コモ活シリーズ⑦---コウモリは害獣ではありません!
今回はコウモリの基礎知識ではないんですが、憤慨していることがあるので書きますね。
何かというと、地元の東北電力が家庭向けにやっているサービスの広告です。紙媒体にも載っていますが、下はwebからスクショ。
(※オオコウモリの赤い字は私による)
広告を作っているのは外部の会社でしょうが、本州に、しかも東北にオオコウモリがいるなら教えてほしい。
コウモリというだけで、オオコウモリと小コウモリの区別もないので、
オオコウモリが国の天然記念物であることも(※)、オオコウモリの全種類が
ワシントン条約の規制対象動物(保護動物)になっている貴重な動物である
ことも知らないんだろうなと思いますが。この写真も海外の種類だし。
(※天然記念物---オガサワラオオコウモリ、クビワオオコウモリ、エラブオオコウモリ、ダイトウオオコウモリ。小コウモリの中にも天然記念物に指定されている種があります)
広告は必ずしも本当のことを言うわけではありません。過大表現をしたり、あえてデメリットに触れないこともよくあります。けれども長年広告の仕事をしていた者として言うと、対象についてよく調べもしないというのは広告以前の問題なのでは?
★今まで、日本に生息するコウモリが感染症の原因になったことはありません。
また、コウモリが濡れ衣を着せられているエボラ等も海外のwikipediaには「ラボで作られた人工ウィルス」の記載があります。
さらに私が不快なのが「害獣」という表記なんです。
下の記事に書いたように、小コウモリは蚊を始めとする害虫を大量に食べ、オオコウモリは木や花、果実の受粉をし、生態系に貢献している益獣です。
なのに害獣という表記をされると、コウモリについてよく知らない人に
「コウモリは害獣なんだ」という先入観や偏見を与えてしまいます。
残念ながら、コウモリについてよく知らない人のほうが多い実情なので。
動物の中には、人間を襲ったり、農作物を荒らしたりする、いわゆる害獣と呼ばれる存在もいますが、私たちに一番身近なアブラコウモリに何の害が?
人が手出しをしなければ噛み付くこともないし、鳴き声がうるさいわけでもない(超音波なので聞こえない)
ただし、中には「家の屋根裏に沢山棲み付いて糞害や匂いで困る」という人もいるとは思います。確かに50頭も100頭も棲み付かれたらそういう例もあります。が、現代建築は気密性が高く、外から簡単に侵入できる構造の家は少ないし、今の日本の都市部で、コウモリが大量に棲めるような屋根裏を持つ一軒家はどのくらいあるでしょうか。
害虫駆除の仕事をやっている方が、前にネットに書き込んでいたこと。
その方の会社にも時々コウモリ駆除の依頼がくるそうですが、その方は
個人的にコウモリが好きなので、家主を説得するようにしているそうです。
それでもコウモリの処分を望む家主には、警察官を同行して説明するそうです。というのは、コウモリは鳥獣保護法管理動物なので、捕獲、殺傷は犯罪になるから。だから駆除といっても殺傷するわけではないんですが、その方によると、たった一頭しかいないのに「コウモリが嫌い」「菌が心配」等の理由で依頼されるケースがあると。
前に別の記事に書きましたが、海外の研究で、コウモリの保有する菌は
ネズミよりずっと少なく、噛まれて狂犬病になるリスクも動物の中では
低い部類というエビデンスが出ています。元々狂犬病は現代では超レアで、
全米で狂犬病で死ぬ人は年間1〜2人です。
そして、アブラコウモリはコウモリの中ではとても短命で少産です。
オスはたった1~2年、メスは3~5年しか生きられません。
ネズミのように沢山子供を産んでどんどん増える動物とは基本的に違うん
ですが、そういうことも一般には知られていないと思います(なので、私は
一介の愛好家ですが、こうして周知活動に励んでいます)
そんな短い命で、やっと見つけた家の軒下などで、ひっそり静かに休んでいるだけなんです。そっとしておいてあげませんか?
昭和頃まで、コウモリは今よりもっと私たちに身近な動物で、日本でも
「コウモリの棲みつく家は栄える」と言われて喜ばれていました。縁起物とされて、蝙蝠紋のついた食器や浴衣等も作られました。人の心も今よりおおらかで、世の中も殺伐としていなかった時代です。
けれど今、コウモリは身近にいるのに身近ではない動物になっています。
コウモリの多くは森林破壊や再開発で棲む所を失くしたり、農薬や電磁波で餌の昆虫が減ったり…人間の側の原因で減少して、多くの種で絶滅が危惧されています。私がnoteでコモ活シリーズをやっているのも、少しでも多くの方に、コウモリの本当の姿を知って頂く一助になればと思うからです。
コウモリは素晴らしい能力を持ち、生態系に貢献し、平和的で知能の高い
私たちと同じ哺乳類です。ちゃんと感情もあります。
住む場所が少なくなり、食べ物も少なくなり、怖いとか言われながらも、
今日もひっそりと、つつましく、健気に生きています。
というわけで今回はコウモリの基礎知識から外れてしまいましたが、お読み頂き、ありがとうございました(-人-)
※記事の内容の転載はお断りいたします。
★どこにも所属しないコウモリ愛好家です。個人的に好きな海外の種類について、親しい海外の専門家に教えてもらいながら調べています。
誤解されがちなコウモリという素晴らしい動物の魅力を広めたくて本を書いたり、ラジオ番組で取り上げたり、ミニ講座で話をしたりしています。専門家や研究者ではないので、分からない点は専門家にも教えて貰っています。 コウモリがお好きな方、繋がりませんか? ( ˙ω˙)و グッ!
「コウモリを正しく知ろう、守ろう」