マジケ2021冬戦利品報告会①
はじめに
こんにちは。凌雲です。
2021年冬マジケの戦利品について書いていこうと思います。
そんなにたくさん買ってないのですが、遅筆なので報告が終わる頃には次のマジケが来てしまうかもしれません。
トップバッターは「算数できない三銃士」の1人、でいしゅうさんの『Days』と『Jazz+』です。
でいしゅうさんの『Jazz』についてのレビューを前回書きましたが、今回はさすがに全部にしっかり目を通して試す時間がなかったので、あっさりめのレビューになっています。
しっかりめのレビューはそのうち書きたいですね。
なぜか今までで一番好評だった『Jazz』のこってりレビューはこちら↓↓
CAUTION⚠️:以下、マジックに関する(ネタバレではないけどそれなりに専門的な)お話が出てくるので、そういうのを知りたくないという方は他の記事を見てね!!
(作品名の横の括弧内はマジケ価格です)
『Days』(3500円)
2つのうち、今回の目玉商品。
Twitterの動画を見て買った人もいっぱいいると思います。
単なる手順解説ではなく、磨き上げられてきた手順に関する著者のこだわりが詳細に書かれています。
「この作品はできない」
「この手順はやらない」
と、レクチャーノートや動画解説は単なる観賞用となることも多いですが、手順の解説以外の部分に多くの紙幅が割かれていることもあり、自分の演技の参考になる部分が沢山あるレクチャーノートでした。
超贅沢なことに演技動画があって、文章と動画によるダブル解説ですよ。計算どうなってるんだこれ……。
各収録作品をみていきましょう。
・Ambitious Force
観客の「こうなったらいいのにな」にどう応えるかについての考察。
詳しく言えないけど、そういうあれこれが手順を通して解説されています。
どう準備しておき、どう対応するかが著者の経験を元に書かれていました。現場的・実践的な内容でしたね。
さっそくめっちゃ参考になるやつがきましたよ。こういう話、聞きたかった。
・Ambitious Card
前田知洋さんをテレビで見たことがきっかけでカードマジックの世界に足を踏み入れたので、アンビシャスカードが大好きです。
前田知洋さんのものをベースにした割とオーソドックスな手順を今も演じていますが、使う技法が最小限で現象のバリエーションが多いでいしゅうさんの手法は自分には無い発想ですごく面白く、参考になりました。
手順の中の現象の数とバランスが練り上げられていて、アンビシャスカードの手順が陥りがちな、サインカードが上にあがるだけの短調な現象にならないよう、観客が飽きず驚き楽しめる工夫が散りばめられていました。
使う技法は最低限だけど現象は最大限なアンビシャスカードだと感じました。
Jazzの時も感じたことですが、手順解説以外の、+αの部分が素晴らしいです。
今回だと手順の構造分析、スイッチやクラシックフォースの技法の考察、観客のコントロールなど、繰り返し演じる中で練り上げられてきたものが詳細に述べられていました。
レクチャーというよりワークショップのような内容の充実です。
そういう意味でもこの作品集は算数できてないと思います。
・2つの世界
すごくどうでもよく聞こえる大切な話なんですけど、「2つの世界」ってネーミングめっちゃカッコ良くないですか。というか男の子はみんな好きだと思います。ですよね?
しかもこの手品、中盤で2つの世界が交わっちゃうんですよ。
もう「Hello,world!」が流れて脳裏に再編成され霧に囲まれたニューヨークの街並みが見えてきちゃうし、秘密結社r……
閑話休題
世界ってワードが出てきた瞬間、なんちゃら戦線のことが頭をぐるぐるしましたが、最後まで見てそのイメージは間違ってなかったです。
特にゆるいマジックバーでの演技が素晴らしく、2つの世界が起こす不思議の後、その世界が交わり新たな世界が生まれ、強烈なエンディングに繋がっていました。
しばらくこの余韻に浸りたいので解説をほとんど読んでません。(ちゃんとあとで読みます)
血界戦線をテーマにしたマジックショーがあったら、これは最初の演目にぴったりです。
強烈過ぎて後の演目の印象が薄くなるかしっちゃかめっちゃかになりそうですけど。
もし自分がやるとするならアニメのサントラをかけたい。テンポが難しいけどObliviónとか合いそう。PresageとかAt the Gatesで不穏な雰囲気にするのもありか……
具体的な現象をほとんど書いてないので内容が何一つ伝わって来ないと思いますが、真面目が求められるレビューではしゃいじゃうくらいにはハマったということです。
気になる方は是非その目で確かめてください。
え?血界戦線を知らないから訳がわからない?
手始めにアニメをシーズン2……できればシーズン1の最終話まで見なさい。それが終わったらゆるいマジックバーでの「2つの世界」の演技映像を見なさい。
ほら……超天変地異みたいな狂騒が聴こえてきたでしょう?
