『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』

物語の中に『見慣れたもの』感じる瞬間はどこにあるのだろうか?

僕は現実と重なる部分がそれだと思っていて、物語を楽しむ理由のひとつになっている。それは何気ない風景だったり登場人物の悩みだったり様々なのだが世界が違うほどその重なりがより浮かび上がってくる。

『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』は星系を行き来出来る技術を獲得した人類が地球を飛び出し様々な星系に移民している時代、とある移民船団が「周回者(サークス)」を自称し、生きていくために「昏魚(ベッシュ)」を捕らえて暮らしている世界が舞台の物語だ。

「昏魚(ベッシュ)」はこの移民船団の資源を支える遊泳生物で、漁は基本的に男女の夫婦で行われている。主人公のテラは結婚相手を探している女性で何度も失敗している。彼女が結婚出来ない(漁が出来ない)おかげで約2000人ほどをまかなえる漁船が陸にあがったままになっている親戚は優しいがそれが余計に辛く「人より背が高く」「相手と上手く漁がすることが出来ない」のが悩みだ。

そんなある日彼女の元に「ダイオード」と名乗る少女が現れる。ダイオードはテラの漁を見て「この人となら」と身一つでやってくる。男女のペアで漁をするのが当たり前の社会でテラとダイオードは漁をする。

多様性が失われつつある「周回者(サークス)」社会で僕らと似た悩みを持つ女性がダイオードの登場によって何気なく外に流されて動いていた事や自分自信の気持ちに気づいていく「自分がどうしたいのか」理解してからの展開は優しさと尊さがあふれていた。

「周回者(サークス)」社会の設定の巧みさと2人の関係性が素晴らしく小川一水先生はさすがとしか言うしか無い。読み終わった時に想像していなかった景色に出会える良質のSF小説であり百合小説な本作(表紙もいいぞ)。

「昏魚(ベッシュ)」とは「ダイオード」は一体何物なのか?テラとの関係性など詳細は見て確かめるんだ…!そして早くアニメ化を!



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