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#01_自分の「好み」を集める

小山田さんの本棚_vol.1

飯川(以下「 I 」):小山田さんのオフィスには大きな本棚がありますけど、そもそも建築デザイナーは本をたくさん読むものなんですか?

小山田(以下「 O 」):んー。建築で何かしようって思った時に、先達の経験を本から学んで、それに「こういう視点を加えて アプローチしてみよう」みたいなことはするけど、、本を読まないと仕事にならないわけではないですよね。ただ、クリエイティブな活動に100% のオリジナルはないなと思っていて。

I:というと?

O:音楽だって小説だって彫刻だってそうだと思うんだけど、何かをアウトプットする時って、それまで経験してきた何がしかの影響を受けるじゃないですか。例えばまちなかを歩いて、今流行ってるものをインプットして、それを自分なりにアレンジしてアウトプットするみたいなやり方も全然アリだとは思うんだけどね。

I:ああ、なるほど。

O:何かをデザインする時って、結局それまでに自分の中に入れたもの(経験や知識など)が影響してるのは間違いないって思ったときに、じゃあ自分の中に入れるものをコントロールしたいなって思うわけ。そしたら当然、自分の「好み」に合ったものをインプットしたいなって思うのは自然ですよね。

I:ええ。

O:大学の時に富永讓先生から教わったんですけど、自分がとある場所とか空間とか建築を「好きだなぁと感じるのは何故なのか」に自覚的になることがまず大事。さらにはその好きな理由を分析することが大事なんです。分析することで、好きな場所や空間を「再現するための具体的な技術・方法」が見えてくるじゃないですか。そうすれば自分が何かをアウトプットする時に、その分析結果が効果的に使えるようになるわけですよ。例えば、美しい風景との出会いをドラマティックに演出する技術もあれば、本当は狭い空間を広く感じさせる方法だってあるんですよね。
 インプットするレベルとして、抽象的なレベルと具体的なレベル、その2つで見るっていうのはすごく大事にしてます。

I:何かに対して自分が「いいな」って感じることを敏感に捉えて「今、いいなって感じてる!」って思うことが大事だし、それを一歩深めて「どうして?」って具体的な技術として分析することが、結果自分の道具を増やすことになるんですね。

O:そうそう。例えば僕は日本建築が好きなんだけど、何かのデザインを考え始める時に、一度テーブルの上に日本建築の本(主に写真集が多い)を10冊ぐらいバッと広げて眺めながら、これまで色々と経験してきたことを思い出すわけですよ。そのあと一旦本を離れて思考を整理してからペンを持つと、自分が「日本建築のこういうところ好きだな」ってイメージがアウトプットにのり移るというか。


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