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薬草園という名前の蒸留所

アクアラインを渡ってクルマでさらに1時間強、民家もまばらな山奥の田舎(ごめんなさい)、千葉県夷隅郡大多喜町(ちばけんいすみぐんおおたきまち)という町に、酒好き・ハーブ好きにはたまらない蒸留所があるという。Open Dayのタイミングに合わせて訪問してきた。
風は少し冷たかったけれど、ポジティブな予感に満ち溢れたとても素晴らしい場所だった。

ボタニカルブランデー

訪れたのはmitosaya 薬草園蒸留所というちょっと変わった名前の蒸留所。
今回の目的は13:30〜の蒸留所ツアー。到着したのは13:00少し前。

Open Dayのサインをくぐり抜けて階段を登っていく。
蒸留所ツアーまでに少し時間があるので、まずはテイスティングルームへ。

もともと千葉県立の薬草園だったというこの場所。テイスティングルームはまさかの温室!
蒸留所の方もとても気さく。言葉の端々から、この場、この時、この酒を楽しんでいることが伝わってくる。

ディスプレイされているのは、原料として使っているハーブやエディブルフラワー。鴨川の農家さんから仕入れているとのこと。
薬草園と言えども、全ての植物を自家生産する訳ではないらしい。

午後の明るい光が差し込む温室で、ボタニカルブランデーをテイスティング。

蒸留所のお兄さんとハーブ談義をしながら、ボタニカルブランデーを片手にディスプレイしてある草花をモシャモシャ食べるという謎展開
自宅でハーブを育てている身としては、ハーブや花たちの可能性をダイレクトに感じられたのが嬉しくてテンションが上がる。
知識としてアタマで分かっていても、現実や現物の体験には敵わない。毎回新しいことを体験する度に思う。その体験をテコの支点としてこそ、ぼくの周りの世界をよりよく理解できる・理解しようと思えるのだ。

蒸留所ツアー

蒸留所も元々薬草園の標本展示室と事務所を改装したもの。
独特のインダストリアルな印象がオシャレ感……。

醸造スペースに鎮座するのは、吉野杉で作られた巨大な木桶
木桶作りの技術が途絶えてしまうことのないように、小豆島のヤマロク醤油さんが主導して行なっている小豆島 木桶職人復活プロジェクトにて作られたもの。実際にmitosaya の代表である江口さんも小豆島に行って木桶作りを手伝ってきたとのこと。この木桶には、まだ中身が入っていない。
失敗したくないからどうしようか迷っている、と江口さんは照れ隠しのようにおっしゃっていたが、千葉県特産のフルーツを使ったボタニカルブランデー、期待してます!

ちなみに、この蒸留機は玄関を入った真正面。一番目立つ場所に設置されている。
まるでタイムマシン

セラーは外界の影響を抑えるために極力温度変化を抑えられるように作ってあり、窓がない。
木樽ではなくあえてガラス瓶で熟成をさせているボタニカルブランデーたちが静かに佇む。
一つひとつの瓶の底にはLED。これ、お客さんに見てもらう時のためだけに設置したとか
江口さんは、洞窟っぽくしたかったとおっしゃっていたが、暗闇に浮かぶ瓶に囲まれていると、海の底にいるかのような錯覚に落ち入る。
暗く、静かな、海底

農大生が世界の蒸留酒を紹介

ツアーの後に訪れたのは、テイスティングルームとは異なる温室。

ここも完全に植物園。
現役農大生による、世界の蒸留酒とノンアルコールジンがテイスティングできる。

どれもボトルデザインが可愛い。
この辺りはノンアルコールジン。
すごく複雑な香りが楽しいけれど、飲んだら水(笑)
ずいぶんとマニアックなものを集めたもんだ……。

そしてこれ、アメリカで作られたチェリー&マツタケ
一見恐ろしい組み合わせながら、いただいてみると意外と破綻もなくお見事。
最初はチェリー、あとからマツタケ。
食後にチビチビ飲みたい。

巨大なテーブルとオシャレ東屋

さらに薬草園の奥へと登って行くと、巨大な丸テーブルが出現。

大きな食卓。
きっとこの食卓は家族の象徴
mitosayaのみなさんは、きっとここに来るみんなを家族として迎えてくれているのだ。
お昼ご飯は完売してしまっていたけれど、次はここでご飯を食べたいなー

DIYで改造した東屋
ここが即席のキッチンになっていたとのこと。
もともとはどこの公園にもあるような、何の変哲も無い東屋だったらしいのだけれど、そこに壁を付けて、薪ストーブをつけてハンモックをつけて、こんな素敵キャビンに。

壁の焼杉も自分たちで加工したらしい。楽しそう。

Bee Hotel

山をてくてく下って行くと、何やら工作めいたことをやっている子供達が。

子供を指導しているのは、鴨川で養蜂を営む苗目さん(会社名)。
ワインの木箱に色々な木材や資材を詰めて作られたそれはBee Hotelというもの。Bee Hotel という名前だけれど、蜂のためのホテルではなく養蜂によって自然界のバランスを崩すことの無いように、蜂以外の虫が快適に暮らせる環境を提供するためのものだという。ここで全てを書ききれないほど、養蜂に関する熱い想いをお伺いできたことに感謝。
ちなみにこの苗目さん、ぼくがモシャモシャ食べた草花の生産者さんだった。苗目さん、マグノリアもブロンズフェンネルも美味しかったですー

こだわりドライフルーツ

蒸溜所の下の方の東屋にも人だかりが。

こだわりのドライフルーツを取り扱っているAMBESSA & COというお店のポップアップ。
ドライフルーツは好きなのだけれど、特に日本のものは砂糖漬けにしてしまっているものが多く、果物本来の味や香りが台無しにされているものが多い。
こちらのドライフルーツは、どれも砂糖不使用。

ちゃんと果物の味や香りが残っている。
美味しい。
瓶の大きさを決めてから、一つずつオーナーさんに詰めてもらうという非常に効率の悪い販売方法ながら、ここにいるとその効率の悪さが楽しかったり。
並んでいる間に店員さんや列の前後の方々とおしゃべり。
ゆったりと自分の番が来るのを待つ。

ぼくは少し大き目の瓶を選んだ。

ホオズキ、アプリコット、キウイ、マンゴー、イチジク、パイナップル、ピスタチオ、カカオニブ。
ギュウギュウに詰めていただきました
ありがとうございます。

mitosaya 薬草園蒸留所という奇跡

絶妙の場所と人、タイミング。
ボタニカルブランデーを作りたい江口さんと、閉園となってしまった薬草園。それを応援する人たち。
なんという巡り合わせ・導き合わせの上に成り立っているのだろう。
(大きな苦労もたくさんあったとは思うけれど)

そして偶然にも、今回のOpen Dayのタイミングが初回蒸留を販売する記念すべきタイミングだったとのこと。
蒸留所の方々、その周りにいる方々、そして江口さん、みんなの思いが詰まった貴重な一本だと思うと、買ったけど勿体なくて飲めないなー

mitosayaのみなさん、ありがとうございました!

#酒 #ブランデー #mitosaya #ハーブ #地方創生 #大多喜町

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