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【義足プロジェクト #23】 “仙人”から伝え聞いた「みぞおち」の極意。
六月十八日。
梅雨に入ると、肌寒い雨の日が続いた。
「遅くなって、すみません!」
電車が遅れて十分ほど遅刻した内田氏は、少し息があがり、顔に汗が光っている。
「お疲れさま」
私はそう答える。
この一週間の体調などについて話をし、内田氏の前に身体を横たえた。
「ストレッチポールのおかげかな、上半身が柔らかくなってきた気がするんだ」
「ほんとうですか、いいですね!」
内田氏は私の股関節に力を加えながら、前日に始まったサッカー南米選手権(コパ・アメリカ)の話を始めた。
「乙武さん、サッカーのコパ・アメリカ観てます?」
「今回は地上波で放送してないんだよね。だからニュース映像くらい」
「初戦はチリに圧倒されちゃいましたね。あんな大差がつくとは……」
「そのなかでも期待の久保建英は、キラリと光るプレーを見せてたよね」
内田氏も私も大のスポーツ好き。こうしてサッカーの話に花を咲かせながらストレッチに励むことで、私の筋肉だけでなく、心までもほぐされていくのだった。
「では、起き上がってください」
内田氏は上半身のストレッチに取りかかる。
「無駄な力みが取れてきてますね」
そう言って私の右腕を上に掲げると、内田氏はこんなことを話しはじめた。
「私たち理学療法士の間で『仙人』と呼んでいる理学療法界の大先輩が、乙武さんの歩行を動画でご覧になったらしく、『みぞおちで歩けばいいんだ』と言っていたそうなんです。足の筋肉は胸からつながっているので、一理あ……」
内田氏が話し終わらないうちに、私は「それだ!」と叫んでいた。
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「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.mu/h_ototake/m/m9d2115c70116
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