#03_本棚は仕事の「道具」
小山田さんの本棚_vol.3
O:最近本棚の整理をしたんですけど、、まちづくりの古い時代の本ってほんとにないのかな?って探してたんです。で、象設計集団っていう、名護市庁舎を設計した人たちの『これが建築なのだ』っていう確か僕が学生の頃に買った本が目について、そう言えばと思って取り出して読み返してみたら、、これまちづくりと建築を結びつけている本だと再発見しました。(名護市庁舎は約40年くらい前にできた建築なので、そこまで古くもないですけどね。笑)
僕はその名護市庁舎が好きで20代の頃に沖縄まで見にも行ってるんだけど、ちなみに当時の象設計集団の代表大竹さんていう方が、東北大出身の方でしかも小中高とエイチシンプル事務所のすぐ近くの学校に通っていたことが、今回本を改めて開いてみて分かったんですよ、びっくりです。笑
O:それがきっかけで、他にもなかったかなって探し始めたら、5〜6年整理してなかった本棚がごちゃごちゃしててわかんなくて。それが最近本棚を整理し始めたきっかけなんです。
I:それ、ちょっと面白いと思うんですけど、もともと並んでた本の並びがあるじゃないですか。5〜6年ほったらかしてた本棚を、今の自分の感覚で関連がありそうな本を寄せ直したってことですよね?それは、今まで近くにないと思ってた概念が、入れ替わってくっつくようになったっていうことなんですか?
O:やっぱり「僕」っていう一人の人間が買い漁ったものだから、どれもどこかで繋がってるんだよね。あの本の隣に置いてた本は、今の気分的には別のこっちの本の隣だなってのはあります。本棚を整理するって、自分の「好み」を再整理する機会にもなるんですよね。
I:今この本棚を見ると、升目状の形になっていますけど、それがいいなと思ったからこうなっていますか?
O:んー。升目はカテゴリ分けするときに便利ではあるけど、ひとつの升目にそのカテゴリの本が納まらなかったり、そもそもカテゴリ分けが難しい本もあるから、まぁ整理する時の手助けにはなってるかな。
本棚についてこだわりがあるとすれば、背表紙が見えるように置きたいっていうのはありますね。
I:背表紙が見えるように?
O:僕、何か考え事をする時って、本棚を眺める習慣があるからね。本棚の前に立って眺めながら、そのヒントになりそうなことがないかなって探したりするんですよ。
その時に大事なのは、本は横向きには置かない。
I:「積ん読」状態にしない?
O:積ん読状態にしない。そうしちゃうと、背表紙タイトルから入ってくる情報が減るんだよね。こうやって、立てて置いておくっていうのは、僕の場合はすごく重要。
I:ええ。
O:背表紙タイトルを見ると「ああ、そう言えばこんなこと考えてたわ」とか、自分のためのヒントが見えたりする、というのは確実にあるんだよね。そういう意味でとても実用的だから、背表紙のタイトル文字が読みやすいように本を立てて置きたい。僕自身はむしろ本棚を積極的に「つくっている」って意識があるかも。
I:そういう意味では、本棚というのは、何か与えられた課題があったときに、それを解決するためのアイデアを得るための道具、ですか?
