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コモ活シリーズ⑨---コウモリは哺乳類No.1の長寿! だけど、様々な脅威が… (コウモリの基礎知識)


今回のタイトルを見て「それは違う! もっと長生きの動物は沢山いる!」と思ったあなた。気持ちは分かります。分かりますが、どうぞ落ち着いて下さい (´ェ`) 今回は平均寿命の年数ではなく、別の算定方法による話です。
(上の写真は海外の種類。大人でもこんなに小さいよ)

哺乳類の平均寿命といっても、それぞれの種類、野生か飼育下か、オスかメスか等により寿命は異なります。たとえばゾウはアフリカゾウ約80年に対してアジアゾウ約70年、ライオンは野生10〜15年、飼育下だと20年以上。
イヌは大型犬10〜13年、小型犬12〜15年。


私たちヒトも、日本では84.3歳(男女平均)ですが、レソトという国では50.7歳です(WHO、2023年。世界平均は男女73.3歳)。
なので下の図は大体の目安とお考え下さい。(※クジラはシロナガスクジラ)

哺乳類の平均寿命


クジラ、ヒト、ゾウ…他にもコウモリより長生きの哺乳類は沢山います。

しかし、哺乳類の体の大きさと平均寿命を比較した寿命指数で算定すると、ゾウは1.2、ヒトは4.2、コウモリは5.8で最高だそうです(※1)。
驚くべきことに、全生物で最高クラスの10.0を記録した個体も!ヽ(℃°)ノ


コウモリといってもオオコウモリと小コウモリ、野生と飼育下、種類によっても差がありますが、調査したコウモリでは全種類が5以上の指数でぶっちぎりトップだったそうで、それがタイトルの長寿No.1の意味です。

世界には1400種類以上のコウモリがいますが(全哺乳類の5分の1以上)、野生でも飼育下でも15〜30年位生きるものが多く、これは同じ大きさのネズミと比較すると約10倍の長寿です(※例外的に短命の種類もいる。日本のアブラコウモリはオスが1〜2年、メスが3〜5年。とても短い( ´;ω;` )


体長10cm程度の小コウモリの飛行中の心拍数はMAX 1000/分!人間は70/分くらいだから凄いですよね。しかし、なぜそんなに長寿なのかは明確になっていません。

小コウモリは冬眠して代謝を抑えるので長寿だという説もありますが、冬眠しないオオコウモリも長寿なので冬眠は関係ないと考える研究者も多く、抜群の免疫力や抗酸化力など、特殊な体のメカニズムによるのではないかとも考えられています。

たとえば地球最速の飛ぶ動物(時速160km超、水平飛行時)メキシコオヒキコウモリは、たった5〜6cmの小さな体で、一瞬で上空1万フィート以上に舞い上がります。驚異の身体能力!(˙o˙;) コウモリは知能も高く(最低でも霊長類やイルカと同等と言う研究者も)、超音波を含めてとても魅力的な動物なんです。

知能が高いことでも知られるメキシコオヒキコウモリ


そのように本来なら長寿の動物ですが、残念ながらコウモリの寿命を縮める脅威も沢山あります。日本では法律でコウモリの捕獲・殺傷は禁じられていますが、東南アジア等ではオオコウモリを食用にしたり、果実を食い荒らすとして(実際には持続可能な食べ方をしているのが実証されているのに…)
殺す国があり、ハンターによる「娯楽」のハンティングでも、貴重なオオコウモリの種類が次々に絶滅しています。

またヨーロッパと北米では風力発電のブレードにコウモリが巻き込まれて死亡するケースが多く、年間数十万頭以上のコウモリが犠牲になっています。渡り鳥も同じ被害に遭っていますが、体の構造からコウモリのほうが巻き込まれやすく、エコが売り物の風力発電が膨大な小さな命を奪っています(※2)

右は風力発電に巻き込まれて死んだコウモリ(ホーリー・バット) (写真)


また北米では近年、ホワイト・ノーズ・シンドロームという深刻な病気でコウモリが激減しました。(人間には伝染しない。むしろ人間が媒介することがある。日本には無い)


環境破壊により森の住処を失ったり、集団で子育てする場を失ったりして、世界中で多くの種類が絶滅に面しており、北米では今後15年間に52%のコウモリが絶滅する危険があるとされています。(※3)

また最近は5G等の電磁波の影響で、コウモリや子牛等の哺乳類が多数死傷しているという海外の大学の研究結果もあります(※4)。

大人でもこんなに小さい!


