ポケットが使えない? 花子のお直し屋日記2
こんにちは、Hadalpelagic Maison(ヘイドペラジックメゾン)の花子です。
数ヶ月ほど前、Xにてレディース服のポケット問題で盛り上がっているのを目にしました。
ポケットが浅い、内ポケットが一つもない、ついていると思ったら飾りポケット……絶妙に不便なものですが、なかなか改善されず我慢したりメンズ用を選ぶ日々。辟易しますよね。
実はこのお問い合わせ、お直し屋にも時折持ち込まれます。
そんなわけで、本日はそんなフェイクポケットのお話です。
『フェイクポケットを使えるようにして欲しい』
フェイクポケットを使えるポケットに作り変えることはできます。
ですがその前に……偽物かも?と思ったら、是非もう一度だけ確かめてみてください。
フェイクに見えて、本当は使えるポケットもあるのです。
ポケットが本物か見分ける方法
しつけ糸が無いか見る
買ったばかりのお品物のポケットは、しつけで閉じてあることがあります。
主に売り場でハンガーにかけられている間に服の自重でポケット口が開いて型崩れすることを防ぐためです。
新品のビジネススーツなどでポケットが白い糸で閉じてあるものを見たことがありませんか? あれと同じことを見えない位置でやっているのです。
写真は『片玉縁(かたたまぶち)ポケット』というもの。指のすぐ右側にポケットを縫い閉じている糸が見えますね。これがしつけです。
多くの場合、糸を取りやすくする為に両サイドに隙間を残してあるので指を入れてみましょう。飾りポケットの場合は端まで完全に口が閉じていますので、この時点で見分けられます。
押し広げるようにすると糸が緩んでいくので、引き抜くか、本体を傷付けないよう注意しながらハサミで糸を切ればOK。
特に、一番外側に着るコート類に関しては飾りポケットであることは少ないです。今までお店にお問い合わせいただいたフェイクポケット問題のうち、コートの場合は100%しつけが原因でした。
ポケットが使えない!と思った時はまずこれを疑ってみてください。
※ちなみにこのしつけ、あえて取らないという方もいらっしゃいます。型崩れを防ぐためのものですので、着た時も綺麗なシルエットを保てます。
お好みでどうするか決めると良いでしょう。
袋布を探る
しつけも時折ガチガチに固く縫い閉じている品物があります。フェイクと判別がしづらい……そんな時は内側に袋布(名前の通り、物を入れるための袋部分の布)が無いか探ってみてください。
裏地の無い一重仕立ての場合は、ポケットの裏側を見ればすぐに分かります。袋布が付いているなら本物のポケットですので上記の方法で慎重にしつけを取りましょう。
当て布のようなものだけが付いている状態の場合、それは飾りです。残念ながらそのままでは使えません。
裏地付きの場合は、裾が開いているもの(フラシ仕立て)と開いていないもの(どんでん返し)と大きくわけて二種類の仕立てがあり、見分け方が異なります。
フラシの場合は裏地をめくって中の仕立てが見えますので、一重仕立てと同じようにポケットの裏側を探りましょう。
どんでんの場合、ポケット口の少し下を揉んでみます。表地と裏地の間にもう一枚袋布の存在を感じたらポケットが使える可能性が高いです。
それでもよくわからない……という場合は、是非お近くのお直し屋さんへ相談してみてください。
お直し屋として提案できること
フェイクポケットを使えるポケットに改造
足りないパーツを別布で付け足せば、使えるポケットにすることができます。
物によっては近い色の布が用意できないことがあり、ポケットを開けた時に別布がチラ見えしてしまう可能性がありますが、それを逆手にとってあえて柄布を使うなどしても良いかもしれません。
新しくポケットを作る
実際に使うにはポケットの位置が合わない、そもそも飾りポケットすら無い……そんな時はいっそのこと作ってしまいましょう。
お値段はポケットの種類やお店によってピンキリですが、3000円〜を目安にお近くのお直し屋さんで見積り比べをしてみてください。
・パッチポケット
四角形や五角形の布をお洋服に縫いつけます。Tシャツやポロシャツの胸元への取り付けでお問い合わせが多いです。
表から見えるデザインになりますので、可能なら着丈をつめて裾から同じ布を取るか、色や風合いの馴染む気に入った布を探すと良いでしょう。
・シームポケット
脇などのタテ縫い目を利用して何もないところにポケットを付け足すことが可能です。スカートやワンピースで多いお問い合わせです。
ぱっと見の見た目は変わりませんが、やはり別布がチラ見えする可能性があります。
・玉ぶちポケット、箱ポケット、ファスナーポケットなど
品物と場所によっては可能です。
ただし、こちらはお洋服の本体に直に切り込みを入れて作るポケットのため、上記二つと違って一度加工すると元に戻したり位置の移動はできません。お直し屋さんでよく相談しましょう。
玉ぶち布用の布地やファスナーを用意する必要がありますが、完全に表に見えますので違和感の無い素材を選びましょう。
番外:移動ポケット
子供服向けに、移動ポケットというものがあります。
クリップなどで後付けできるポケットで、どちらかというとポーチ的な見た目をしています。取り外しできて何にでも付けられるのは便利ですね。
子供服の場合はすぐにサイズアウトしてしまうので、こういったアイテムを利用するのもひとつです。
自分でも作れる
一部のポケットはご自身でも作ることができます。
近頃はYouTubeなどで自分でできるリメイク方法が解説付きですぐに見つかり、布も百均などで手に入る便利な時代です。お気に入りの品物を自分でお直しできたなら、より愛着も湧きますね。
パッチポケットとシームポケットはお洋服を傷付ける心配が比較的少ないです。
もしやっている最中でわからなくなってしまった……!という場合でも、お直し屋でフォローできるかと思いますので諦めずに一度ご相談してみてください。
ご自身の手で挑戦してみることによって、リメイクを身近に感じてくださったらお直し屋としても嬉しいです。
ただし、本体を切る必要がある玉ぶちポケットなどは失敗すると修正がきかない上、構造も少し複雑です。一定の経験が必要なものでもあるので、そういったポケットがほしい場合も是非プロにお任せいただけたらと思います。
以上、第二回お直し屋日記、フェイクポケット問題とその解決策でした。
女性に多いお悩みかと思いますが、新たにポケットを増やしたい場合などは男性の方も是非お近くのお直し屋さんへ相談してみてください。
私も自分で服を作る際には必ずどこかにポケットを付けます。
今後ネットショップでの販売なども視野に入れているので、使いやすさは変わらず気にかけていこうと思います。
早いもので2024年も残すところあとわずか。来年もたくさん更新しようと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
みなさま良いお年をお迎えください。