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私の中に渦巻いているドス黒い感情を、たまには思いきって晒してみようと思う。
今月25日(日)、NHKホールで「東京2020 オリンピック・パラリンピック1年前カウントダウンセレモニー」が開催されました。
知ってました?
ニュースになってました?
話題になってました?
ああ、そう言えば、この日は『24時間テレビ』が放送されてる日でしたね。私は観てないけど、パラリンピックについても触れてくれたのかなあ……。
さて、じつは私、「東京オリンピック・パラリンピック組織委員会」において「参与」なる肩書きを拝命しているため、こちらのイベントに出席してきました。
森喜朗会長、菅義偉官房長官、小池百合子都知事といった錚々たる顔ぶれに加えて、車椅子テニスの国枝慎吾選手、上地結衣選手など、来年の活躍が期待されるパラリンピアンも集い、とても華やかな舞台となりました。
芸能界からは、椎名林檎さんやKREVAさん、石原さとみさん、サンドウィッチマンさんらが登場。イベントを盛り上げてくださいました!!
そして、まさかの「チコちゃん」も!!!
さらには来年、東京でパラリンピアンに授与されるメダルのデザインも発表されるなど、本当に盛りだくさんのイベントだったのですが、何と言っても私の脳裏に深く刻まれたのは、マルクス・レーム選手の登場でした。
ご存知ない方に説明させてください。
マルクス・レーム選手は、ウエイクボード練習中の事故により14歳のときに右足の膝下を切断。以降、右足に義足を装着して陸上競技を始め、現在は走り幅跳び(T64クラス)の世界記録保持者。その記録、なんと「8m48」。
このレーム選手が、一躍、その名を世界に轟かせたのは、2014年のこと。健常者も出場する国内最高峰の大会であるドイツ陸上選手権に出場し、なんと8m24の記録で優勝を飾りました。つまり、健常者を抑えて、義足のジャンパーが国内大会で優勝してしまったのです。
ところが、レーム選手が健常者を抑えて優勝すると、「カーボン製の義足が優位に働いたのだ」という声が高まりました。本来はドイツ選手権の優勝者がその後に開催される欧州選手権に出場できることになっていたにもかかわらず、2位だった健常者の選手が“繰り上げ”で派遣されることになったのです。
その理不尽さに、当時、私はこのようなブログを書きました。
ちなみに、2016年に開催されたリオ「オリンピック」における優勝者の記録は、8m38。つまり、「8m48」の記録も持つレーム選手が出場していれば、金メダルに輝いていた可能性が高いのです。
しかし、国際陸連からは「義足が有利に働いていないという科学的な証明が不十分である」と結論づけられ、リオ五輪に続き、東京五輪へ出場する夢も絶たれてしまいました。彼に残された道は、東京パラリンピックで「五輪」の優勝者の記録を上回ること。
しまった……。
簡単にレーム選手の紹介を——と思っていたら、ついつい熱くなって、思いがけず長くなってしまいました。。。
そんなマルクス・レーム選手が、なんと目の前に登場したのです。ドイツにいるはずの彼が、ここ東京に、渋谷に、NHKホールに、私の目の前に立っているのです!!
意表を突かれたこともあるのかわかりませんが、その直後、私自身がビックリさせられる事態が起こったのです。なんと、勝手に涙があふれ出したのです。
え、何なの……。
ちょっと待ってよ……。
なんで泣いてるの……。
自分でもわけがわかりません。
濃紺のスーツでビシッとキメた、まるで俳優のような立ち姿のレーム選手を見つめながら、私は混乱する頭で、自分の頬を伝う涙の意味を必死に考えました。
そうか、そういうことだったのか——。
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