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都道府県のふるさと納税参入で思うこと

1.都道府県の参入が相次ぐ

近年、ふるさと納税に都道府県の参入が相次いでいます。知事が替わって方針が変更になったなど色々事情はあるようです。
もちろん、都道府県とはいえ地方の自治体なので、ふるさと納税に参入していただくのは大歓迎なんですが、先行して取り組んでいる市町村と都道府県の間でトラブルが生じています。今回は、この件について、いつもどおり勝手な持論を繰り広げたいと思います。

2.各地でトラブルが勃発

2023年だったと思いますが、山梨県がふるさと納税に参入した際、県内の市町村とトラブルになりました。県が市町村と同じ返礼品を市町村よりも安い寄附金額で掲載する等、配慮が足りなかったことから起こったものでした。

当初、市町村が県に抗議していたものの取り合わなかったようですが、メディアが騒ぎ出した為、県も対応せざるを得ない状況になり、市町村と意見交換し、返礼品の内容などを調整することになりました。
この問題以降に参入した京都府では、集めた寄附の半分を府下の市町村のために活用するなど、市町村とバランスを取れるように配慮していて、返礼品についても市町村に相談のうえ掲載をしていました。
これを見た私は、都道府県において市町村への配慮が必要ということが認識されたのかと安心していましたが、年末が近くにつれて立て続けに複数の自治体から本市にご相談がありました。

3.兵庫県でのトラブル

先月ご相談があったのは、兵庫県でした。
ご相談のあった自治体によると、楽天ふるさと納税に「県だから返礼品が充実!」というバナーを貼って、県内の市町村から寄附を横取りする気満々らしく、他の市町村の担当者もめちゃくちゃ怒っているとのことでした。
県に抗議したそうですが、県は「ふるさと納税は国がつくった制度、市町村のためだけの制度じゃない、県がやって何が悪い!」と開き直られたそうで、最後は、「もうこの件で電話したくるな!」と言われたそうです。
確かに県がふるさと納税をやっても違法じゃないですが、もう少し言いようがあるんじゃないかと思いました。

4.奈良県でのトラブル

そして、今回ご相談があったのが、奈良県の自治体さんです。奈良県が、知事が替わってふるさと納税の取組みを強化しだしたそうです。
ご相談くださった方のお話によると、先日、奈良県内の複数の自治体さんが県にどのようなスタンスでふるさと納税を取り組むつもりなのか伺ったところ、以下のような回答だったそうです。
「観光需要は確実にとりにいく。市町村も県が誘致したホテルの宿泊券を返礼品している。お互い様である。」
さらには、以下のような発言もあったそうです。
「〇〇市さんも市長に指示されてがんばってるだけでしょ、我々も知事から言われてしんどいんです。5月から本格的に取り組みはじめたが、おかげで定時で帰れなくなって大変なんです。」
などなど、バチバチに戦争し始めたい様子だったとのことでした。

農家に市町村の断りなく接触したり、中には既に返礼品として掲載されてしまっているものもあり、事後的に知ったという自治体も多かったそうです。
県内の市町村としてもこのまま手をこまねいて見ているわけにはいかないので、年明け落ち着いたら県内の市町村で集まって話し合おうということになっているそうです。

5.なぜ市町村が怒るのか?

都道府県がふるさと納税に取り組むことは違法ではありません。
では、なぜ市町村が怒っているかというと2点あると思います。
これは、是非、都道府県の職員さんには、ご理解いただきたいと思います。

1点目は、都道府県はエリアが広い為、圧倒的に有利だからです。
総務省の返礼品ルールは、基本「区域内」で生産、製造したものになります。例えば、大阪府でいうと、府の「区域内」は、大阪府内全ての市町村がその範囲になりますので、府は、府内全ての市町村の返礼品を取り扱うことが可能です。
ふるさと納税は、返礼品のラインナップが豊富な自治体が有利と言われているので、都道府県が圧倒的に有利になります。

2点目は、ここが一番の問題だと思うんですが、都道府県が返礼品事業者にコンタクトをとる際、事前に市町村に声掛けをしていないことです。なぜ声掛けが必要なのかというと、返礼品事業者さんは、市町村にとって大切な資源だからです。
そこで疑問が生じると思いますが、区域内の資源という意味では、市町村の資源ということは、都道府県の資源でもあるので、なぜ声掛けが必要かということです。しかしならが、ここの認識の違いがトラブルの原因になっていると思います。
そもそも都道府県は、中間事業者に丸投げするので理解が難しいかも知れませんが、これまで市町村は、返礼品の開拓や事業者の育成にかなりの労力をかけてきました。ふるさと納税に前向きに取り組んでいる市町村なら尚更です。それを区域内の事業者だからといって、断りも無く声を掛けられれば誰でも怒ると思います。

また、中には事業者も商売なんだから喜んでるとか、事業者の自由な選択という意見もあると思いますが、人気の返礼品であれば市町村の返礼品の対応だけで供給が精一杯という場合もありますので、先行して取り組んでいる市町村の寄附にも大きく影響しますし、事業者さんに無理をさせると遅延したり、品切れで配送できない等の寄附者の皆さまにご迷惑をお掛けするトラブルに発展する可能性もあります。
我々市町村は、そういったことも考えながら事業者さんと向き合っているので、その間に割って入って来るのであれば、相応な敬意を払って入って来るべきだと私は考えます。
それであれば事業者が断ればいいという意見もあると思いますが、市町村もそうかも知れませんが、都道府県ともなると事業者にかかるプレッシャーは相当強いので、お声掛けがあると事業者も市町村以上に断りづらいというのもあると思います。

都道府県は、ふるさと納税を一生懸命取り組んでいる市町村の苦労をご存じじゃないから、今回のようなことをやってしまうのでは無いかと思います。都道府県の職員さんは優秀なので、そういった事実を知っていたら判断は違ってくると思いますが、ご存じがないからこそそういう問題が起こるのはある意味仕方が無いと思いつつも、これだけ各地でトラブルが生じているのであれば、この問題を是非知ってもらいたいと思い今日は久しぶりにnoteを書いてみたところです。

6.最後に・・・

本音では、市町村も返礼品事業者は共有の資源だとはわかっていると思います。でも、やっぱり都道府県は圧倒的に有利なんですから、ある程度配慮が必要なのでは無いかというのが私の見解です。
市町村のわがままかも知れませんが、都道府県におかれましては、市町村をバックアップするというスタンスで、お互いに盛り上がれるような良識的な動きをしていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

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