連載小説『ヒゲとナプキン』 #27
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JR前橋駅の北口ロータリーからバスに乗った。一月二日ということもあるのか、バスの乗客はイツキのほかに数人がいるだけだった。動き始めたバスの車窓から視線を外にやった。見慣れたはずのその景色は、しかしまるで様変わりしていた。
駅前のイトーヨーカドーは「エキータ」というセンスのかけらも感じられない名称のショッピングセンターになっていて、小学生のときに立ち読みしていた書店も、中学生のときに入り浸っていたゲームセンターも見当たらなかった。代わりにビジネスホテル