【義足プロジェクト #19】 そして、クラウドファンディングが始まった。
義足プロジェクトに大きな転機が訪れた。クラウドファンディングを始めたのだ。
事の発端は、AbemaTVの人気番組『株式会社ニシノコンサル』にマネジャーの北村が出演したことにある。MCを務めるキングコングの西野亮廣氏やさまざまな業界のプロフェッショナルが経営者などから相談を受け、ビジネスの悩みを解決するというこの番組で、北村は「あの一件以来、乙武のマネジメントの仕方がわからない」と悩みを打ち明けたのだ。
「え、そんなに途方にくれてたの?」と申し訳ない気持ちにもなったが、西野さんの提案にはさらに驚かされた。
「そんなにすばらしいプロジェクトをやっているなら、クラウドファンディングをすべきですって」
なんと西野さんは、義足プロジェクトのクラウドファンディングを敢行し、応援してくれる人々から寄付を募る方法を提案してくれたのだ。
「これ、みんな応援したくなりますもん。だから、その“応援したい”という気持ちに受け皿を用意してあげる必要があると思うんですよね」
たしかに、『ワイドナショー』でこのプロジェクトが紹介されて以来、ツイッターなどを通じて、「何か力になりたい」という声がひっきりなしに届いていた。また、文科省から助成金を受けてはいたが、理学療法士として私の練習につきあってくれるウッチーへの報酬など、助成金だけでは賄いきれない負担も大きかった。
しかし、だ。このタイミングで私がクラウドファンディングの支援者を募ることには、ためらいがあった。
「金儲けをしたいのか」
「また調子に乗ってる」
そんなアンチの言葉が聞こえてきそうだ。私への非難だけならまだしも、プロジェクト自体が批判にさらされる可能性もあった。それはやはり、メンバーに申し訳ない気がした。
番組の収録は前年末に行われていた。一月十一日のオンエアまでは少し時間があったので、クラウドファンディングの準備には取りかかったが、最終的にやるかやらないかは少し考えさせてほしいと北村に伝え、年末の休暇に入った。
その間ずっと、私は社会問題を解決するためのNPO法人を運営する友人たちの言葉を思い浮かべていた。彼らはしばしばクラウドファンディングを利用するが、異口同音にその効果を語るのだった。
「これだけ多くのお金をいただけたことは本当にありがたい。だけど、それだけじゃない。このクラウドファンディングを通じて、多くの人にこういう社会課題があると知ってもらえたこと、私たちの活動を応援してもらえるようになったことが大きかった」
彼らの言葉は、私を義足プロジェクトに参加する原点に立ち戻らせてくれた。
このプロジェクトの目的は、歩くことをあきらめていた人々に「歩けるようになるかもしれない」という希望を届けることにある。そのためには私が「広告塔」となって、一人でも多くの人に伝えなくてはならない。
そんな思いを胸に抱く以上、アンチを気にしてためらっている場合ではない。「広告塔になる」覚悟を持ったのなら、最後まで突き通さなくては。
遠藤氏らにも相談したうえで、私はクラウドファンディングを進める決意をした。放送四日前のことだった。
支援に対するリターンには、私のサイン本、私がボーカルを務める幻のバンド「カウパーキング」のTシャツやタオル(これがいちばん人気がなかった!)などはもとより、「私の講演会の開催権」、「義足練習に参加できる権」や「マンツーマンの悩み相談権」などを準備した。プロジェクトメンバーにも、「沖野氏の義足体験会参加権」、「ウッチーのストレッチ講座参加権」などを用意してもらった。
(現在、クラウドファンディングは終了しています)
一月十二日、『ニシノコンサル』が放送された数時間後からクラウドファンディングが始まった。
目標額は一千万円。聞くだけでクラっとする、途方もない金額だ。ところが、瞬く間に支援の輪が広がった。七日目には、早くも一千万円に到達。最終的には三月十二日の締め切りまでに、OWNDAYS・田中修治社長が立ち上げてくれた別のクラウドファンディングも合わせると、二千五百人近い方々から二千万円を超える支援をいただくことができた。
遠藤氏は、当時の私の様子を振り返りながらこんなことを言っている。
------✂------
ここから先は有料公開となります。
個別の記事を数百円ずつご購入いただくよりも、月に20本近い記事が配信される定期購読マガジン(月額1,000円)をご購読いただくほうが圧倒的にお得です。
記事の更新はみなさんからのサポートに支えられています。ぜひ、この機にご登録をお願いします!
「乙武洋匡の七転び八起き」
https://note.mu/h_ototake/m/m9d2115c70116
ここから先は
¥ 200
みなさんからサポートをいただけると、「ああ、伝わったんだな」「書いてよかったな」と、しみじみ感じます。いつも本当にありがとうございます。