連載小説『ヒゲとナプキン』 #32
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ふと目が覚めた。暗闇に包まれた部屋の中で、イツキはスマホを探して毛布から手を伸ばした。指先に、小さな端末が触れる。それを手元にたぐり寄せると、画面から強烈な光が発せられた。あまりの眩しさに思わず目をつぶったイツキは、そこからゆっくりと瞼を持ち上げて視界を取り戻していった。
「もう十二時か……」
イツキはひとりごちると、無造作に放り出したスマホが照らし出す天井をぼんやりと見つめた。まあるい光に照らされた天井に、シゲルとフミエの顔が浮かぶ。
(おまえ