみるとわかります。休憩になってzoomをミュートにした瞬間にリアル会場でワッと雑談が起きます。
さらにタチが悪いのが、そんなにリアル会場ではストレスフルになりながら気遣っているのに、オンラインメンバーの方からすると気遣ってもらっている感覚はないんです、ただ普通にオンラインで会話できてるって感じで。これでは誰も幸せになれません。

コミュニケーションにはオンライン/オフラインそれぞれ専用のモードがある

上記に関連して、特にリアル会場とオンラインが入り混じったグループディスカッションの難しさも挙げたいと思います。我々の実験は、リアル会場に2名、zoomに2名の計4名で15分程度のグループワークを行いました。結果は大きく2パターンあり、リアル会場の2名の会話が突っ走るパターンAと、リアル会場もオンラインも同じようにzoom内で会話をするパターンBのいずれかでした。当然ながら、パターンAは、オンライン参加のメンバーからは「疎外感を感じる」「議論に入りづらい」といった感想があり、グループディスカッションが効果的に行われていたとは言えませんでした。一方、パターンBは、リアル会場から「普通のテレビ会議と同じ」「リアル会場に居る意味がない」などの感想でした。こちらが立てばあちらが立たず状態ですね。
何が起きていたかというと、コミュニケーションのお作法やモードが、リアルとオンラインでは異なるため、どっちかに合わせに行くしかなくなり、選ばれなかった方はルールが違うのでその競技に参加できなくなるのです。これの解決方法はひとつしかなく、ルールを統一することです。(つまりオンライン会場に寄せる)

講師のパフォーマンスが担保できない

今回の実験で、私自身が講師役をやったんですね。講義というかプレゼンを再現する形で、リアル会場向けとオンライン会場向けの2種類を行いました。それぞれどんな感想を持たれたかと言うと、「リアル会場向けの方が生き生きとプレゼンしていた」「オンライン会場向けの方が聞きやすかった」ってことです。自分自身、とても意外だったのが、特にテンションや話し方を変えたつもりがなかったのに、明確に感想に違いが出たことです。そんなに違ってたかなーってくらい。
これをもう少し整理するために、いわゆる講師の『伝える力』の違いを、リアルとオンラインで比較してみたいと思います。

従来(リアル)の講師の能力:存在感、聴衆を引き付ける流れや口調、間の取り方、インタラクティブさ、最高峰はTED
オンライン研修の講師の能力:正確な情報伝達、聞きやすいスピード、丁寧なインストラクション、親しみやすさ、最高峰はYouTuber

つまり、求められる講師の能力のベクトルが全然違うんですね。もし、ハイブリッド型の研修でリアル会場にもオンライン会場のどちらにも高いレベルで同時にデリバリーすることを考えると、講師に掛かる負荷は半端ではありません。また、そのためのトレーニングを積んでいる研修講師は、非常に稀な存在と言えるでしょう。ようやくオンライン研修を一通り回せるようになった研修講師が多いのが現状だと思います。ここでの見解は、「できないことはないけれど、講師のパフォーマンスを最大限引き出せる環境ではない」ということです。

さて、これでハイブリッド型を止める気になってくださいましたでしょうか。ありがとうございます。
最後に、大きな前提をお伝えしておきます。本稿は企業研修、特に普段一緒に仕事をしていないメンバー同士が集まって社外の講師が登用されるケースを前提としています。何が言いたいかと言うと、普段から一緒に仕事をしている見知ったメンバー同士であれば、上記の懸念は起きないと思います。リアルに居ようがzoomの中に居ようが、分け隔てなくコミュニケーション取れる関係性があれば問題無いのです。
このコミュニケーションを実現するには、研修の設計やコンテンツではどうしようもなく越えられない壁があり、人間関係の醸成やテクノロジーの進化を待たねばならないと言わざるを得ません。


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