O:そうそう、道具なんですよ。自分を振り返る道具。言ってみれば自分なのこれ。この本棚は「僕自身」だから。
I:本棚は自分である。はい。なるほどな。
O:なんかもう・・・血はないけど、汗と涙は染み付いてるよね、本に。笑
I:自分が思考してきたことの、結晶が本棚であるというか。
もしこれがないとしたら、新しい課題を与えられた時に自分の記憶の中でしか取り組めない、ということなんですね。
O:うん、うん。
I:今記憶にないけれど、忘れてしまったことがあるけれど、自分が思考してきた跡をたどるためには、自分の「知の分身」として本棚が機能するだろう、ということですか。
O:あの、、忘れてはいないの。頭の中にあるの、記憶は。でもそれを呼び起こしてくれるものがない。そのときに背表紙を見ていると、いろいろ思い出すよね。記憶のトリガーになるんだよね、自分の頭の中の目次、うん。
I:自分の頭の中の目次。
O:僕自身、本当は忘れてないんだけど、思考に戻って来ないことのなんと多いことか、と思うんですよ。それは僕だけじゃなくて、みんなもそうだと思うんだけど。
I:たしかに。
O:少なくとも僕は本棚で、眠り続けてる自分の記憶を呼び覚ます、みたいなことはやってるから。これは良いツールだよね。オフィスを構えようと思ったら、本棚に背表紙が見やすいようにちゃんと並べられるというのは、絶対条件。この面積は、どうしたって必要なんだよね。
I:あの、多分これは多くの人が経験があると思うけれど・・・自分が幼い頃のアルバムを開いて「懐かしい」と思うと同時に、当時の変なことばっかり覚えてるみたいなことってあると思うんですけど・・・。引きずり出される記憶とか、当時の見えていた風景があって、それが本棚でも同じことが起こるということですかね?しかも本棚の場合は、より使える記憶がよみがえる。
O:僕は、使おうと思ってこうやって見ているけど、やっぱり中にはあるよね。・・・あの時ひどいことしちゃったな、みたいな。
I:ひどいことしちゃったな?
O:ある、ある。それを思い出す本とかも捨てないでとっておいてあるね。そのことを思い出すと、「調子乗るなよ、陽」って。
I:ああー。自分を戒める機能もある?
O:あるの。本棚は自分だからね。若い頃に味わった痛い思い出とかも、同時に蘇ってくること。あ、これは書かなくていいからね。笑
I:ひとつ質問。今、ネットでなんでもわかっちゃう時代には、わざわざ本を買うということをしない若い学生も多いと思うんですけどどうですか?
O:・・・僕は買いたいの。だから、図書館に行って立ち読みをしたら、借りないでamazonでポチるっていうことをやったりするわけ。その本は、実物としてそこにないと役に立たないから。
I:そうかそうか、本というのは記憶の再生装置でもあるから実物がそこにないと意味がないんですね。
O:意味がない。その背表紙が常に見える状態でないと意味がない 。
それは、読んでないことと同じになってしまうから。思い出せないんだったら。
I:思い出せなければ読んだ意味がない、と。なるほど。それは紙の本の、大きなメリットというか、機能ですよね。
まあ、デメリットとしては物理的なスペースをとっていくわけで、限界があるということですよね。だから、本棚の容量っていうのが自分の知の容量だと言っていいんですかね。どうなんでしょう?
O:ああ、本棚はまだ増えるんじゃない?大丈夫だよ。ただ、整理する時間がかかるけどね。整理もね、いろんなラベリングの仕方があるじゃない。だからその時々で変わってくるんでしょうね。これ、2,3年後にやったら、またかわるんだろうね。
I:そのときに、小山田さんは本棚を今以上に増やしたいなと思いますか?
O:あぁ、本棚はいくらでも増やしたいね。
本棚を眺めるときもね、このぐらいの距離よりもね(近づく)、このぐらいの距離のほうがいいのよ(2歩下がる)
I:ああ、少し離れたほうがいい?
O:全体が見えるから。こっちの本を見た時に、同時にこっちの本が見れるから。だから、本棚を置くスペースだけじゃなくて、離れて本棚を見れる分の面積も必要なんですよ。
I:視野の中に多くの本を眺められるような状況が欲しいんだ。
O:はいそうです。それが結構大事なんです。ちなみに下のほうに置いてる本は、あんまり使っていない・・・それこそノウハウ本とかが多いかな。
I:ああ、あまり使用頻度が高くない?じゃあ、目線の高さに来る本がどういうものが多いとかありますか?
O:やっぱり、よく手に取る本を置いてますよね。その時に一番興味ある分野の本。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?