・未来と過去
Twitterでも話題になってましたね。
このマジック目当てに『Days』を購入した人は多かったのでは。
このマジックは間違いなく魔法です。
不可能な現象って不思議の濃度が濃すぎると考えることを放棄して受け入れちゃうんですけど、このマジックを見たあと「すげぇ……魔法じゃん」となって裏側を考える気になりませんでした。
残念だったのは、オンラインの画面越しに魔法だと感じたので、実際生で見たらさらに強い衝撃を受けたんだろうなと。
オフラインで初見でこのマジックを見たかった。それだけが心残りです。
本当に素晴らしい作品ですし演じてみたいのですが、手順構成や台詞回しなど、このマジックはでいしゅうさんが演じてこそ魔法になるものだなと感じました。
このまま演じるのではなくて、アイディアを元に作品の良さを大切に守りながら自分に合ったマジックにしていきたいですね。
・Subliminal
目次を読んで最初に演技動画を見た作品です。ちなみにその次は「2つの世界」。
ざっくり現象を書きます。
観客が混ぜたデックからカードを1枚抜き出し、裏向きのまま置いておくか見えないところにしまってもらう。
残りのデック全体を観客に見てもらって無いカード(裏向きのカードのこと)を探してもらうが、当然難しい。
でもマジシャンは今見てもらったことで潜在意識の中でデックに無かったカード(裏向きのカードのこと)が分かったはずだと言う。
観客自身にカードを配ってもらって、好きなところで止めてもらう。
無意識に分かっていたカードと似たカードのところで止めたはずだとマジシャンは言う。
止めたところのカードを見てみると、最初に選ばれたカードのメイトカードである。
「いや無理だろ。そんなのできるわけあるか!」
「……できてるよマジかよ。」
無意識やイメージ、潜在意識とかデジャブみたいな、曖昧で定義しきれてないヒトの感覚を体験させる系マジックが大好きです。
理論武装っぽかったり意味不明な専門用語を使って煙に巻く感じは苦手なんですけど、この作品はすごく好きです。
観客にきちんと現象が伝わり、なおかつマジシャンの力の及ばない範囲で、観客自身が不思議をつくってしまう。
観客は驚き過ぎて固まると思います。「2つの世界」がファンタジーで「未来と過去」が魔法なら、「Subliminal」はホラーですね。
中身はなかなかパワフルで、『Jazz』を読んだ時と同様に自分の積んでいるCPUとの差を痛感しました。
ただ、「Jazz Quartet」程の絶望は感じなかったので、訓練してちょっとずつアップグレードしていきたいですね。
それにしても賢い……
『Days』まとめ
『Days』は普段でいしゅうさんが演じている作品ということで、『Jazz』を読んだ時に感じた
大きな流れがありつつも演じるたびに違う状況が生まれ、どうすべきか考える過程を楽しみつつ目的地を目指す、という要素を所々に感じ、でいしゅうさんの美学が詰まった作品集だと思いました。
作品をこのまま演じるのは難しいですが、自分のスタイルに合わせてエッセンスを取り入れて行きたいですね。
最後良い感じのこと言った気がする。
はいそこ、ほぼ『Days』のまえがきとか言わない。
『Jazz+』(500円)
全然話題に上がっていなかったけどむしろこっちが本命だと思っています。
僕の購入した中の「算数できない三銃士」のうちの1人がでいしゅうさんと書きましたが、この作品が理由です。
500円て……それは送料よ。送料。
内容としては『Jazz』に続く即興手品シリーズなのですが、今回は即興で出来るACAANとサンドイッチカードのアイディアが入ってました。
・Jazz standing ACAAN
即興で出来るACAAN。
ACAANというプロットで考えた時に不思議さという点では物足りないようにも感じられますが、本作の魅力はそのフットワークの軽さにあります。
場所を選ばず、借りたデックで、即興で出来る。
「何かやって」にさらっと応えるマジックとしてはむしろこれくらいの不思議さの濃度と手軽な雰囲気が丁度良いと思います。
その日持ってくデックを毎回ネモニカにセットするのは億劫ですからね……。
今まで即興でやる時はJavi Benitezの「Invisible ACAAN」をチョイスしていたのですが、これからは「Jazz standing ACAAN」も選択肢に入れようと思います。
「京橋ピーク」ってネーミングがお洒落。自分の技法にこういう名称つけてみたいです。
・Jazz Sudden Sand
サンドイッチカードに関するアイディア。
多くは書けませんが、マジケで購入した中で一番使えると感じたアイディアです。
特筆すべきは演技が始まる前にほぼ完了している点で、演技中、好きなタイミングでサンドイッチカードを行うことができます。サンドイッチカード特有の予備動作がないのですごく不思議に感じます。
でいしゅうさんにオンラインでおそらく複数回、このアイディアを組み込んだマジックを見せていただき、めちゃくちゃ驚きました。
これ以上は言えないですが、このアイディアを知れて本当に良かったです。あまり広がって欲しくないので、買った人は誰かに教えずこっそり使ってください。絶対だぞ!!!
『Jazz+』まとめ
わりと真面目に広まって欲しくないくらいの良い内容でした。
500円とかいう実質タダみたいな値段設定だったけど、宣伝が少なかったせいもあり、あまり出なかったらしいので一安心しています。
でいしゅうさんにはしばらく出さないでとお願いしたいくらいです。
最後に
演技を見て驚き、読んで時々手を動かしてみて、感動したポイントを素直に書いたので、もしかしたらこのレビューで
「それ知らなかった!」
「めっちゃいいじゃん!」
「もっとちゃんと読もう!」
「買っておけば良かった!」
「再販はよ!」
等の感想を抱いた方がいるかもしれません。
それこそが僕が願っているものであり、一番危惧していることでもあります。
自分がいいなと感じた作品に対する評価が上がって欲しい、誰かとこの感動を共有したい、もっと売れて欲しいと思う気持ちがある反面、出来ればこの良さに気付いているのは自分を含めたごく少数であって欲しいという思いがあり、終わりなき闘争を日々繰り広げています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
いつも読んでくれる人ありがとう!!
初めて読んだよという方もありがとうございます!!
めっちゃ嬉しいです!!!
長々としたレビューとも言えない感想文をここまで辛抱強く読んでくれた人が何人いらっしゃるか分かりませんが、是非、今回レビューした作品やこのレビュー自体の感想をお願いします!
一言で良いので!
ちなみに……
左下に見えるTwitterのアイコンを押すとレビューの引用ツイートとかできちゃうんですよ。おひとついかがですか。