見出し画像

本当にスローライフを体現できる都道府県ってどこだと思いますか?

11月3日、文化の日に一般社団法人「ユタラボ」さんにお招きいただき、島根県益田市を訪れた。じつは、ユタラボの代表を務めている檜垣賢一さんは、私が8年前から主宰している「乙武塾」の塾生。彼が益田市に移住してから、「いつか乙武さんにも来てほしい」と言われており、今回ようやく念願が叶ったのだ。

檜垣さんは山口県山陽小野田市の出身だが、地元の閉鎖性に息苦しさを覚えて上京。大学卒業後に、認定NPO法人「カタリバ」の活動で益田市に一時移住することになったが、「ここには本当の意味での豊かさがある」と気付かされ、カタリバでの事業を引き継ぐ形で、「豊かな暮らしをすべての人に」と銘打ち、2年前に「ユタラボ」を立ち上げたのだ。

余談だが、島根県はもともと「出雲国」と「石見国」の2つから成っていて、たとえば益田市などは「島根県」と言われるより、「石見(地方)」と言われたほうがしっくり来るのだとか。そこまで昔に遡った地名がいまだに定着しているってすごいことだな、などと感心しながら空港から市街地へ。と思ったら、市街地を見事にスルーして、人口800人ほどの豊川地区へ。

益田市は東京23区よりも面積が広いため、20地区に分かれている。日本海沿岸部の高津や吉田といった地区は栄えているが、それ以外の地域では人口減少に悩まされており、日本で初めて「過疎」という言葉が使われたのは、益田市の匹見地区についてだったと記録が残っている。

豊川地区に到着。ここは久々茂(くくも)という町で、これから地域に伝わる「石見神楽」の稽古が始まるという。いちばん高い衣装は250万円するとか、重量20kgもある衣装を着て(もはや“装着”というレベル)最低でも30分はかかる演目を踊り続けなければならないとか、石見神楽の魅力や知られざる苦労をお聞きしてから、「八岐大蛇」の短縮バージョンを見せていただくことに。

圧倒された。「大蛇は生きているみたいだった」と書いても絶対に信じてもらえないだろうし、大袈裟だと思われるだろうけれど、目の前で見た圧巻のパフォーマンスを素直に表現するなら、「まるで生きているみたいだった」と書くしかないのだ。数人がかりで動かしているのならまだ理解できるのだが、たった一人であの大蛇の身体をどのように支配しているのか、想像もつかないほどの鍛錬だった。

久々茂保存会のみなさんに礼を述べて、今度は北仙道地区へ。ここは豊川よりもさらに人口が少なく、450人ほどの地域だという。「赤雁の里」というコミュニティセンターでは、20人ほどの住民のみなさんが、炊き込みご飯とわかめご飯のおにぎり、そしてけんちん汁をご用意くださっていた。

気持ちのこもった昼食に舌鼓を打ちながら北仙道地区のみなさんとお話ししているうち、私はある事実に気がつき始めていた。その気づきは、「若手チーム」「中堅チーム」「シニアチーム」と3つの島に分かれたグループを回っていくうち、“確信”へと変わっていったのだった。

            ------✂------

ここから先は有料公開となります。

個別の記事を数百円ずつご購入いただくよりも、定期購読マガジン(月額1,000円)をご購読いただくほうが圧倒的にお得となります。

月の途中からご購読いただいても、当該月の記事はすべて読めるようになっているので、安心してご登録ください。

記事の更新はみなさんからのサポートに支えられています。ぜひ、この機にご登録をお願いします!

「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.com/h_ototake/m/m9d2115c70116

ここから先は

1,989字 / 3画像

¥ 300

みなさんからサポートをいただけると、「ああ、伝わったんだな」「書いてよかったな」と、しみじみ感じます。いつも本当にありがとうございます。