#02_「選ばない」という選択
小山田さんの本棚_vol.2
小山田(以下 O):シンプルに言うと、本棚は自分の歴史だと思うんです。
飯川(以下 I):自分の歴史。
O:僕いま44歳ですけど、建築を勉強し始めたのが18ぐらいだとしても、25年ぐらい経ってるわけで。その間、いろんな課題、仕事にぶつかってきた度に、いろんなことを考えて来たわけじゃないですか。考える数が増えれば本もその分増えてく感じ。その増えていく思考を、本の背表紙を見ていると思い出すんですよね。
例えば「日本建築の根」っていう本の背表紙を見た時に、何枚かの写真が頭に浮かぶんです。背表紙見て思い出すものって、やっぱり自分に響いたものだから、自分の理想(好み)に近いものなんだよね。本棚の背表紙を見るっていうのは、自分の歴史を思い出していく感覚に近いかも。
I:あの。小山田さんの本棚の中に、この本の概念や考え方がもう古いなと思ったりするものはないんですか?
O:そういう本はあんまりないですね。わりと本質的というか普遍性のある本が多いんじゃないかと自分では思うけど。あとは写真集が多い。
I:ああ。
O:写真集は二川幸夫先生(建築写真家)が撮った写真を多く買ってて。・・・ホントは全部欲しいって思ってるぐらいだけど。笑
あのねー、シリーズで高いのがあるんだいっぱい。それにまだ手が出ないんだよねー。お金が入ってくるとヤフオクとか調べて、少しずつ集めてるんですけど・・・笑
I:笑
O:ちなみに。雑誌はね、建築の雑誌はほとんど買わないんですよね。多いのは、日本の古建築の本とか、明治・大正・昭和初期・昭和中期ぐらいの建築の本。
I:それは、どうして?
O:それはもう100%僕の「好み」ですよね。笑 その時代の建築が実物や写真で今も残ってるっていうのは、時代のフィルターをちゃんと通り抜けて、濾過されて現代に抽出されたものなんだろうね。だから、本質的/普遍的である可能性は高い気もしますよね。
I:ああなるほど、雑味が取り払われて。
O:そうそう。そういう意味では、特に建築の本に関しては、そもそも古臭いものがめちゃくちゃ多いと思うよ。笑
I:古臭いというか、時の洗練を経た本や写真集が多いと。
O:うん。正確にいうと「時の洗練を経た本や写真集」を選んだっていう自覚はなくて、たまたま僕の「好み」がその時代の建築空間だっただけなんですけどね。逆に選んでいることとしては、最近の建築雑誌はあまり見ない、ということ。
I:それはなぜ?
O:残っちゃう気がするんですよね、頭に・・・
I:ああ、どうしても見たものの印象が残ってしまうから?
O:はい。見過ぎちゃうと、同じものを見ている他の人と似たようなものを提案(アウトプット)することになるから。自分の個性はちょっと薄れると思ってるんだよね。本当は自分が好きなのは日本の古建築だったり明治・大正・昭和初期の建築空間だから、そういうのが自分の個性として、提案するデザインに出てきてほしいなと思ってるから、そういう本が増えるんですよね。
だからね、自分の個性を純粋に突き詰めようと思ったら、できるだけ今良しとされてる/雑誌とかで取り上げられてすごいと言われてるものはあまり見ない。みんなの目に多くとまりそうなものは、気にかけてみないようにしてる。よっぽど表紙が気になったり、話題に惹かれたり、友達が勧めてくれたものは買って読んだりしてるから「絶対」ではないですけどね。でも、できるだけそれは意識してるんですよ。
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