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「障害を売り物にしやがって」と20年以上も言われ続けて、たどり着いた境地。
以前にもこのマガジンで紹介したことがあるが、私の“弟子”を自称する車椅子YouTuber・寺田ユースケくんから、「新しい動画が完成しました!」とリンクが送られてきた。
なんと、今回はボルダリングに挑戦したという。
ここで、「え、ちょっと待って。車椅子でボルダリング!?」と不思議に思われる方も多くいらっしゃると思う。じつは寺田くん、生まれつきの脳性まひで、たしかに車椅子ユーザーではあるのだが、短い距離なら車椅子を使うことなく、自分の足で歩くことができるのだ。
以前には、私も寺田くんも車椅子から降りて、「20メートル競走」をしたことがあるくらいだ(この動画は爆笑必至なので、ぜひとも見ていただきたい)。
この寺田くん、以前は歌舞伎町でホストとして勤務していたのだが、当時の源氏名は、クララ。『アルプスの少女ハイジ』の登場人物よろしく、車椅子からよろよろと立ち上がって、「立った、立った。クララが立った」とやるのが持ちネタだった。
じつは寺田くんにかぎらず、車椅子ユーザーのなかには「短い距離なら歩ける」という方も少なくはない。だが、そうした前提を知らない方にとってはかなりギョッとする光景らしく、「え、歩けるんですか?」と真顔で聞かれることも少なくないという。
私たちはそんな意外性を逆手にとって、寺田くんと初対面の方がいると必ずと言っていいほど披露するやりとりがある。
寺田くんが車椅子から立ち上がり、よろよろと歩き出す。それを見た人々があっけに取られる。
乙武「彼は“ビジネス障害者”なんですよ」
寺田「やめてください。まだお金になってないんです!」
乙武「『まだ』って、ビジネスにする気満々じゃないか!」
もちろん、これはジョークであり、彼は“れっきとした障害者”だ。しかし、たとえ“れっきとした障害者”であっても、みずからの障害をビジネスに結びつけていると、「障害を売り物にするな」という決まり文句とともに批判を浴びることとなる。
だからこそ、ここで考えてみたい。なぜ、障害をビジネスに利用すると反感を買うことになってしまうのだろうか。
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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.mu/h_ototake/m/m9d2115c70116
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