★今まで、日本に生息するコウモリが感染症の原因になったことはありません。

前に当シリーズで書いたように、コウモリの持つ菌の数はネズミよりずっと少なく、噛まれて狂犬病になるリスクも動物の中では低い部類ですが(狂犬病で死ぬ人は全米で年間1〜2人)、コウモリ=菌やウィルスの先入観を持つ人もいて、先進国でも誤解や偏見からコウモリを殺傷する人もいます。

またコウモリが濡れ衣を着せられているエボラ等も、海外のwikipediaには「ラボで作られた人工ウィルス」と記載されています。

しかし、コウモリの正しい理解はあまり進んでいないのが現状だと思います (なので私も微力ですが、こういう記事を書いています)。

他にもコウモリの脅威になる事柄は沢山ありますが、私自身、書いていて悲しくなってくるので、以下省略。

コウモリは、なかなか増えないデリケートな動物です。出産は、ほぼ1年に1度。種類にもよりますが一度に生むのは大体1頭。ネズミのように放っていてもどんどん増える動物ではないので、何らかの理由で住処やコロニーが破壊されると容易に個体数が回復しません。


オガサワラオオコウモリ(国の天然記念物、絶滅危惧種)のいる小笠原諸島では、島の古老が「コウモリは簡単に増えない生きものだ。人が助けてやらないと滅んでしまう」と懸念していたそうです。世界遺産になった小笠原の豊かな森の植生を作ってきたのはコウモリなんです。(※5)

農作物につく害虫を食べてくれて、木や花、果実の受粉を手伝ってくれて、世界の熱帯雨林の植生の98%はコウモリによって作られています。
世界の商用作物約450種類と薬の原材料80種類は、コウモリが受粉・播種しています。
受粉、播種というと鳥やミツバチを連想する人も多いでしょうが、コウモリはそれらと同等かそれ以上の重要な働きをしています。

コウモリは人知れず生態系を守っている大事な存在でもあるんです。


今、日本各地でメガソーラーのために山を切り崩している影響で、そこを住処にしていた多くの野生動物や虫たちが行き場を失って消えています。

つぶらな瞳の貴重なニホンモモンガもメガソーラーの影響で減っています(写真)
カヤネズミも住処を失い、絶滅が危惧されています


全ての命はつながって循環しています。私たちが気づかなくても、人間を助けてくれている動物も沢山います。でも今、その循環が人間によって機能しなくなりつつあります。住処を追われ、餌を失った動物たちの姿は、明日の私たちではないとは言い切れないのではないでしょうか。


彼らは何も持たず、人間のように環境も汚さず、体一つを頼りに生きています。声をあげることができない無力な動物たちを守ることは、回り回って私たち人間が守られることにもつながるのではないでしょうか。

お母さんコウモリにしがみつく赤ちゃん。海外の種類。


以前紹介したランダル・ジャレルの名作童話『詩のすきなコウモリの話』に、こんな詩が出てきます(一部抜粋)

生まれたばかりのコウモリは、
はだかだ。目が見えない。弱々しい。
母親コウモリはしっぽで、ポケットをこしらえて、
あかんぼうコウモリをつかまえる。親指と足指と歯で
母親コウモリの長いやわらかな毛にしがみついて、
あかんぼうコウモリは、母親コウモリにぶらさがる。
夜は、母親コウモリは、あかんぼうコウモリといっしょに、
舞うように飛ぶ。輪をえがき、滑るように、宙がえりして----
夜じゅう、幸福そうに、狩りをしながら、飛び回る。
 (長田弘 訳)

幸福そうに狩りをしながら飛び回る彼らの姿が、これからも見られるようにと願わずにはいられません。 お読み頂き、ありがとうございました(´ω`)

参照 ※1『老化はなぜ起こるか コウモリは老化が遅く、クジラはガンになりにくい』(スティーヴン・オースタッド著)
※2 (出典)  ※3 (出典) ※4(出典)  ※5 (出典) 
Bat World Org『Annual Report 2023』、『Bats』Nancy Jennings著 他

※記事内容の転載はお断りいたします。


★どこにも所属しないコウモリ愛好家です。個人的に好きな海外の種類について、親しい海外の専門家に教えてもらいながら調べています。
誤解されがちなコウモリという素晴らしい動物の魅力を広めたくて本を書いたり、ラジオ番組で取り上げたり、ミニ講座で話をしたりしています。専門家や研究者ではないので、分からない点は専門家にも教えて貰っています。コウモリがお好きな方、繋がりませんか? ( ˙ω˙)و グッ!
コウモリを正しく知ろう、守ろう」

 


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