コモ活シリーズ⑥---コウモリは、生態系の守護者 (コウモリの基礎知識)
全ての生きものは生態系に必要だから存在しています。では、コウモリは
どんな役割を果たしているのかな?
(オオコウモリとフルーツコウモリは、私を含めて普通は接する機会がないので、今回はそれらの保護をしている友人にも教えて貰いました)
●基礎知識・その8 コウモリは害虫を駆除し、木や花を受粉している
前記事でご紹介した『コウモリの真実』の動画の視聴者コメントに、こんなものがありました。
「コウモリは、世界中で、我々の生態系にとって必須の生きものです。」
「コウモリはこの惑星の最も重要な生きものの一つです。」
なぜそう言われるかというと、コウモリは生態系の中で重要な役割を果たしているからなんです。
●小コウモリ(食虫性)は害虫を駆除しています
最初に、虫にもそれぞれの役割があります。それを「害虫」「益虫」と呼ぶのは人間の勝手な都合かも知れません。
たとえば、アブラムシ等を食べるので益虫といわれるテントウムシは、食べるアブラムシがいなくなると作物を食べる害虫に変わってしまうそうです。
とはいっても、農家にとっては野菜や穀物等に付く虫、人間にとっては生命に危険を及ぼすスズメバチや蚊、病気やアレルギーを起こすゴキブリやダニ、家を壊すシロアリ等は、まあ普通は害虫ですよね。
小コウモリの大半は虫を食べますが、蛾や蚊、穀物につく虫等、いわゆる害虫も食べてくれます。彼らは毎晩大量の虫を食べます。小さいアブラコウモリでも一晩に500〜1000匹もの虫を食べます。
北米では彼らが穀物につく害虫を大量に食べてくれることで農家は経済的にとても助かっています。もし殺虫剤で駆除すると年間数十億円のコストが
かかるし、大量の殺虫剤は環境にも健康にも悪いからです。コウモリはエコな駆除部隊で、洞窟の生態系の保全のためにも重要な存在なんです。
2022年の「アメリカの洞窟アニマル of the year」受賞!
Little Brown Batさん↓
★今まで、日本に生息するコウモリが感染症の原因になったことはありません。
北米で1920年代にマラリアが大流行して多くの死者が出た時、コウモリの多い都市では、コウモリが原因になる蚊を食べてくれたおかげで、死者が少なくて済みました。市をあげてコウモリに住み着いてもらった所もあります。
日本でも毎晩、蛾や蚊、ユスリカ等を食べてくれています。
彼らは、人知れず黙々と、人間を助けてくれています。
ちなみにコウモリが濡れ衣を着せられているエボラ等も海外のwikipediaには「ラボで作られた人工ウィルス」の記載があります。
●オオコウモリ、フルーツコウモリは木や花を植えて実らせます
体の大きなオオコウモリは、主に果実などを食べるので、知らない人からは「果物を食べ荒らす」なんて思われがちですが、オオコウモリが落とした種から木が生えたり、植物の間を飛び回ることで受粉を手伝ったり、木や果実が育つために重要な役割を果たしています。
「ものすごく臭いけど、世界一おいしい」果物の王様・ドリアンを受粉しているのは、東南アジアのヒメオオコウモリ(絶滅危惧種)です。他にも、バナナ、マンゴー、グアバ等の果物もオオコウモリが受粉を手伝っています。
世界中で、コウモリがいないと生産できない農作物は約450種類、薬品は約80種類にものぼります(Bat World Org調べ)。
しかも、これらのオオコウモリは植物を食べる時に、大事な部分を傷つけないように配慮して食べていることが調査によって判明しています。
コウモリは食べ荒らしてなどいなくて、植物が持続して実るようにしているそうです。しかし、インド洋のモーリシャスでは2015〜2016年に、地元の果樹農家たちが、オオコウモリは果物を食べ荒らすと嫌って、希少な種を
4万頭以上殺してしまいました。
オオコウモリより小型の、植物食のフルーツコウモリも活躍しています。
テキーラというお酒はメキシコの重要な輸出品目で、原料のリュウゼツランを受粉しているのは、ハナナガサシオコウモリというフルーツコウモリ。
ラム酒の原料の受粉をしているのもコウモリです。
実に熱帯雨林の98%が、コウモリによって播種されていると言われます。
世界でも日本でもオオコウモリは頭数が激減しています。環境悪化だけでなく、東南アジアではオオコウモリが食用にされたり、娯楽のハンティングで撃ち殺される例も。オーストラリアでは、オオコウモリが荒涼とした大地に多くの木を植えてきたのに、嫌ったり迫害する心ない人達もいるそうです。
(※日本では鳥獣保護法により、コウモリの捕獲・殺傷は禁じられています)
もしオオコウモリやフルーツコウモリがいなくなったら、木や花や植物はどうなる? 人間の大好きな果物やお酒はどうなるでしょう?
彼らがいなくなってから、悔やんでも遅いです。
日本では、世界遺産になった小笠原諸島の豊かな森を作ってきたのが、オガサワラオオコウモリです(国の天然記念物)
小笠原の老人によると「昔は小笠原の空を埋めるほどたくさんいた。その頃は野生の餌(果物)が豊富だったから人里には来なかった」そうです。しかし今は頭数が激減し、絶滅危惧種1B類(近い将来、野生での絶滅の危険性が高い)です。
↓親子で農家の作物を食べていた所を見つかり、追い払われたときに母親とはぐれて、地元の保護スタッフに育てられた、オガサワラオオコウモリの
赤ちゃん。まっ黒でとても可愛い。日本語。お子さんもぜひどうぞ。
※日本のオオコウモリは海外のより小柄で耳が小さいよ
↓沖縄のオリイオオコウモリは、飼育員さんがド派手なコスプレをしても
見分けられるかな? おとなしくて可愛いよ
八重山オオコウモリの食事風景
↓子供向けの写真絵本ですが、コウモリの解説も充実。大人にもおすすめ。
↓コウモリの出てくる図鑑で私のおすすめの2冊。図書館で見てね。
★コウモリは素晴らしい能力を持ち、生態系に貢献し、平和的で知能の高い、私たちと同じ哺乳類です。
住む場所が少なくなり、食べ物も少なくなり、怖いとか言われながらも、ひっそりと、つつましく、健気に生きています。
※記事の内容の転載はお断りいたします。
★どこにも所属しないコウモリ愛好家です。個人的に好きな海外の種類について、親しい海外の専門家に教えてもらいながら調べています。
誤解されがちなコウモリという素晴らしい動物の魅力を広めたくて本を書いたり、ラジオ番組で取り上げたり、ミニ講座で話をしたりしています。専門家や研究者ではないので、分からない点は専門家にも教えて貰っています。 コウモリがお好きな方、繋がりませんか? ( ˙ω˙)و グッ!
「コウモリを正しく知ろう、守ろう。」
嬉しいご厚意は、地球に暮らす小さな仲間たち(コウモリと野生動物)を守る目的の寄付に使わせていただきます(๑´ω`๑)♡